金融恐慌が起こる本当の理由
「現在の金融恐慌に対する処方箋」、
http://alternativereport1.seesaa.net/article/112303086.html
「厚生労働省元事務次官テロに続いて、全てのフリーターはテロに向かって激走する」、を参照。
http://alternativereport1.seesaa.net/article/110375514.html
書物短評 : アンリ・ジャンメール 「ディオニューソス」 言叢社
: 田中純 「アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮」 青土社
東京タワーを横から見、写真を撮ると、ほぼ二等辺三角形に見える。「東京タワーは二等辺三角形である」、そう断言し、人間は安心する。二等辺三角形なら「人間は良く知っている」。二つの辺の長さが等しく、内角の和が180度である。
しかし、この断言は、上空から東京タワーを見た時、それが、ほぼ正方形である事を見逃し、その点には「眼を閉じている」。この部分については「認識が闇の中」である。さらに、この断言は、東京タワーが電波等の発信源となっている事も「知らない」。この部分については「認識が闇の中」である。
どのような深遠な哲学も、思想も、このような闇からは逃れられない。なぜなら、人間の認識は、言語であり、記号であり、1つのイメージであり、「自然そのもの」、「対象そのもの」では無いからだ。
21世紀、経済の世界化・グローバル化によって、全ての自然物・製品が商品として貨幣によって取引される世界市場が成立しつつある。世界全体が商品として、1ドル、100ドルと言った数字=「記号」によって把握される事になった。しかし、通貨は記号であり、売買される「商品そのもの」「世界そのもの」ではない。そのため「認識が闇」の中にある、不可知の部分を持つ。
どのような精緻な経済学も、言語の集積体である以上、この闇から逃れる事が出来ない。この闇によって、経済学と経済政策は常に復讐を受け、失敗し、恐慌を引き起こす。
恐慌は、やがて戦争に行き着く。
元々、数字には666が悪魔の印、と言った多様な意味が持たされていた(ニュートンは物理学の研究者ではなく、錬金術の研究者であった)。しかし、近代人は、こうした意味を全て切り捨て、東京タワーが正方形であり、電波発信源であると言う点は「見ない事」にし、数字の意味を単一化・単純化して行った。その事によって、複雑な思考を不要とし、「疑う事の出来ない単一の結論」を導き出す計算合理性を入手し、計算速度を手に入れた。コンピューターの出現である。
しかし、数字の織り成す計算合理性の扉は、その余りの単純さ故に、1ミクロンの厚さのアルミホイルで成型されている。その扉の向こうには排除された「世界、自然、人間そのもの」が閉じ込められている。
水深1万mに達した潜水艦のハッチが、水圧で破られるように、数字の合理性で動く市場経済は、必ず崩壊する。水深1万mまで潜水した事が原因であり、世界全体を簡素化し、数値化し過ぎた事が原因である。排除された世界、意味の集積が大き過ぎ、ハッチが「持たない」のである。
ハッチの崩壊と沈没を避けるには、水深100mまで上昇し、時には水を艦内に少量入れ、内外の水圧差をコントロールしなければならない。
アメリカ中央銀行FRBを創立したウォーバーグ一族の異端児アビ・ウォーバーグ(ヴァールブルク)は、その才能ゆえに若くして、市場経済の「行く末を見切った」。貨幣・言語・記号の複雑な意味を「取り戻すため」、水深100mまで上昇するため、アビは美術史家となる。書物として残されている人類の歴史は浅い。しかし彫像等の美術品、遺跡、壁画であれば、書物よりも古く、古代まで遡る事が出来る。そのためアビは、美術史を選択する。
田中のアビ研究は、アビを通じ無数の古代美術について語りながら、未踏の人類史の闇を記述しようとする。市場主義・合理主義の破綻の末に現れる人類史の闇について語る時、美術評論の白眉は哲学に入って行く(p111)。
ディオニューソスは、酒と酒宴の神として、農産物等の自然の恵み・豊穣の神として讃えられている。しかしジャンメールは、ディオニューソスを古代ローマ・ギリシアの美術品にまで遡り調査する事によって、そこに悪魔と呪いの神を見出す。地震・ハリケーン・洪水。古代、自然は人間にとって悪魔であり、災害で命を失った仲間からの呪詛の対象でもあった。人類が、地震に耐え得る建築物、治水技術を発達させ、余剰農産物を生み出し、それを酒として加工し楽しめる段階に達し、初めて、悪魔と呪詛の神は、豊穣の神へと姿を変え、穏やかな表情で描き出されるようになった。しかし、中世、近代社会でも、この柔和なディオニューソスの表情が時として半面柔和に、半面凶暴な悪魔として、左右非対称に描かれる。この双つの顔には、「古代に追放され、排除された意味」が蘇って来る。意味は複層化され、左右の顔面=悪魔と神、「対立物は対立したまま、統一される」。神は悪魔であり、悪魔は神である(注1)。
ジャンメールと田中の仕事は、単に美術史の仕事ではなく、市場原理崩壊後の世界を直視している。それを追跡する事によって、余りに単純化された市場経済の「向こうに在る」、本来の人間世界・自然界を、かいま見ることが出来る。
なお、CIAエージェントとして自民党創立資金を提供した右翼の児玉誉士夫は、第二次世界大戦中、中国で麻薬販売を行い、その財を築いた。その活動資金出資にはホテル・オークラに名前を残す大倉財閥を通じ、ウォーバーグ一族が関与していた。米国中央銀行FRBと自民党が同一資金源で成立していた事になる。また現在の皇太子妃・雅子一族の企業であり、水俣病で多数の日本人を虐殺した日本窒素肥料=チッソ社の創立資金は、大倉財閥を通じウォーバーグが供与していた。田中のウォーバーグ研究の中に、その一端が語られている事は興味深い。
*注1・・・21世紀の日本にとって、中国は「敵であり、味方であり」、ロシアは「敵であり、味方であり」、アメリカは「敵であり、味方である」。古代美術から「教育を受ける事によって」、21世紀の、リアルな現実が見えて来る。
*追補・・・「東京タワーは二等辺三角形である」、と断言し、正方形、電波発信源の面は「無かった事にし」、複層化した意味の世界から「逃亡する」ために、「世界はイルミナティ、ユダヤによって支配されている」と単純化して見せる逃亡者達は、当然、美術史等は、視野の外に置いている。「本当の事は、見なかった事」にしなければ、イルミナティ陰謀論、ユダヤ陰謀論は成り立たない。