平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

耳をすませば <あの街>に向かっていくふたり

2010年08月03日 | コミック・アニメ・特撮
 月島雫はこんな女の子。
 本が大好きな中学生。夏休みなのに学校の図書館に通っている。
 想像力が豊かで、電車に乗っていた太った猫を<男爵>という猫の人形が変身したものではないかと思える。(猫を追いかけて丘の上の骨董品屋<地球堂>に行くあたりは「ふしぎの国のアリス」を思わせる)
 太った猫を<男爵>ではないかと思える想像力。
 雫はいつでも現実から空想のワンダーランドに行くことが出来る。
 骨董品屋<地球堂>に入った時の感想も彼女らしい。
 「こんな所があったなんて知らなかった。洞窟で宝箱を見つけたみたい」
 雫のこの感覚はたとえば、われわれがディズニーランドに行ってわくわくする感覚に似ている。

 そして同じ感覚・感性を持つ者は繋がり合う。
 まずは<地球堂>の主人のおじいさん。
 <男爵>や<からくり時計>を見て目を輝かす雫はそれらを店に置いているおじいさんと同じ感性。
 感性が違う者なら、それらはただのがらくたでしかない。

 天沢聖司も雫と同じ感性の持ち主。
 雫と同じ本を図書館で借りて読んでいる。
 <地球堂>の階段から見下ろす町の風景も同じように美しいと思える。
 雫の作った『カントリーロード』の替え歌の詩も面白いとほめてくれる。

 こんなふたりだから恋に落ちないわけがない。
 呼び出すために聖司が雫の教室にやって来て、クラスメイトからひやかされるところ、ひやかされて雫が顔を赤くするところは微笑ましい。
 中学・高校時代でよくある風景。
 雫は友人に「最近本を読んでもわくわくしない」と語ったが、恋という「わくわく」を知ってしまったのだ。
 そして、このふたりはお互いに切磋琢磨し合う関係だ。
 聖司がヴァイオリン職人になる夢を語ると、雫は何の目標もない自分を情けなく思う。そして、小説を書くという自分を見出す。
 次に聖司が職人になるために努力し始めると、自分も受験勉強や寝食を忘れて小説を書き始める。
 おじいさんに言わせると、雫も聖司もまだまだ<磨かれていない石>。
 だからこそふたりは輝くために切磋琢磨する。

 見事な<青春映画>だ。
 自転車に乗っていっしょに上る丘。いっしょに見る丘の上の朝の風景。
 この作品では丘という舞台装置が効果的に使われている。
 そして歌も。

♪カントリーロード~、この街~、ずっと~行けば~
 あの街に~、続いてく~、気がする~、カントリーロード~♪

 何と耳に残るフレーズだろう。
 雫と聖司は<あの街>に向かって、ふたりで歩いていくんでしょうね。

※追記
 主題歌を歌い、雫役もやっているのは本名陽子さん。
 ジブリ作品は「トトロ」以降、声優さんを使っていないが、確かに本名さんの声、芝居は魅力的だ。


コメント
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