原発とどう闘うべきか】小出裕章京都大学原子炉実験所助教
【東京オリンピック反対が非国民とうなら、私は喜んで非国民になります】
【紙の爆弾】5月号
(抜粋はじめ)
おそらく次の事故は地震も津波も関係ない
そして敷地の外では約1000平方キロという地域から10万人を超える人々が追わ
れ、流浪化しました。その周辺にも汚染地は広がっています。日本 の法令で言
えば、放射線の管理区域にしなければいけない。つまり人々をそこに住まわせて
はいけないぐらいの土地が1万4000キロくらいあり、数 百万人が捨てられ、赤ん
坊も子供も被爆し続けています。これでは、東京オリンピックどころではないと
思います。いまや東京オリンピックに反対する と非国民だという目で見られる
ようですが、私は喜んで非国民になろうと思います。
要するに自民党政権が自分たちの罪を逃れようとして、嘘をついて騙そうとして
いるわけです。日本ではこれまで58基の原子力発電所を運転してきま した。全
て厳重な安全審査をパスして安全性を確認したとして、認可された原発です。
すべて自民党政権が認可しました。福島の壊れてしまった原子炉 だって、安全だ
というお墨付きを与えたのです。それがこのような事故を起こし、たくさんの人
たちに苦難を追わせている。私はまず、自民党政権の首 脳部を刑務所に入れる
べきだと思っている。
ところが残念ながら日本ではそのような力が全く働かず、自民党の連中はいまだ
にのうのうと政権の座にいます。そして再稼働させる、新たな原発だっ て造っ
てもいい、そして海外に輸出まですると言っているわけです。彼らはまず、福島
の事故はなかったことにしてしまおうと思っているのでしょう。 だから情報も
次々とでなくなり、ほとんどの日本人は福島のことを次々と忘れてしますという
状況に引きずり込まれてしまっているのだと思います。そ こにメデイアが加担
しているのです。
再稼働なんて論外です・とにかく再稼働したいから新規制基準というものを作
り、それさえ通ればいいといっている。再稼働のためには、全ての原因は 津波
で、津波対策だけすればいいという論理でやろうとしているのです。
私は、福島の事故は津波だけでなく地震も大きな要因だと思っています。でも、
地震で一体どこが壊れて、津波が最後のとどめをどう刺したかもわから ない。
検証には十年、二十年かるのではないでしょうか。それまは対策のたてようがな
いわけで、新規制基準なんか作れる道理はありません。
津波と地震だけ対策をとれば大丈夫なのかというと、それは違います。これまで
原子炉が大きく溶けた事故は四回ありました。1957年の英国ウイン ズケール、
1979年の米国スリーマイル、1986年の旧ソ連チェルノブイリ。そして福島です。
福島以外は地震も津波も関係ない、それぞれの原子 炉の固有の危険性が表れ、
事故になりました。私は、もし日本で次の事故が起きるとすれば、多分地震も津
波も関係ないと思います。
それでもなぜ再稼働という道へ行くのか。電力会社の場合は、運転できなければ
資産が不良債権になるわけで、たぶんみんな倒産します。なんとか倒産 を逃れ
たい。なんとしてもやろう、というふうになるのだと思います。
それに、これほどの事故を起こしても東京電力の会長、社長以下だれ一人責任を
取っていません。普通の企業なら倒産しているし、何十回倒産しても贖 いきれ
ない被害が、既に出ているわけです。福島の事故は一民間企業が賠償できるよう
な事故ではありません。倒産させ、国が血税で対処するしかない と思います
が、国は資金を注入して破産させないようにしています。事故を起こしても誰も
責任をなくていい、絶対倒産しないというメッセージを流し ているわけです。
そうなればほかの電力会社だって怖くない。政府も、東電を救済するだけでな
く、自分たちも責任を取らない体制というのを、いま 作っているのです。