SAILIN' SHOES

デジタル一眼、ライカ等でのスナップ写真や、カメラ、音楽、鉄道・車、子育ての日々雑感です。

「撮って、と被写体が囁く」 片岡義男さんとの2分間

2008-12-29 | スナップ



訪問先に行くために都営地下鉄に乗っていた。
座っていたのだが、左隣に一席空いていた。
神保町で私に左に男性が座った。
手にはたくさんの本を持っていた。
片岡義男さんだった。
座席は満杯だったので、密着する形になった。
前の座席に座っている女の子も片岡義男さんに気が付いていた。
最近の若い子も知ってるんだなと感心した。
私は九段下で降りたのだが軽く会釈した。
片岡義男さんも私に目線をくれた。
すごく嬉しかった。
なぜなら私が一番好きな小説家、エッセイスト、写真家だからだ。




中学、高校、大学の頃だったろうか、片岡義男さんにずいぶんとはまった。
角川文庫から数十冊の小説が順次出版され、他社からはエッセイや翻訳本も出版されてそれらもほとんど読んだ。
そもそものきっかけはGrateful Deadのジェリー・ガルシアとチャールズ・ライクの対談を訳した「自分の生き方をさがしている人のために」を読んですごく感銘したことだ。この名著は今でも宝である。その後、大学時代にはGrateful Deadのコピーバンドにも参加できた。
同じ草思社からは「ビートルズ革命」というジョン・レノンのインタビュー訳の本も出版されている。
その草思社も今年民事再生法適用になってしまった。
川島令三の『全国鉄道事情大研究』や徳大寺有恒の『間違いだらけのクルマ選び』シリーズで有名な出版社である。

さて一方でFMでは「きまぐれ飛行船」という名番組を安田南さんとやっていた。
これは最も楽しみなFM番組だった。
しゃべりは決して上手くないのだが、ゆっくりとぽつぽつとセリフを選びながら話す口調が素敵だった。一方の安田南さんがハキハキ話すので、その組み合わせがとても好きだった。
大人の会話が展開されていたという感じだった。
アメリカの話、JAZZの話、クーペって何?みたいな話。
かかる音楽も素敵だった。

小説には大きくは二種類あって、一方は青春小説で一方は大人の風景を綴った小説。どちらも淡々とした展開のストーリーが好みだった。
わざとなのか人柄なのか、敢えて起承転結を採用しない作風で、それが好きだったのだ。
まるで一枚の写真から展開されるような小説だと思っていた。

後にその作風は写真にも及ぶことになる。
片岡さんはオリンパスOM-1で撮影なさっているのだが、
その写真集が出版された。
小田急沿線や東京の街角のさりげないスナップだ。
古い中華料理屋や古い喫茶店、洋品店の外側のスナップや、
交差点の電柱の写真。
あまりにもさりげない街の風景なのだが、なぜだか魅力的だ。
小説のように、ある瞬間を切り取った空気感に魅かれるのだろう。

その後、田中長徳さん、坂崎幸之助、東儀秀樹、なぎら健壱さんたちと、偽ライカ同盟にも参画され、その対談等はすごく面白かった。


ロックミュージシャンとの対談、青春小説、FMのDJ、大人の小説、映画、スナップ写真と、私の人生とずっと一緒だった片岡義男さん。
とても嬉しい出会いだった。



コメント (14)
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