清盛(松山ケンイチ)がまたひとつ成長した。
前回、「面白う生きたい」と語った清盛。
でも、具体性に欠けていたんですよね。
それを今回、海賊の兎丸(加藤浩次)の言葉から与えられた。
つまり
「俺は海賊王になる。海賊王になって義と悪を逆にする」
海賊は現在の体制だと<悪>だが、民を苦しめている公家たちこそ<悪>ではないか。
海賊が公家を倒して頂点に立てば、<義>(=正義)になる。
清盛は「途方もないこと」と驚きながら、「面白い。そなたとは気が合いそうじゃ」と言って、すぐに兎丸の考え方に共感する。
なぜなら兎丸の言葉こそが、今まで清盛の中で言葉にならずにもやもやしてものだったからだ。
兎丸のこの言葉で、清盛は自分のぼんやりしていた考えに形を与えられた。
そして、この作品で何度も繰り返されるモチーフ。
「遊びをせんとや生まれけむ。戯れせんとや生まれけむ」
これが李白の「春夜宴桃李園序」の詩と共に現れる。
「人生は、はかないものである。すぐに過ぎてしまう。だから今という時を大いに楽しもう。己の生をあるがままに謳歌しよう」
「遊びをせんとや……」は清盛がお腹の中にいた時、子守歌によって聞かされた母の言葉だが、清盛の中にしっかりと生きているんですね。
それと、父・忠盛(中井貴一)の「わしは王家の犬では終わりたくないのだ」という言葉。
この父・母の言葉によって、清盛の人格が作られている。
これらが結実したのが、兎丸に語った次のせりふ。
「お前もわしも、この面白うない世を面白う生きようとあがいている。
わしは王家の犬では終わらぬ。
平氏のもとでなら、もっと面白いことができるはずじゃ。
お前の命、わしに、平氏に預けよ!」
これは兎丸に言った言葉だが、自分に向けて言った言葉でもある。
清盛はこれで完全に自分を見出した。
清盛がせりふの中で<平氏>にこだわっているのもポイント。
清盛は<平氏>として生きていくことを決めたのだ。
<平氏として><王家の犬では終わらず><面白く生きる>
これが清盛のアイデンティティ。
こうして自分をしっかりと見出した清盛は、これから一気に突っ走っていくのだろう。
白河法皇の禍々しい膨大なエネルギーを<平氏として、王家の犬では終わらず、面白く生きる>ことに使っていくのだろう。
もっとも次回は恋愛話で迷いそうであるが……。
この作品、見事な<青春物語>である。
※追記
清盛が敵対していた兎丸を仲間にする所なんかは、少年ジャンプに見られる<少年漫画>の世界ですよね。
義朝(玉木宏)と由良姫(田中麗奈)が反発し合いながら惹かれていくのは<少女漫画>の世界。
このあたりがほどよくブレンドされていて、コミック世代には心地いい。
前回、「面白う生きたい」と語った清盛。
でも、具体性に欠けていたんですよね。
それを今回、海賊の兎丸(加藤浩次)の言葉から与えられた。
つまり
「俺は海賊王になる。海賊王になって義と悪を逆にする」
海賊は現在の体制だと<悪>だが、民を苦しめている公家たちこそ<悪>ではないか。
海賊が公家を倒して頂点に立てば、<義>(=正義)になる。
清盛は「途方もないこと」と驚きながら、「面白い。そなたとは気が合いそうじゃ」と言って、すぐに兎丸の考え方に共感する。
なぜなら兎丸の言葉こそが、今まで清盛の中で言葉にならずにもやもやしてものだったからだ。
兎丸のこの言葉で、清盛は自分のぼんやりしていた考えに形を与えられた。
そして、この作品で何度も繰り返されるモチーフ。
「遊びをせんとや生まれけむ。戯れせんとや生まれけむ」
これが李白の「春夜宴桃李園序」の詩と共に現れる。
「人生は、はかないものである。すぐに過ぎてしまう。だから今という時を大いに楽しもう。己の生をあるがままに謳歌しよう」
「遊びをせんとや……」は清盛がお腹の中にいた時、子守歌によって聞かされた母の言葉だが、清盛の中にしっかりと生きているんですね。
