平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

麒麟がくる 第21回 「決戦! 桶狭間」~よし、それならやれる! 狙うは今川義元ただひとり!  出陣!!

2020年06月08日 | 大河ドラマ・時代劇
「他のものに目をくれるな! 狙うは今川義元ただひとり!
 出陣!!」

 桶狭間です。
 この誰もが知っている戦国の名シーンをどう描くかは作家や役者の腕の見せ所。

 まずは引き算。
「今川のもとにどのくらいの兵がいるか探れ。あとは善照寺砦で落ち合おう」
 2万の大軍でも戦線が長く伸びてしまったら寡兵なんですね。

 次に「敦盛」
〝思へばこの世は常の住み家にあらず
 草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
 人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
 一度生を享け、滅せぬもののあるべきか〟

 鼓で舞うのではなく、朗々と語ることで表現した。
 どんなに優れた作戦を立てていても思ったとおりに進まないのが現実。
 だとしたら哲学を持ち、腹を決めるしかない。
 その哲学は「死のうは一定。いずれ人は死ぬ」
 哲学を持った人間、腹を決めた人間は強い。
 信長(染谷将太)は必死さにおいて今川義元(片岡愛之助)より勝っていた。

 義元は定石どおりの攻めだった。
 砦をひとつずつ落としていき、大軍をもって本城を攻め落とす。
 信長が善照寺砦にいることも知っていて、対応策も講じていた。
 今作の桶狭間は「奇襲」という解釈で描かれなかった。
 通常なら兵の数で勝る今川の勝利だったが、偶然が重なった。

 まずは雨。
「雨か! 雨か!!」
 これで信長軍の動きが見えなくなった。
 義元も雨風が吹きつける本陣を離れた。

 次に「乱取り」
 これで本陣の兵を割かなくてはならなくなった。

 そして松平元康(風間俊介)。
「先程は鳴海城へ向かえと仰せられた。今度は桶狭間。
 われら三河の者は桶狭間には参りません!
 本日はここを一歩も動きません! あしからず!」

 便利屋として使われたことで元康が激怒した。
 人間の決断というのは損得や理屈でなく、感情で動くことがあるんですね。
 元康としてはめずらしい判断。
 迷っていた元康の背中を押したのは、今川の理不尽と怒りの感情だった。

 これだから歴史や人間の営みは面白い。
 偶然や感情が入り込み、必ずしも定石・戦術・戦略どおりに進まない。
 むしろ偶然や感情が結果を左右することの方が多い。

 いやあ、なかなか面白い桶狭間でした。
 ………………

 信長についても独自の解釈。

「わしは何をしても褒められぬ。
 子供の頃から誰もわしを褒めぬ。
 帰蝶はいつも褒める。
 何をしても褒める。
 あれはわしの母親じゃ」

 信長は「褒める/褒められない」という価値観の中で生きている。
 帰蝶(川口春奈)に「母親」を求めているし、今作の信長は子供のよう。

 こんな信長だから大きな野望を持っているわけではない。
「今川を倒し、次は何をなさいますか?」
 と光秀(長谷川博己)に尋ねられて、
「美濃の国を獲る。
 美濃は帰蝶の里じゃ。美濃を獲って帰蝶を喜ばせてやる」
 と、あくまで「帰蝶」基準の判断。

 現在の信長には、いくさをなくし世の中を安寧にしたいなんて考えはないんですね。
 日々を生き抜くことに精一杯で、
 あとは「褒められること」「帰蝶を喜ばすこと」が主眼。

 面白い信長の解釈ですね。
 次回からはお休みで、戦国大河総集編。
 いろいろな信長や秀吉を見比べることができそうです。


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4 コメント

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斬新な人物造形 (TEPO)
2020-06-09 00:41:08
>なかなか面白い桶狭間でした。
>信長についても独自の解釈。帰蝶に「母親」を求めているし、今作の信長は子供のよう。

信長を帰蝶の(間接的に光秀の)操り人形にまで矮小化してしまっては面白くありません。
以前の道三との会見の時もそうでしたが、今回も信長自身の見せ所(オリジナリティー)はしっかりとありました。
しかしながら、従来の信長像によくある「神がかった天才」には描いていません。
むしろ「子供っぽさ」、時に「弱さ」が前面に出るような描き方は今までには無かった人物像ですね。
染谷将太さんを起用したキャスティングもその辺のイメージが狙いなのかもしれません。

>義元は定石どおりの攻めだった。

今川義元も「従来型」だと「公家」然とした風貌に描かれることが多いのですが、敗れこそしたものの、堂々たる「武将」の雄姿。
そう言えば、数回前に登場した柴田勝家も、従来型の「戦国の荒武者」ではなしに「シャープな」侍の雰囲気でした。

これまで定型化されていたイメージを打破する斬新で意欲的な人物造形の成果が実を結び、新しい世界をしっかりと打ち出せるよう、放送回数が確保できることを願っています。
撮影現場は「三密」だと言いますが。
返信する
戦国武将の味付け (コウジ)
2020-06-09 12:31:48
TEPOさん

いつもありがとうございます。

信長の変化はこれからなんでしょうね。
美濃を平定して、京に上洛して、やっと大きな視点で世の中を捉えられるようになっていく。
同時にどこか狂気を秘めた危うさもある。
「神がかった天才」でない描写にしたことは、今作の良さですよね。

今川義元は「公家」ではなく「武将」でしたね。
『直虎』の時などは白塗りでしゃべらない義元。
義元の描き方も実にバラエティに富んでいます。

話数のカットなどなければ、いずれ信玄なども登場するのでしょうが、どういう味付けをしてくるのか、楽しみです。
返信する
光秀の活躍は再開後のお楽しみ (megumi)
2020-06-09 23:23:56
コウジさん  こんばんは。

今回は チラっとですが
元康の「駿府に残した妻子」という台詞で
築山殿に触れていて 気が済みました。

それと
信長の嫡子を産んだ生駒吉乃の扱いはどうなるんだろう?と
危惧していましたが 存在は明かされましたね。

帰蝶よりも吉乃の方が資料が残っているし 子も産んでいますから
スルーは出来なかったのでしょう。

今川義元は 
皆さんの仰るとおり 武将らしくて好印象を抱きました。
(輿に乗っているのは どうしようも無いのでしょうね)
記憶に残る今川義元としては 中村勘九郎(当時)さんが居ます。


とにかく 光秀が信長に仕えて 本能寺の変まで描いて貰わないことには
収まりがつきませんから 応援するしかありません。

池端さんの構想に浅井攻めとか どうなっているか
想像もつきませんが
お市の方も登場するのでしょうか。


余計なことで恐縮ですが 
駒が登場すると私は萎えます。
その分の尺が勿体無いとすら思います。
返信する
そう言えばお市の方も (コウジ)
2020-06-10 07:22:18
megumiさん

いつもありがとうございます。

>「駿府に残した妻子」
言ってましたね。
このせりふを聞いて、megumiさんを思い出しました!

そう言えば、この作品、お市の方も出て来ていないんですよね。
何と大胆な省略の仕方!
浅井攻めなどはどのくらいの比重で描かれるのか?
何に重点を置いて、何を省略するかは作家の腕の見せ所ですが、池端版戦国絵巻、楽しみになって来ました。
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