平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

真夏のオリオン 生きるために戦っているんだ

2010年08月27日 | 邦画
 艦長の倉本(玉木宏)は言う。
 「われわれは死ぬために戦っているのではない。生きるために戦っているんだ」
 最近、仕事で戦争に関する本を読んでいるのだが、おそらく当時の軍人で、しかも士官でこの様な発言をする人はいない。
 彼らは常に<死>というものを見据え、格闘してきた。
 <何のために死ぬのか><何を守って死ぬのか><いかに死ぬか>。
 ベクトルはあくまで<死>に向かっている。決して<生>には向かっていない。
 現在、われわれは<いかに生きるのか>で迷っているが、戦争中は正反対で<いかに死ぬか>がテーマだったのだ。

 この点で「真夏のオリオン」は現代的視点で描かれた作品と言える。
 主役の玉木さんや恋人・志津子の北川景子さんなんかも昭和でなく、平成の顔をしていますしね。
 作品のモチーフになっている楽曲「真夏のオリオン」も甘い。
 ♪オリオンよ
  愛する人を導け
  帰る道を見失わない様に♪
 まあ、「君死にたもうことなかれ」という詩もあったくらいだから、こういう思いがあっったとしてもいいだろう。
 だが、このメッセージを聞いて潜水艦の人間全員が「生きよう」「帰ろう」と思うのは、物語として甘すぎる。
 ラスト、回天の乗組員が「敵駆逐艦に突っ込んで特効攻撃しろ」と迫るエピソードがあったが、艦内でこういう葛藤がもっとあってもいいはず。

 この様にこの作品、戦争を描いた物語としては甘く弱いが、倉本艦長の考え方には同意する。
 「いかに死ぬか」よりも「いかに生きるか」を考える社会の方がずっと素晴らしいと思うからだ。


コメント
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