平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

どうする家康 第39回「太閤、くたばる」~天下などどうでもええ。秀頼が幸せで無事に暮らしていけるのなら、それでええ

2023年10月16日 | 大河ドラマ・時代劇
「秀頼が幸せで無事に暮らしていけるのなら、それでええ」
 欲望の怪物・秀吉(ムロツヨシ)が最後にたどり着いた望みはこれだった。
 天下も唐も要らない。
 望むのは秀頼の幸せ。
 ただそれだけ。
 人の人生とはこのようなものなのかもしれない。

 家康(松本潤)と秀吉の対決。
 秀吉は「豊臣秀吉」と「情けないただの老人」に間を行き来する。
 情けない老人と思っていると、時折、鋭い天下人・豊臣秀吉が顔を見せる。

 天下人・豊臣秀吉は未来を洞察している。
・石田三成(中村七之助)の5人の奉行による合議制が上手く行かないこと。
・天下安寧のためには強いリーダーが必要なこと。
・それが家康であること。
「すまぬのう。上手くやりなされや」
 秀吉はあとを家康に託した。

 あとは感情のぶつかり合い。
 ここには「殿下」と「内府」の関係はない。
 人と人とのぶつかり合いだ。
「情けない! これではただの老人ではないか!」
「豊臣の天下はわし一代で終わりじゃ!」
「こんなに滅茶苦茶にして放り出すのか!」
「あとはお前がどうにかせい」
 そしてお互いを認め合う。
「猿、わしはお前が大嫌いじゃ!」
「わしはお前が好きだったに」
「信長様は自分を引き継ぐのは家康だと思っていた」
「天下を引き継いだのはお前だ。まことに見事であった」

 途中、秀吉が死んだふりをする芝居があるが、これはアドリブだろう。
 松本潤さんもよく対応した。

 あとを託されて家康は覚悟する。
 天下人になることは「豊臣からの天下の簒奪」を意味する。
 つまり「悪者」になることだが、家康はそれを引き受ける。
 酒井忠次(大森南朋)の言葉も背中を押した。
「殿だからできるのです。いくさが嫌いな殿だからできるのです。天下を取りなさい」

 しかし、ここで思わぬ妄執の怪物が現われた。
「秀頼はわたしの子、天下はわたしのもの。あとは任せよ、猿」
 淀君(北川景子)だ。
 淀は秀吉が家康に天下を託したことを良しとしなかった。
 この淀の心の奥底にあるのは何なのだろう?
 何に囚われているのだろう?

 そして石田三成はなぜ関ヶ原で戦うのだろう?
 彼が主張する「五奉行合議制」を家康が否定し、天下簒奪しようとしていると考えたからなのか?

 ここには世代のギャップがある。
 戦国時代を生き抜いてきた家康、秀吉は「合議制」では上手くいかないことを知っている。
 家康は「合議制」を支えるつもりだったが、三成の人望のなさや淀の存在が起因して
 世の安寧のために自分が手を染める決断をするのだろう。


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2 コメント

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「天下」 (TEPO)
2023-10-16 17:40:29
「秀頼は貴方の子だとお思い?」

前回予告編での茶々・淀君の「爆弾発言」は、思わせ振りな台詞切り抜きによるミスリードでした。
今後は意外に「定説的理解」を大きく外すような仕掛けはないのかもしれません。
しかし、「秀頼はこの私の子、天下は渡さぬ」という言葉は、たしかに「妄執の怪物」としての「ラスボス宣言」。
秀吉から「呼び鈴」を遠ざけたところは、「鎌倉殿」で義時から解毒薬を奪った政子を連想しました。
しかしながら、臨終の瞬間、秀吉を地獄に突き落とすような言葉を浴びせながら、いざ秀吉が亡くなると、涙を流しながら抱きしめた彼女の思いは複雑です。

>この淀の心の奥底にあるのは何なのだろう?何に囚われているのだろう?

本作の設定では、北之庄での原体験に根ざす秀吉・家康への恨みなのでしょうね。
秀吉については「父母の仇」。
しかし、先週家康に語ったように「自分に手を差し伸べてくれた夫」としての思いもたしかにあったのでしょう。
家康については、北之庄で母と自分たちを見捨てたこと。
ここで家康が殊更に「恨み」の対象となるのは、家康にとって終始瀬名が「最愛の女性」であり、お市が家康を慕っていたにもかかわらず振られ続けた、という本作最大の「仕掛け」の帰結です。

本作では殊更に「ロマンチスト」として描かれてきた石田三成ですが、「五大老・五奉行の合議制」の「夢」が問題となるようです。

>家康は「合議制」を支えるつもりだったが、三成の人望のなさや淀の存在が起因して世の安寧のために自分が手を染める決断をするのだろう。

仰るとおりの展開―それは「定説的理解」に沿っている―になると私も思いますが、三成の「夢」には瀬名の「EJU構想」と通じるものがありますね。
だから、家康には三成に肩入れしたい気持ちがあるのでしょうね。
しかし、こうした「夢」は実力者たちが本気で乗ってくれないと成立しません。
家康は「EJU構想」が勝頼の離反によって崩壊したことを経験しています。
三成の「夢」も、「五大老」側の事情―前田利家の死去、毛利輝元・上杉景勝の離反―で「上手く」ゆかなくなってゆくことでしょう。

本作では退場してゆく老臣がその回の「ミニ主人公」になっています。
関東移封をテーマとする第37話は「大久保忠世の回」でもありました。
今回のミニ主人公は酒井忠次で、珍しくフェードアウトにも「ナレ死」にもせずに夫婦愛に満ちた最期を描いていました。
しかし、家康に「天下を取れ」と促す一番肝心の台詞はそこでは飛ばして、回想の形で最後の場面にもってきました。
三成の言葉、忠次の言葉を前にした「分かれ道」の形にして「どうする家康」と。
返信する
どうする? は生きていた! (コウジ)
2023-10-17 08:59:42
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>涙を流しながら抱きしめた彼女の思いは複雑です。
そうでした。淀は泣いていましたね。
キャラの一貫性を考えれば、冷徹な笑みを浮べればいいのにそれをしませんでした。
「愛と憎は裏返し」という言葉が浮かびますが、まだもやもやします。
ここが淀という人物解明の鍵なのかもしれませんね。
行き場を失った愛は秀頼に向かうのでしょう。
あとは、北の庄での出来事。
これももう少し掘り下げてほしいですね。

三成に関しては、定番の描かれ方なんでしょうね。
朝鮮で戦った加藤清正、福島正則らが不満を言う。
恩賞がないばかりか、いくさに行かなかった三成が五奉行になって政治をおこなっている。
三成は人間の欲というものを理解していません。
秀吉が朝鮮出兵で「何も得られなかったこと」にこだわったのも、こうした不満が出ることを危惧したからなんでしょうね。

>三成の言葉、忠次の言葉を前にした「分かれ道」の形にして「どうする家康」と。
なるほど~。このコンセプトまだ生きてたんですね。
殿はすっかりたくましくなって、「どうする?」と悩むことがなくなったのかと思っていました。
いずれにしても、秀吉が滅茶苦茶にしたことの収拾を家康は引き受けなければならないようです。
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