大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月22日 雨

2013-06-22 18:38:31 | B,日々の恐怖






     日々の恐怖 6月22日 雨






 ある真夏の出来事だった。
その日は雲一つない晴天で、午前中からすでに30℃を超えていた。
蝉の声も忙しく聞こえ、道路の照り返しも眩しかった。
 私は休暇をとっていた。
午前中に用事を済ませ、昼頃にはひとり自宅に戻ってゴロゴロ昼寝を楽しんでいた。
 雑誌を読みながら横になっているうち、窓を開けたまま眠ってしまったのだろう。
目が覚めるとやけにゾクゾクするし、おまけに薄暗い。
もう夜になってしまったのかと時計を見ると、まだ午後2時過ぎだった。
 窓の外は真っ黒な雨雲がたちこめて、今にも雨が降りそうだ。
遠くで雷の音が聞こえ、夕立ちが来る前の冷たく強い風が吹きはじめていた。
 大きな雨粒はすぐに落ちてきた。
沸き立つようなザァッーという音と共に、庭の樹木はあっという間に水煙に霞んでしまった。
 そんな光景を寝ぼけ半分で眺めていると、不意にインターホンが鳴った。
居留守を決め込んで応答しないでいると、またピンポーンと鳴る。
それでも無視していると、またピンポーン。
あんまり催促されるので、渋々玄関を開けると誰もいない。
 悪戯かあるいは諦めて帰ったのか、深くも考えずに居間に戻って外を眺めていると、またインターホンが鳴った。
今度は大急ぎでドアを開ける。
だが、誰もいない。
そのまましばらく玄関で待っていたが、インターホンを押すヤツはいなかった。
 何だか不思議な気分で居間に戻り、テレビを観ようとソファに座った時だ。
まだ電源を入れていないテレビのブラウン管に、スッと横切る人影が映った。
テレビの黒いモニターが鏡の役割をして、ちょうど私の背後室内をぼんやり写していた。
 背後には開けっ放しのドアの向こうに廊下がある。
横切った人影は玄関の方から隣の和室に入ったようだった。
 家族が帰ってきたのかと思い、

「 おかえり!」

と大声で呼び掛けた。
しかし返答はない。
 もう一度、 

「 おかえりぃっ!」

と声を張り上げると、返事をするように隣の和室で、

“ チーン。”

と音がした。
仏壇の鐘が鳴ったのだ。
急いで和室に行くと誰もいなかった。
 そのとき自宅にいたのは私だけだ。
その後は、特に何も起こらなかったし、私の身に何か危険が及ぶことも無かった。
しかし、一連の出来事を思い出すと、今でも何故か恐怖を感じる。
















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