No. 1152 パナマ文書
投稿日: 2016年6月17日
パナマの法律事務所の膨大な内部文書である「パナマ文書」を、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が公開した。各国の企業や政治家が租税回避地に貯め込んだ隠し財産が暴かれたのである。
租税回避とは、課税が著しく軽いか完全に免除される国や地域に法人を作り、それによって日本の会社であれば日本政府に税金を払わなくてすむやり方だ。パナマ文書は、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が租税回避のために会社設立を手助けした世界の富裕層や企業との契約書類に関する内部文書であり、ICIJはこれを分析し、課税逃れの疑惑を全世界で報道した。
パナマ文書に名前があったから違法行為をしたというわけではないが、文書が公開され、多くの人がその実態を知ることによって租税回避地に法人を作ること、すなわち富裕層や大企業には税金を払わないで済む仕組みがあるということが広く知られたのは大きな進展だろう。財務省は5月23日、パナマと税務情報を交換する協定を締結することで合意したと発表し、国税庁はパナマにある日本人の銀行口座情報を定期的に把握できるようになるという。
経済活動に国境はないとはいえ、遠く離れたカリブ海のパナマやケイマン諸島などに作られる法人の目的は租税回避しかない。手数料を支払って租税回避を利用ができるのは富裕層や多国籍企業であり、そうした課税逃れのために国内では税収が不足し、消費税をはじめ様々な増税がなされてきた。税収不足のツケを払うのは一般国民なのである。
かつては一億総中流と言われた日本だが、近年は貧富の格差が拡大している。アベノミクスはそれを促進させた。総務省は5月に2015年の家計調査報告で2人以上の世帯の平均金融資産額が1,805万円で過去最高になったと報じたが、3分の2の世帯は平均を下回っている。資産額を押し上げているのは一部の富裕層だからだ。また財務省が発表した日本の政府や企業、個人が海外に持つ資産も、2015年末時点で948兆7,290億円と過去最高を更新した。資産から債務を差し引いた対外純資産でも339兆2,630億円と、25年連続で日本は「世界最大の債権国」となった。この金額の中には租税回避地にある、つまり日本政府からの課税を逃れたものも含まれている。
現代社会は一部の富裕層と大多数の労働者という大きな二つの階級に分けられ、富裕層には租税回避をはじめ資産を増やす道があるが、少ない勤労所得だけが収入源の大多数の国民は蓄積速度が遅いか、またはほとんどを消費にまわさなければならず、資産格差と所得格差の相互作用でさらに格差は広がるのである。安倍政権がいくら企業のために法人税を減税しても、企業が利益を国内で運用せずに租税回避地に回していては日本の経済が良くなるはずはない。
マスメディアは富裕層の一人である東京都知事の豪遊問題だけでなく、租税回避地での富裕層や大企業の蓄財を黙認してきた政府に対して、調査や厳格な法整備の必要性を唱え始めて欲しい。そして国民は、消費税増税や社会保障費の削減にはこうした国家の徴税能力の問題があるということを理解しておくべきだ。
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