直秀(毎熊克哉)の死──作家は直接描くことを避けた。
まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が鳥辺野に行ってみると、横たわる複数の遺体。
散楽の人たちで、その中には直秀もいた。
殺害される瞬間、直秀が何を思い、語ったのかは描かれない。
描かれたのは、土を握りしめたということのみ。
これが意味するのは、悔しさ? 怒り? 抵抗?
解釈は視聴者に委ねられる。
道長が扇子を握らせたのは何だろう?
SNSでは「芸人として葬りたかったから」と考察している方がいて、なるほど!
その後は、直秀の遺体を埋葬するために涙を流しながら地面を掘る道長とまひろ。
カラスが散楽の仲間の肉を啄みに来て追い払う道長。
そして道長の慟哭。
「すまない……! 皆を殺したのは俺だ……! 余計なことをした……!」
ここでも直秀たちがなぜ検非違使たちに殺されたのかは具体的に描かれない。
SNSで紹介されている公式ガイドブックに拠れば「流刑地まで運ぶのが面倒だったから」らしいが、
道長の「手荒なことはしないでくれ」という言葉を検非違使が逆に解釈したと分析する人もいて、
なるほど!
この方が「余計なことをした……!」という道長の言葉がスッキリする。
いずれにしても道長が「余計なことをした」結果、命が奪われてしまった。
本来なら鞭打ちや腕を折ることで済んだのに……。
道長は自分の未熟さを痛感したことだろう。
「運ぶのが面倒だから殺してしまう」「藤原家に忖度して曲解してしまう」という人間の負の部分を
道長は理解していなかった。
直秀の死後、まひろと道長が何を考えたかも多くは語られなかった。
唯一語られたのは、まひろのラストの言葉。
「男であれば勉学に励み、内裏に上がり、世を糺します」
これだけでまひろと道長の決意が伝わった。
まひろと道長は「世を糺す」ために、これから生きていくのだ。
直秀の思いを引き継いで生きていくのだ。
これが直秀に対する供養でもある。
上手い脚本ですね。
普通の脚本家なら、直秀が殺害されるシーンを劇的、あるいはショッキングに描きそう。
具体的な説明がないのも視聴者の想像力をかき立て、逆にまひろたちの気持ちが伝わって来る。
貴族は死者に触れない、死者に触れるのは忌まわしいこと、という前振りがあるから、
まひろたちが直秀に人間として、身分を越えて接していたこともわかる。
まひろと道長が初めて抱き合うのが、このシーンだったというのもせつない。
…………………………………………………………………………
宮廷では花山天皇(本郷奏多)を追い落とす陰謀が進行中。
・兼家(段田安則)に取り憑いていた忯子(井上咲楽)の怨霊が兼家から離れて内裏を彷徨っている。
・だから成仏させる必要がある。
・成仏させるには花山天皇の退位しかない。
という物語をつくるために、兼家は重態を装っていた。
父の権謀術数を知って、道長は自分の甘さを思い知ったことだろう。
世の中にはとんでもない化け物がいる。
藤原実資(秋山竜次)と妻の桐子(中島亜梨沙)のパートはギャグパート。
自分を追い越して出世している藤原義懐(高橋光臣)を妬んで、けしからん。
義懐の横暴に対して、けしからん。
こんな実質に妻の桐子は「わたしに言わずに日記にお書きになればいいじゃないですか?」
この実資の日記が『小右記』になって、後にこの時代の貴重な歴史的な資料になる。
芸人のロバート秋山さんがクソ真面目な人物を演じて、笑いを取っている所が面白い。
あとは──
藤原穆子(石野真子)と赤染衛門(凰稀かなめ)の女の闘いが勃発しそう。
まひろの従者・乙丸(矢部太郎)と道長の従者・百舌彦(本多力)の関係も面白い。
まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が鳥辺野に行ってみると、横たわる複数の遺体。
散楽の人たちで、その中には直秀もいた。
殺害される瞬間、直秀が何を思い、語ったのかは描かれない。
描かれたのは、土を握りしめたということのみ。
これが意味するのは、悔しさ? 怒り? 抵抗?
解釈は視聴者に委ねられる。
道長が扇子を握らせたのは何だろう?
SNSでは「芸人として葬りたかったから」と考察している方がいて、なるほど!
その後は、直秀の遺体を埋葬するために涙を流しながら地面を掘る道長とまひろ。
カラスが散楽の仲間の肉を啄みに来て追い払う道長。
そして道長の慟哭。
「すまない……! 皆を殺したのは俺だ……! 余計なことをした……!」
ここでも直秀たちがなぜ検非違使たちに殺されたのかは具体的に描かれない。
SNSで紹介されている公式ガイドブックに拠れば「流刑地まで運ぶのが面倒だったから」らしいが、
道長の「手荒なことはしないでくれ」という言葉を検非違使が逆に解釈したと分析する人もいて、
なるほど!
