日本の中央官庁で始まった英国スパイ組織MI6の暗躍?
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書物短評 : バーナート・ファイス 「帝国主義外交と国際金融1870-1914」 筑摩書房
人類初の世界規模の戦争、第一次世界大戦が、なぜ起こったのか。碩学ファイスによる、経済史研究の本書は、銀行・金融業が中心となった世界規模の資源略奪抗争が、その原因であった事を、明確に記述している。
第二次世界大戦後、世界はアメリカ、ソ連(ロシア)といった2超大国による「分割・平定=カリソメの安定」によって、世界中が戦争に引きづり込まれる「万人の万人に対する闘争」を、かろうじて回避して来た。しかし、この2超大国が崩壊した今、再び、世界各地で資源争奪抗争が激化し始めている。
この資源争奪抗争は、第三次世界大戦のオープニング・ベルである。
2度の世界大戦を経て、なお、人類は未だ無反省であり、金儲け至上主義=強欲から脱出する事は出来なかった。沢山作り、沢山売る、この金儲け主義は過剰生産を起こし、過剰生産物の消費として、戦争による銃砲弾・軍用車両・航空機・住居・ビル・社会インフラ設備の破壊合戦・大量消費合戦=世界大戦が「どうしても必要となる」経済システム。この戦争=資源争奪に勝利した者だけが、資源独占による過剰生産を継続する事が可能になり、それは再び、一定期間を置いて世界大戦を必要とする。
この相互殺戮=人類の共食いシステムを、遂に、人類は克服し得ないまま、今日に至っている。
従って、第三次世界大戦の可能性は必至である。
本書には第一次世界大戦に至るまでの、有象無象の金融利権屋達が、地球を舞台に地下資源の陣地取り合戦=チェスゲームを展開する姿が精緻に描き出されている。ここに登場する金融利権屋の名前を21世紀の金融利権屋の名前に置換すれば、そのまま第三次世界大戦前夜の21世紀現代世界の記述に転用可能となる。オバマ大統領のボス=ズビグニュー・ブレジンスキーが、地球を舞台にしたチェスゲームが政治であると評した言葉が想起される。
ユダヤ陰謀論者、イルミナティ陰謀論者は、本書に登場する有象無象の金融利権屋・全員がユダヤ人またはイルミナティであると証明し、しかも、そのユダヤ人・イルミナティが相互に連絡を取り合い、一丸となって戦争を起こしている事を証明しなければならないが、元より、それは不可能である。歴史に登場する人間達を「思いつくまま、自由気ままに、適当、恣意的に、一部分」取り出し、一部を全体であると誤魔化し、全てはユダヤ・イルミナティが原因であるとする、デマゴキーが、ユダヤ陰謀論・イルミナティ陰謀論の正体である事が、本書のような精緻な歴史記述によって暴露される。
本書のような基本的な知識・素養の無さ=無知が、ユダヤ陰謀論・イルミナティ陰謀論というデマの温床である。
なお、第一次世界大戦前夜のチェスゲームでは、ヨーロッパ大陸の動脈となった鉄道網の嚆矢である、パリ~ルーアン間を通る最初期の鉄道コンパニー・ド・ルエストは英国によって建設されている。また1884年に創立された、アメリカ大陸に投資する英国人の協会である「アメリカ債券・株式保有者英国協会」の資料によれば、英国は、アメリカからメキシコに向かうアチスン・トペカ&サンタフェ鉄道の建設を担っている。
その一方で、同時期、ドイツは、ボルチモア・オハイオ鉄道、ペンシルヴェニア鉄道、USスティールへの出資等、あくまでアメリカ本土への投資と言う形で、チェスの駒を進めている。第二次世界大戦中、アメリカ権力の中枢であるブッシュ一族が、ナチス・ドイツを支援し、第二次世界大戦後も、アメリカ金融界の中枢をナチス勢力が占める出発点を、見る事が出来る。
加藤俊彦による日本の金融史・国家財政史の名著である「本邦銀行史論」東京大学出版会、によれば、日本の戦争費用の圧倒的な額の貸し付けも英国によって行われており、英国はヨーロッパでは、フランスの鉄道大動脈を狙い、本流を走りつつ、アメリカ・極東においては、メキシコ=ラテンアメリカ、日本という辺境部分を「押さえにかかっていた」事が分かる。
サブプライム金融恐慌でアメリカの力が衰え始めると、CIAの牙城であった日本の外務省等の中央官庁で、再びMI6の活動が活発化し始め、NHK特派員時代に、MI6の諜報員=コードネーム「鷹」にリクルートされた手嶋龍一等が、マスコミでベストセラー作家・諜報小説作家として脚光を浴び、小説007シリーズの作家イアン・フレミングの正体が英国海軍情報将校=諜報工作員であった「昔取ったキネヅカ」の再現が行われる等、過去のリフレインが、静かに演奏を開始している。