大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月4日 クローゼット

2013-06-04 19:33:11 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 6月4日 クローゼット





 学生の頃のことですが、仲の良かった子のアパートに初めて泊まりに行った時です。
夜になって二人でビールを飲みながらテレビを見ていました。
 私の右側の壁にはウォークインクローゼットがあり、正面のテレビを見ていると右目の視界にクローゼットの扉がうつるのですが、どうもさっきからチラチラと何かが動いているような気がするんです。
気になるなぁ、と思い右側を見てみると、観音開きになっているクローゼットの扉が少し開いてるんです。
 友人は、

「 ワンルームで狭いからついついクローゼットに物を詰め込んでしまう。
衣装ケースとか掃除機とかで中は満タン。
で、扉が閉まりきらなくて時々自然に開いてしまう。」

というようなことを、その時は言っていました。
 それから数分後、友人が新しいビールを取りにキッチンへ。
部屋に一人になった私はなにげに自分の右側のクローゼットのほうを見ました。
するとキィ~っと扉が開いて、中から青白い手が這うようにして出てきたんです。
 その時まで私は霊体験など一度もなく、どちらかというと信じていなかったのですが、あまりの光景に目をそらすこともできずに固まっていると、キッチンのほうから両手にビールを持った友人が部屋に戻ってきて、なんと足で扉をバンッと蹴って閉めました。
そして、

「 見た?」

と。
 友人が言うには、このアパートに越してきた初日から、あの手は見えていたそうです。そして、その手はウォークインクローゼットの外へ出ようと這っているようなのですが、なぜか一度も出てきたことがないそうで。

「 何かの事情で、外に出られないんだわね。」

と友人が暢気に語るので、

「 なんで引っ越さないの!」

と私が訊ねると、お金がないの一言・・・。
 友人はお家の事情で当時すでに自活しており、奨学金で学校に通い、生活費のためにバイト三昧の毎日を送っていた頑張り屋でした。
私は、

「 私も半分出すから引っ越そうよ。」

と提案したのですが、

「 う~ん、でもココ家賃安いし・・・。」

 その後、いろいろとその手について友人は語り始めたのですが、クローゼットの中は満タンというのは嘘で、中は空っぽだそうです。
そりゃあ気持ち悪くて荷物なんか入れられないよね、と私は思ったのですが、彼女が掃除機だとかの物をクローゼットにしまうと、翌朝になるとクローゼットの扉の前に荷物が全部出されているそうです。
 友人は、

「 ただでさえ狭いワンルームなのに・・・、迷惑だわね。」

初めての恐怖体験でしたが、手よりも友人の暢気さのほうが怖かったです。
 私は怖くて二度と泊まりに行けませんでしたので、彼女が私の家に遊びによく来てくれました。
会うたびに「手は?」と私は聞いてしまうのですが、彼女は「元気だよ」と。
結局、彼女は家賃の安さが魅力ということで、そのアパートに卒業まで住んでいました。













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