平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

真田丸 第4回「挑戦」~昌幸VS信忠、家康、信長、その壮絶な戦いと駆け引き!

2016年02月01日 | 大河ドラマ・時代劇
「これもひとつのいくさである。父の戦いぶりをしかと目に焼きつけておけ」

 というわけで始まる昌幸(草刈正雄)のいくさ。

 最初の敵は、徳川家康(内野聖陽)。
 <武藤喜兵衛>をめぐるやりとり。
 昌幸としては、自分が<武藤喜兵衛>だとは言えないんですよね。
 何しろ武藤喜兵衛に追いかけられて、家康は泣き喚きながら逃げたのですから!
 昌幸は家康の黒歴史を知っている(笑)
 序盤戦は、こんな感じで軽いジャブの打ち合い。

 二番目の敵は、織田信忠(玉置玲央)。
 上杉に密書を送っていることを指摘して、織田と上杉をてんびんに掛けていたのか? と問いつめる。
 だが、昌幸は動じない。
 上杉に送ったのは返書であり、時を稼ぐためのものだったと反論する。
 信忠のストレートパンチに対して見事にカウンターを喰らわせた。
 やはりこの親父、喰えない男だわ~。
 しかし、ここで思わぬ伏兵が現れた。
 家康だ。
 家康は上杉に送った書状が偽書だ、と見抜いていた。
 おまけに、それを証言する直江兼続が別室にいると言う。
 果たして兼続は本当にいるのか?
 昌幸としては、家康の腹の中を読まなければならない。
 映像的には、昌幸と家康が互いの目を凝視するシーンだが、実は激しい戦いがおこなわれている。
 結果としては家康が引き下がって、一応、昌幸の勝ち。

 そして最後の敵、織田信長(吉田鋼太郎)。
 この戦いではウソの駆け引きや腹の探り合いなど通用しない。
 信長が圧倒的な力で、
「真田安房守か。よき面構えじゃ」
 と、押し切って終わり。
 ラスボスは多くを語ってはいけないんですよね。
 饒舌になればなるほど、安っぽくなる。

 この一連の流れ、上手いですね。
 これで<人間の格>というものが的確に描かれた。
 その順番は、信忠<家康<信長
 演劇的でもある。
 ひとつの場所で、昌幸、信忠、家康、信長がやりとりをするだけで火花を散らすドラマになっている。
 派手ないくさのシーンはエキサイティングですが、こうした形でスリルをつくれることこそ作家の力。
 真田家の織田家入りのことだけで、これだけの時間を費やしているのもいい。
 今までの、物事が簡単に解決してしまう大河ドラマとは大きな違い。
 役者さんも演じ甲斐があるだろう。

 さて、信繁(堺雅人)。
 昌幸のような一族の命運を賭ける事柄ではないが、彼もまた策略を使った。
 姉・松(木村佳乃)の人質、安土行き。姉夫婦がいっしょに暮らせるようにするための策略だ。
 しかし、その策略は、おばば様(草笛光子)が「私が行きます」と言い出せば、簡単に崩壊してしまう単純なものだった(笑)
 信幸(大泉洋)がフォローを入れることで、かろうじて成し遂げられたが、まだまだ甘い。
 信繁はおばば様という伏兵の登場を読めなかった。
 でも、昌幸はこの単純な策略にコロッとダマされてしまったんですよね。
 真田家のために安土行きを申し出た松に感動して、「いつのまにこんなに大人に……」(笑)
 家康とは激しい駆け引きをするくせに、こういう単純な策略にはダマされる昌幸(笑)
 本当に憎めない親父です!

 最後に、きり(長澤まさみ)。
 かかとのカサカサについてガールズトークをしていたと思ったら、これが伏線になっていた。
 <かかとは寂しさが募ると荒れる>
 きりは寂しいんですね。
 信繁と梅(黒木華)のことだけでなく、家老の娘ということでも疎外感を味わっている様子。
 松夫婦のことでも頼りにされていたのは、梅でしたし。
 さりげない描写ですが、きりの孤独が掘り下げられました。

 この作品、こうした形で、感情移入出来る人たちがどんどん増えていきます。
 描写を積み重ねることで、登場人物がどんどん魅力的になっていく。
 一年間の大河ドラマはこれが出来るのに、今までこれをやらない作品が多すぎました。


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2 コメント

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勝負・存在感・若さ (TEPO)
2016-02-01 22:50:07
>果たして兼続は本当にいるのか?

おそらく「兼続がいる」というのは家康のはったりだったのでしょう。
いわばポーカーゲームですが、手に汗握る壮絶な勝負でした。

>饒舌になればなるほど、安っぽくなる。

おそらく今回の「真田安房守か。よき面構えじゃ」と光秀打擲の場面だけで信長の登場は終わりでしょう。
昌幸・信繁父子終生の敵手である家康については丁寧に描いておきながら、他の戦国有名人については必要最小限しか登場させないのも本作の特徴ですね。
武田信玄の亡霊を演じられた殺陣師の林邦史朗氏-この出演の直後亡くなられこれが遺作とのこと-は面頰の奥から鋭い眼光を見せるだけでした。
信長や信玄は、登場場面を極小にすることによって却って強烈な存在感が示されていると思います。

>さりげない描写ですが、きりの孤独が掘り下げられました。

信繁もきりもこの時期はまだ少年少女なんですよね。

かつて山内一豊に色仕掛けで迫ったくノ一を演じた時にはむしろ「背伸び」をしていた長澤まさみさんも、今はどこから見ても大人の女性。
きりのいじらしさを十分味わうためには「まだ少女なんだ」と若干脳内補正をする必要があると感じました。

今回私は、真面目人間でありながら決して融通が利かない訳ではなく、「松を安土に」という信繁の「策略」にさりげなく協力してやった信幸が良かったと思います。

ところで、松、きり、梅とみんな木の名前ですね。
きりについては史料では「高梨内記の娘」とだけ知られているとのことで、名は創作のようです。
ことによると松もそうかもしれません。
きりは「竹」にはしなかったのですね。
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メリハリ (コウジ)
2016-02-02 10:27:46
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>いわばポーカーゲームですが、

上手いたとえですね。
昌幸も家康も自分の手の中のカードを見せずに、勝負をしてる。
<兼続>は一発逆転のジョーカーカードですが、どうやら家康は持っていなかったようですね。

信長、信玄の扱いについても、なるほど! です。
メリハリですよね。
一方、このわずかなシーンで存在感を出している。
本能寺の変もあれで終わりでしょうか。
真田家一行が岩櫃城にいく過程(第2話)はしっかり描くのに、本能寺の変はあれですもんね。
でも、作劇上は理にかなっている。
作家としては、絵になる本能寺の変を描きたいという誘惑に駆られる所でしょうが、実によく筆に抑制が効いていると思います。

信幸に関しては、僕も同じことを感じました。
信繁の足りない所を信幸がフォローする。
こんな兄弟の関係が、今後も描かれていきそうですね。

松、きり、梅という名前は三谷さんの創作だったんですね。
松と梅は似ているので、ブログを書く時、いちいち確認するので、結構、苦労するんですよ。
きりが竹でなくて本当によかった(笑)
名前のつけ方に関しては、安易ですよね。
このあたりにも、力の入れ方のメリハリがあるように思いました。

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