平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

いだてん 第31回 「トップ・オブ・ザ・ワールド」~1個残してきたのは田畑さんの、品格!そう、品格だと思います、私は

2019年08月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 ロサンゼルスオリンピック。
 日本水泳の圧倒的な勝利で、現地の日系人が自信と誇りを取り戻した。
 老人は叫ぶ。
「俺は日本人だ!」

 これ、今、テレビや書店で人気の『日本スゴイ!』→『自分に自信』に通じるものがあるんですけど、改めて『国とは何か?』を考えてしまいます。
 現にヒトラーは、次のベルリン大会で、オリンピックの勝利による国威の発揚、民族意識の高揚をおこなうわけですし。
 自分に自信や誇りを持てなくなった時に拠り所にするのが『国』。
 僕は個人主義者なので、この意識・感覚がよくわかりません。
 もちろん僕も当時の日系人の過酷な状況にいたら、老人と同じことをしていたと思いますが。

 一方で、国境を越えて人と人を繋ぐのが、スポーツであり文化でもある。
 エキシビションマッチで披露した『日本泳法』。
 これに外国人たちは拍手喝采する。
 外国の選手たちは、これから学ぶことは何かを考える。
 これがスポーツと文化の力なんですよね。
 異なるものを排除するのではなく、面白がり学ぶ。
 感動が人と人を繋ぐ。
 世界中の人間がこんなふうだったら、紛争や戦争は少なくなるでしょうね。
 …………

 酒井菊枝嬢(麻生久美子)はついに言葉を発しました!
 水泳で一種目だけ金メダルを獲れなかったことで自分を責める田畑政治(阿部サダヲ)に対して、
「全部取らなくてよかったと思います、私は。
 全部取るなんて面白くないし、次の目標がなくなりますから。
 1個残してきたのは田畑さんの、何というか、品格!そう、品格だと思います、私は」

 『品格』か~。いい言葉ですね。
 すべてを手に入れようと貪ることは確かに意地汚くて品格に欠ける。
 現実社会(特に新自由主義社会)は基本、奪い合いですが、『品格』『慎み』『上品』といった言葉が奪い合いを緩和している。

 ナオミ(織田梨沙)が叫んだ言葉も興味深い。
「アイム ジャパニーズ・アメリカン!」
 ナオミは老人と違って二世だから『日本人』じゃなくて『ジャパニーズ・アメリカン』なんですね。
 ここからがマニアックな話なんですけど、
 この熱狂の中で他のエスタブリッシュじゃない移民たちも実は叫んでいました。
「アイム アフリカン・アメリカン!」
「アイム イスパニック・アメリカン!」
 僕の英語力ではここまでしか聴き取れなかったんですけど、他にもさまざまな移民の人たちが叫んでいました。
 これがアメリカなんですね。

『一種目も失うな』のはり紙をとったら、『オリンピックは参加することに意味がある。勝つことではなくどのように戦うかが重要である』というクーベルタン男爵の言葉があったのも面白い。
 クーベルタン男爵の言葉は田畑政治とは対極ですね。
 政治もやがてクーベルタンの考え方に近くなっていくのでしょうか?

 最後は前畑秀子役の上白石萌歌さん。
 前畑秀子を演じるために体重を8キロ増やしたそうです。
 結果、素朴な感じがよく出ていましたね。


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4 コメント

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Unknown (ロギー)
2019-08-19 20:00:18
まあ~当時の日系人はそれだけアメリカ社会で酷い迫害と差別を受けてましたからな。
しかも、第二次大戦でアメリカ在住に日系アメリカ人たちは財産と土地を不当に没収されて強制収容所に収容されますからね。
しかし、それでも日系アメリカ人たちは諦めずアメリカという土地で喰らいついていったんですよ。
今では日系アメリカ人はアメリカ社会で高い地位についてますし、金持ちの白人しか住めない町でも日系人だとあっさりオッケーだそうです(逆に金を持っても黒人やヒスパニックはだめだそうです)
ここまで至れたのはロス五輪での田畑達の活躍で日系人たちは勇気づけられたのが多少あった気がします。


それにしても、治五郎先生は相変わらず迷惑でいい加減な爺ですね。
政治が起こるのも無理はないです。
あの先生は選手たちが苦悩してる時に東京招致に奔走してるだけなんですよ。
そして、美味しい所は奪っていく政治でなくても憤慨しますよ。


