平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「銀河英雄伝説」は政治学の教科書だ ②~社会的弱者と反対勢力の排除

2014年02月15日 | 小説
 『銀河英雄伝説』(田中芳樹・著)は見事な<政治学>の教科書だ。
 銀河帝国をつくった独裁者ルドルフはこんな思想を持っている。

「宇宙の摂理は弱肉強食であり、適者生存、優勝劣敗である」
「人類社会もまた、その例外ではありえない。異常者が一定数以上に増えた社会は、活力を失って衰弱する。余の熱望するところは、人類の永遠の繁栄である。したがって、人類を種として弱めるがごとき要素を排除するのは、人類の統治者たる余にとって神聖な義務である」

 この思想の結果、ルドルフが行ったのは次のようなことだ。
・身体障害者や貧困層や「優秀でない」人々に対する断種の強制
・精神障害者の安楽死
・弱者救済の社会政策の全廃
 
 このことについて著者である田中芳樹さんはさらに次のように書いている。
<ルドルフにとっては、「弱い」ということ辞退が許し難い罪であり、「弱さを盾にとって当然ごとく保護を求める」社会的弱者は憎悪の大賞ですらあったのだ>

 これは都知事選に立候補した田母神氏がツイッターで語ったことに似ている。
<弱者救済が行き過ぎると社会はどんどん駄目になります。
 国を作ってきたのは時の権力者と金持ちです。
 言葉は悪いが貧乏人は御すそ分けに預かって生きてきたのです>

 さて、ルドルフは自分の権力を盤石なものにするために、さまざまな政策を行っていく。
 引用すると、
<彼は即座に議会を永久解散した。
 そして翌年、帝国内務省に社会秩序維持曲が設立され、政治犯に対して猛威をふるうことになった。ルドルフの腹心であるエルンスト・ファルストロング内務尚書(大臣)が自らその局長をかね、「法律によらず主体的な判断によって」逮捕、拘禁、投獄、懲罰をおこなったのである。
 それは権力と暴力の祝福されざる結婚だった>

 そして、ルドルフは反対勢力を排除・虐殺。
 その虐殺をおこなった当事者は自分を正当化するために次のように語る。
「社会の絶対多数の安寧と福祉のために、ひと握りの危険分子を排除したのだ」
 これは虐殺をきれいに見せるための詭弁だ。
 権力者が語る<きれいな言葉>ほど疑ってかかった方がいいという良い例だ。
 
 先日、安倍首相は国会での演説で<責任野党>という言葉を使った。
 これは、自分たちにしっぽを振ってくる野党のみ<責任野党>として対話に応じるこということらしいが、完全に民主主義に反している。
 政策が明らかに悪い場合は、野党が100%反対するのは当然の行為だ。
 政治の世界はこんな詭弁に溢れている。

 『銀河英雄伝説』のルドルフにとっても、安倍首相にとっても、<民主主義>は面倒くさいものに違いない。
 俺たちは優秀なんだから、黙って従え。バカなやつらがグダグダ反対するな、と考えているように思われる。

コメント
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