江戸川乱歩は「幻影の城主」という随筆の中でこの様に書いている。
「弱者であった少年は、現実の、地上の城主になることを諦め、幻影の国に一城を
築いて、そこの城主になってみたいと考えた」
乱歩は現実よりは空想の世界に生きたいと思ったのである。
それは新聞記者あがりの松本清張のスタンスとは大きく違う。
清張の小説を書く動機は次の様なものである。
「松本清張はそれまでの探偵小説を読んで、人物が描かれていないことに不満を抱き、一握りのマニアを満足させる謎解き小説から、動機にウェイトを置いた社会性のある推理小説を書いた」(新潮現代文学全集「松本清張」解説/尾崎秀樹)
清張は、空想の世界よりも現実を的確に描きたいと思った。
それは乱歩と清張の資質に拠るのだろう。
乱歩は自分の少年時代をふり返ってこう書いている。
「世界お伽噺の遠い異国の世界が、昼間のめんこ遊びなぞよりは、グッと真に迫った好奇に満ちた私の現実であった」
「薄情にされたり無愛想にされたりすることに人一倍敏感な癖に、お能の面のように無表情な、お人好しの顔をして、内心激しい現実嫌悪を感じていた」
現実への違和感は多かれ少なかれ人にはあるものだろうが、乱歩は現実に背を向け、空想の世界に逃げ込んだ。空想の世界に逃げ込むばかりではなく、みずから作り出した。
それが悪いと言っているのではない。
すごくよくわかる。
清張だって現実への違和感を感じていただろう。
清張は、現実への違和感を自分の筆で再構築することで、現実を自分のものにしようとしたのだ。
現実への違和感。
これが作家の資質の第1歩なのだ。
そこからどこへ行くかは作家の自由だ。
「弱者であった少年は、現実の、地上の城主になることを諦め、幻影の国に一城を
築いて、そこの城主になってみたいと考えた」
乱歩は現実よりは空想の世界に生きたいと思ったのである。
それは新聞記者あがりの松本清張のスタンスとは大きく違う。
清張の小説を書く動機は次の様なものである。
「松本清張はそれまでの探偵小説を読んで、人物が描かれていないことに不満を抱き、一握りのマニアを満足させる謎解き小説から、動機にウェイトを置いた社会性のある推理小説を書いた」(新潮現代文学全集「松本清張」解説/尾崎秀樹)
清張は、空想の世界よりも現実を的確に描きたいと思った。
それは乱歩と清張の資質に拠るのだろう。
乱歩は自分の少年時代をふり返ってこう書いている。
「世界お伽噺の遠い異国の世界が、昼間のめんこ遊びなぞよりは、グッと真に迫った好奇に満ちた私の現実であった」
「薄情にされたり無愛想にされたりすることに人一倍敏感な癖に、お能の面のように無表情な、お人好しの顔をして、内心激しい現実嫌悪を感じていた」
現実への違和感は多かれ少なかれ人にはあるものだろうが、乱歩は現実に背を向け、空想の世界に逃げ込んだ。空想の世界に逃げ込むばかりではなく、みずから作り出した。
それが悪いと言っているのではない。
すごくよくわかる。
清張だって現実への違和感を感じていただろう。
清張は、現実への違和感を自分の筆で再構築することで、現実を自分のものにしようとしたのだ。
現実への違和感。
これが作家の資質の第1歩なのだ。
そこからどこへ行くかは作家の自由だ。
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