平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「裏世界ピクニック」 宮澤伊織 ~少女たちは今日も「裏世界」にピクニックしに行く

2022年11月05日 | 小説
 四階、六階、二階、十階、一階、三階、八階──
 ある雑居ビルのエレベーターの階数ボタンを、
 暗証番号のように、ある順番で押していくと「裏世界」に行ける。

 実にわくわくする設定だ。
「裏世界」に通じるゲートは神社の鳥居など、他にもいろいろあって、
 人は時々、迷い込む。

 その裏世界は荒涼としていて、罠や奇怪な生き物がいる。
 その生き物は「都市伝説」で語られてきた生き物。
 ここで「都市伝説」と「裏世界」が繋がった。
「都市伝説」で語られて来た生き物は「裏世界」の住人だったのだ。

 ヒロイン空魚(そらお)はそんな「裏世界」の魅せられている。
 もともと「都市伝説」が好きだったし、
 オモテの現実は退屈で窮屈だからだ。
 裏世界は危険な場所なのに空魚は「ピクニック」をするように歩きまわり、元の世界に戻って来る。

 現実への違和感と異世界への憧れ。

「なろう系」の小説など、異世界転生ものは数多く描かれているが、
 その大半は「異世界」は第二の人生を踏み出すのに居心地のいい場所で、
 圧倒的な力を持ち、なぜか女の子にモテる。笑

 だが、この『裏世界ピクニック』は『なろう系』とは一線を画す。
 裏世界は荒涼として恐ろしい場所なのだ。
 それなのにヒロイン空魚は「裏世界」に魅せられている。
 空魚の武器は「裏世界」の虚像を見破る目。

 そんな空魚が鳥子に出会う。
 空魚は鳥子に振りまわされながらも、いっしょに「裏世界」を冒険し、心を通わせていく。
 他人といっしょにいることに違和感がなくなり、むしろ楽しくなっていく。
 他人のために行動するようにもなる。

 現実から離れて「裏世界」を楽しむ少女たち。
 ここでないどこか。
 現実は生きにくくて退屈なのだ。
 空魚たちは今日も「裏世界」にピクニックしに行く。


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