平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

龍馬伝 第31回「西郷はまだか」

2010年08月02日 | 大河ドラマ・時代劇
 どうも物語の中に入り込めないんですよね。
 龍馬(福山雅治)を始めとする登場人物たちに感情移入が出来ない。

★引っかかっているのは、<龍馬がいつから何をきっかけに倒幕論者になったのか?>
 おそらくシーズン2の終わり、武市が死んで「日本を洗濯する」と言った時点だろうが、そこから<倒幕>に行ってしまうのは性急すぎる。
 というわけで司馬遼太郎さんはこの辺をどう描いているかを確認するため、「竜馬がゆく」をパラパラと見てみる。
 すると龍馬は中岡慎太郎とのやりとりで幕府についてこう評している。
 「無用有害の存在じゃな。政府としての対外的実力を失い、誠意もなく機能もない。すでに今日にあっては、幕府の寿命が一日のびれば、一日の害がある。このままでは日本は滅びるしかあるまい」
 司馬さんは、龍馬が幕府を<無用有害>と考える理由として次の様な例をあげている。
・フランスから長州征伐の軍事費を借り、武器を調達している幕府。
 これにより幕府はフランスの様々な条件をのみ、言いなりにならなくてはならない。
 噂に拠ると幕府は北海道を軍事費を借りる担保にしているらしい。

 なるほど、これなら龍馬が倒幕を考えるのは無理もない。
 「龍馬伝」でも幕府がフランスと手を組む描写があったが、これほど危機感を持っては描かれていなかった。

★僕が第二に引っかかっているのは、西郷吉之助(高橋克実)だ。
 <なぜ、あんなに簡単に龍馬の長州と組むという提案を受け入れたのか?>
 劇中で西郷はその理由をこう語っている。
 「このままではいずれ薩摩は幕府に滅ぼされる」
 ただ、これだけ。だが果たしてそうか? 
 薩摩は人材的にも経済的にも恵まれた<幕末の雄藩>である。
 「篤姫」でも描かれたとおり、幕府に強い影響力を持っていた。
 まあ、天下に両雄並び立たずで、長州が倒されれば次は薩摩に幕府の鉾先が向くだろうという可能性はある。先に述べたとおりフランスの強力なバックアップもあるし。
 「このままでは薩摩が滅ぼされる」という西郷の発言はこんなことを背景にしているのであろう。
 しかし、ここまで深読みしなければ、西郷発言の真意は伝わってこない。

 参考までに司馬遼太郎さんは、この時の薩摩の情況についてはこう解釈している。
・薩摩が目指していたのは、天皇を頂点とする雄藩による合議制。
 幕府もその雄藩のひとつでしかなく、薩摩はそこで強い発言力を持って日本を動かす。←確か「篤姫」でも同じことを言っていた。
 ところが最近幕府が力をつけてきたので邪魔になってきた。
 だから長州と手を組もうと思った。

 なるほど、これも納得できる。
 というわけで、今の「龍馬伝」に欠けているのは、深い歴史認識・政治的視点である。
 主人公が政治の中枢から外れた龍馬で<龍馬視点>が多いせいか、当時の政治背景が描かれにくいが、こういう所をしっかり描いてもらわないと。
 龍馬も<私心なく人を欺くことがない人物>だそうだが、いい加減「わしを信じてつかわさい」と言っている様では、進歩がない。昔の龍馬と全然変わらない。
 大体、薩摩の重臣・西郷がただの脱藩浪士の話を聞いただけで、藩論を動かすために行動するだろうか?
 「竜馬がゆく」では、海軍繰練所時代から龍馬と西郷の関わりを様々な形で描いている。結果、ふたりの間に信頼関係が生まれている。

 そう言えば、脚本の福田靖さんは「チェンジ!」という総理大臣ものを書かれていたが、全然政治を描けていなかったな。


※追記
 西郷が下関に行かなかった理由。
 「竜馬がゆく」に拠ると、京都から長州攻めの件で呼び出されたことが表向きの理由らしいが、裏には薩摩のプライドの問題があったらしい。
 すなわち
・なぜ自分が長州に赴かなくてはならないのか?長州から来るべきではないのか?というプライド。
・なぜ土佐の脱藩浪士の口車に乗せられて動かなくてはならないのか?というプライド。
 次週の「龍馬伝」ではどの様に描かれるか?


コメント (4)
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