それと、父・忠盛(中井貴一)の「わしは王家の犬では終わりたくないのだ」という言葉。
この父・母の言葉によって、清盛の人格が作られている。
これらが結実したのが、兎丸に語った次のせりふ。
「お前もわしも、この面白うない世を面白う生きようとあがいている。
わしは王家の犬では終わらぬ。
平氏のもとでなら、もっと面白いことができるはずじゃ。
お前の命、わしに、平氏に預けよ!」
これは兎丸に言った言葉だが、自分に向けて言った言葉でもある。
清盛はこれで完全に自分を見出した。
清盛がせりふの中で<平氏>にこだわっているのもポイント。
清盛は<平氏>として生きていくことを決めたのだ。
<平氏として><王家の犬では終わらず><面白く生きる>
これが清盛のアイデンティティ。
こうして自分をしっかりと見出した清盛は、これから一気に突っ走っていくのだろう。
白河法皇の禍々しい膨大なエネルギーを<平氏として、王家の犬では終わらず、面白く生きる>ことに使っていくのだろう。
もっとも次回は恋愛話で迷いそうであるが……。
この作品、見事な<青春物語>である。
※追記
清盛が敵対していた兎丸を仲間にする所なんかは、少年ジャンプに見られる<少年漫画>の世界ですよね。
義朝(玉木宏)と由良姫(田中麗奈)が反発し合いながら惹かれていくのは<少女漫画>の世界。
このあたりがほどよくブレンドされていて、コミック世代には心地いい。
おはようございま~す♪
コウジさんが 見事に解説してくださったので
3つのキーワードが繋がり理解できました
またしても
「面白う生きてやる」が出てきたときは
こいつはコレしか言わないのか!
昨年の「戦はイヤでございます」と同じじゃないか!
と思い いささかウンザリしていましたが
良い意味で納得しました
いい加減に無鉄砲お子様清盛を卒業してもらわないと飽きますので 良かったと思います
同い年の西行は
堀川局と大人なことを・・・(@@;)
私もmegumiさんと同じく
>いい加減に無鉄砲お子様清盛を卒業してもらわないと飽きます
と思っていましたので。
>こうして自分をしっかりと見出した清盛は、これから一気に突っ走っていくのだろう。
今回は第一話以来の「青春物語」出生の部の総決算だったと思います。
>これは兎丸に言った言葉だが、自分に向けて言った言葉でもある。
この言葉も含め、これに先立つ正味3分に及ぶ兎丸との激闘の間も清盛は叫び続けていましたが、忠盛も平家一門の面々もこれを聞いていました。
清盛を射殺しようとした海賊を倒したのが忠正だったというのも、心底から再確認された平家一門との絆を象徴していて良かったと思います。
他方、「女の戦い」
先週も書いたとおり、得子は鳥羽院に手籠めにされた咄嗟の間にそれまでの生き方を180度転換する人生設計を組み上げて決断できるほどの強くしたたかな才女。
男なら機を見るに敏な天才的軍略家ないしは政治家に匹敵します。
その彼女の方がなぜ璋子を嫉妬するのか-つまり劣勢なのか、少し分かってきました。
璋子の人格的欠陥-佐藤義清の診断によれば「心がないこと」-がむしろ強みになっているわけです。
今回の「女の戦い」はわずかに一場面。
璋子は得子に道を譲り、得子は璋子に懐妊を告げる。
外面的・客観的には得子の全面的勝利であるにもかかわらず、内面的・主観的には敗北。
正常人ならダメージを受けるこの事態に対して「心がない」璋子は何も感じていない。
相手のダメージを期待していた得子の方が苛立っています。
才女の側が独り相撲を取って翻弄される、という図式のようです。
「心のない」璋子を演じる檀れいさんの表情の演技も目が離せないと思います。
清盛はコウジさんのおっしゃるとおり、面白く生きる、の方向性が示されました。