酒井嬢は品格と解釈は彼女の優しさですね。
同時に今の新自由主義社会の怖さをさりげなく感じましたよ。
でも、大横田に金をとらせることが出来なかった事を悔やんでる涙を流す政治には人としての情けや温かみがあると思います。
それに全種目制覇は日本国民を少しでも元気にさせようとする彼のジャーナリスト魂でもありますからね。
まあ~メダルを全部取ったら、政治は調子に乗りそうですから、酒井嬢の言ってることは間違いないです。


終盤で前田秀子の努力を無にする発言をしたお偉いさん(東京府知事でしたっけ?)の発言に政治は今にもキレそうでしたが、こういう所で彼は選手たちへの愛は深いから貪欲に堕ちる心配はないと思います。

今回は長文で申し訳ないです。
それだけ面白かったんですがね。
返信する
ついに言葉を! (TEPO)
2019-08-19 22:16:00
>酒井菊枝嬢はついに言葉を発しました!

私はずっとこれを待っていました。果たして彼女の最初の台詞は何なのかと。
まさに彼女自身の「品格」と「優しさ」を示す言葉だったと思います。それにしても
「変な声」
名前も忘れたりと政治は何とも無礼千万―「お見合い写真」以来でしたね―な奴。
しかし、そんな政治が「ありがとう」のひと言で示した一瞬の素直さで彼女は政治を許し、受け入れたのでしょうね。
先週も書きましたが政治にはもったいないような「出来過ぎの妻」―結婚は来週か―です。

>この熱狂の中で他のエスタブリッシュじゃない移民たちも実は叫んでいました。

いや、実に注意深く聴いてらっしゃいましたね。
アメリカではかつてほどではないにせよ現在も相変わらず差別意識が生きているようです。
トランプ政権が支持されているのもその証拠でしょう。
長く留学した経験―21世紀になってからなので比較的最近のこと―のある知人によれば、一部の白人はパーティーの席でも「ラテン系」の踊りには絶対に参加しようとしなかったそうです。
他方、日本人たちはどこの踊りでもこだわり無く参加しようとしたそうで、随分と社交的になったものです。

>前畑秀子を演じるために体重を8キロ増やしたそうです。

上白石萌歌さん、私は「義母と娘のブルース」以来ですがその頃から表現力が印象的でした。
若い娘さんが「増量」とは抵抗があるでしょうに、役作り頑張りますね。
返信する
治五郎先生の理想 (コウジ)
2019-08-20 13:18:56
ロギーさん

いつもありがとうございます。

>美味しい所は奪っていく政治でなくても憤慨しますよ。
ロギーさん、真面目すぎですよ~!(笑)
僕は『美味しい所を持っていくギャグ』として捉えました。
というか、あれが治五郎先生の目指した理想なんですよね。
スポーツが皆に元気と勇気を与え、人と人が繋がる。
だから、嬉しくなって、自分を抑えられず、あんな行動を取ってしまった。

大横田に金メダルを獲らせなかったことを責めるシーンは田畑の別の顔を描きましたよね。
田畑はただのお調子者ではなかった。

前畑秀子をめぐる東京市長との対決は次回に持ち込みましたが、これが政治の『勝利第一』のオリンピック観を変えるきっかけになるのではないかと僕は思っています。

それと、今回のエピ、僕も面白かったので、人見絹枝のエピソードと共にハードディスクに残しておくつもりです。
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根深いですね (コウジ)
2019-08-20 13:36:19
TEPOさん

いつもありがとうございます。

酒井菊枝嬢、しゃべりましたね。
その時の政治のリアクションが『変な声』(笑)
いい感じで裏切っているセリフですよね。
でも、おっしゃるとおり、菊枝の言葉で政治は救われました。
仕事でも的確なフォローをしてくれますし、ほんと「出来過ぎの妻」ですよね。

アメリカの白人至上主義は今でもまだ残ってるんですか。
海外ドラマなどを見ると、アフリカ系やアジア系が活躍しているので、すでに克服されたのかと思っていました。
根深いですね。
自分たちがマイノリティになることを怖れているのかもしれませんね。

上白石萌歌さんは前季ドラマ『3年A組』に出ていたので見ていましたが、今は笑福亭鶴瓶師匠のトーク番組『A-stuio』(土曜11時)にアシスタントとして出ています。
演技ではない上白石さんを見られて、なかなか面白いです。
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