この方が「余計なことをした……!」という道長の言葉がスッキリする。
いずれにしても道長が「余計なことをした」結果、命が奪われてしまった。
本来なら鞭打ちや腕を折ることで済んだのに……。
道長は自分の未熟さを痛感したことだろう。
「運ぶのが面倒だから殺してしまう」「藤原家に忖度して曲解してしまう」という人間の負の部分を
道長は理解していなかった。
直秀の死後、まひろと道長が何を考えたかも多くは語られなかった。
唯一語られたのは、まひろのラストの言葉。
「男であれば勉学に励み、内裏に上がり、世を糺します」
これだけでまひろと道長の決意が伝わった。
まひろと道長は「世を糺す」ために、これから生きていくのだ。
直秀の思いを引き継いで生きていくのだ。
これが直秀に対する供養でもある。
上手い脚本ですね。
普通の脚本家なら、直秀が殺害されるシーンを劇的、あるいはショッキングに描きそう。
具体的な説明がないのも視聴者の想像力をかき立て、逆にまひろたちの気持ちが伝わって来る。
貴族は死者に触れない、死者に触れるのは忌まわしいこと、という前振りがあるから、
まひろたちが直秀に人間として、身分を越えて接していたこともわかる。
まひろと道長が初めて抱き合うのが、このシーンだったというのもせつない。
…………………………………………………………………………
宮廷では花山天皇(本郷奏多)を追い落とす陰謀が進行中。
・兼家(段田安則)に取り憑いていた忯子(井上咲楽)の怨霊が兼家から離れて内裏を彷徨っている。
・だから成仏させる必要がある。
・成仏させるには花山天皇の退位しかない。
という物語をつくるために、兼家は重態を装っていた。
父の権謀術数を知って、道長は自分の甘さを思い知ったことだろう。
世の中にはとんでもない化け物がいる。
藤原実資(秋山竜次)と妻の桐子(中島亜梨沙)のパートはギャグパート。
自分を追い越して出世している藤原義懐(高橋光臣)を妬んで、けしからん。
義懐の横暴に対して、けしからん。
こんな実質に妻の桐子は「わたしに言わずに日記にお書きになればいいじゃないですか?」
この実資の日記が『小右記』になって、後にこの時代の貴重な歴史的な資料になる。
芸人のロバート秋山さんがクソ真面目な人物を演じて、笑いを取っている所が面白い。
あとは──
藤原穆子(石野真子)と赤染衛門(凰稀かなめ)の女の闘いが勃発しそう。
まひろの従者・乙丸(矢部太郎)と道長の従者・百舌彦(本多力)の関係も面白い。
しかしやはり、直秀はここで退場だったのですね。
この結果、「辛い場面」嫌いの我が家の長男の予想が見事に当たりました。
これだけ描き込んでいたキャラをここで退場させた脚本は大胆だと思います。
「母上の初回退場」に次ぐサプライズと言えるでしょう。
しかしながら、死者に、すなわち退場した後のキャラに存在感を持たせるというのは大石氏の狙いなのかもしれません。
そうした意味でも、多くのことを敢えて説明的に描かないところは味わい深いですね。
たしかに、解釈の多くの部分は視聴者に委ねられており、その分、含蓄が増します。
なお、「直秀が握り締めていた泥」は演じた毎熊克哉さんのアドリブだったそうです。
毎熊さんも、この演技によって一つの主張をし、その解釈は視聴者に委ねたようです。
兼家と道兼との「策謀」、ほぼ先週予想したとおりでしたが、最初に倒れたのは「仮病」ではなく本当だったようです。
道兼は、父兼家から自分一人だけ―ただし、陰謀の「汚れ役」でしたが―信頼されていたことに「誇り」を持つことができた、という展開でした。
兼家が子供たちに「種明かし」をした今後は、一族一丸となって次回の「事件」へと向かうことでしょう。
おそらく直秀のことがあったからこそ、まひろは「世を糺す」とひと言「口を滑らせ」ましたが、道長は一族の策謀にどのような「世を糺す」意義を見出してゆくのでしょうね。
ともあれ、直秀の死はすれ違っていたまひろと道長の心を再び近づけることになりました。
倫子のこともあるので、今後の展開、またまた予測不能となってきました。
いつもありがとうございます。
TEPOさんの兼家の予想、見事に当たりましたね。
では、なぜ兼家は病を装ったのか?
現代人の価値観で考えると、政敵を欺くためと推理できますが、これだと弱い。
兼家不在の間に義懐たちの力はどんどん増してしまいます。
一方、作家は動機として「忯子の怨霊」を持って来ました。
まさに平安時代の「動機」ですよね。
平安時代にミステリー作家がいたら、こんな推理小説を書いたことでしょう。
怨霊に関しては『源氏物語』にも出て来ますが、まひろはこのエピソードを知って書くことになるのかもしれません。
握っていた土は毎熊克哉さんのアドリブなんですね。
散楽の人々が殺害された理由に関しても、公式ガイドブックの解釈と違っているのはアドリブの結果なのかもしれません。
検非違使が道長の言葉を裏読みして殺害に至ったの方がすっきりします。
まひろと道長の恋愛。
どうまとめるのか、と思っていましたが、TEPOさんが以前おっしゃっていたとおり、世を糺すための同志、ソウルメイトになりそうですね。
ネットではすでに話題になっていますが、直秀に代わるオリジナルキャラとして、松下洸平さんが演じ周明(ヂョウミン)という中国人が登場するとか。
どのようなキャラになるのか、楽しみです。