その示し方も、自分に出生の秘密を偶然にも伝えた兎丸との再会のなかで、まさに今までウジウジモヤモヤ悩んできた自分との決別を表明という作り。モラトリアムの完結をはっきり表しましたね。
ほかにも、ほほう~と思ったのは、
清盛が単身海に出て行ったのは盛康の負傷が原因ですが、盛康と言えばいつもお目付け役として「私の不徳の致すところ」と平身低頭で清盛をかばい、前回は鱸丸のこともかばってくれた人物。
そういう経緯があるから無鉄砲な行動にも納得がいきました。
そしていつもはアンチ清盛の忠正でさえ、自分を助けにやってきて、弓を射ようとした海賊を切ってくれた。
自分が平氏の子で、平氏に守られて生きているという切実な実感。
父・忠盛のためだけでなく、平氏の一族として生きることの決意が芽生えるシーンとなっていました。
今回出番の少なかった義朝と由良姫のシーンも秀逸。
由良姫に「父親に恥をかかせるは、心根の醜い女」と説教するセリフは、義朝だからこそのセリフ。清盛には言えないセリフ。人物造形がしっかりしており、書き分けているのがよくわかりました。
璋子様と得子様のシーンも、あの短さで、2人の立場と人間性と感情を描いており、鮮やかだったな~と感じました。
ほんと、今年は楽しみです。
いつもありがとうございます。
清盛は少しずつ大人になっている感じがしますね。
特に今回「平氏として」と言えた所は大きな進歩。
大人になるということは、自分のアイデンティティを確立することだと思いますが、これまでの清盛は、自分が何者であるかわからなかった。
忠盛と血が繋がっていない自分は、平家の人間でありながら平家でない。
この自己矛盾を見事に乗り越えて、平氏である自分を見出したのではないかと思っています。
今後の清盛がどんな自分を見出していくか楽しみですね。
それから、渋谷のGEOで「ソウル1945」を見つけました。
これから一気に見ますよ。
レンタル料は何と1週間で50円!
借りる方としては有り難いのですが、ソフトの値段としてこれでいいのかとも思ってしまいます。
いつもありがとうございます。
>今回は第一話以来の「青春物語」出生の部の総決算だったと思います。
まったく同感です。
清盛の中のもやもやとしていたものが、ひとつに繋がった感じがしますね。
そして次回が「青春物語」として欠かせないもうひとつの要素、恋愛。
心憎い構成だと思います。
おっしゃるとおり、忠正もよかったですね。
清盛を助けた所もよかったですが、清盛が兎丸に叫んだ苦悩の胸の内も、忠正の心に刺さったことでしょう。
TEPOさんの得子と璋子の関係の分析、鋭いですね。
得子にしてみれば、鳥羽の子を宿して璋子に勝ったつもりだったのですが、璋子は何も感じていない。
璋子が悔しさで怒ったりすれば、最高だったのでしょうが、まったくそんなことはなかった。
得子は永遠に璋子に勝てないんですね。
まさに<独り相撲>。
この<心のない女・璋子>という人物造形をした脚本・藤本さんは大したものですね。
いつもありがとうございます。
盛康と忠正。
脇役がしっかり描かれている作品というのは見ていて心地いいですよね。
おっしゃるとおり、盛康がしっかり描かれていなかったら、清盛のひとりで乗り込んでいく行動は説得力がなかった。
忠正も前回のことがあるから、清盛を助けたシーンが生きましたし、清盛の平氏として生きていく気持ちにも繋がった。
義朝も、おっしゃるとおり、父親との関係がそれまでにしっかり描かれているから、由良姫に対するあのせりふが出て来るんですよね。
脇役の人物造形がしっかりしている作品は見ていて楽しいです。
脇役がしっかりしている分、主人公の清盛が、迷ってあっちこっちに行っても大丈夫なんですよね。
この作品、脇役の人物造形の大切さを教えてくれますね。