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ボーザのホテルにチェックイン後、この日の予定は、日の高いうちに近くの村であるティンヌーラとスーニに行き、ムラーレスを見学すること。
ムラーレスとは、普通の民家の壁面などに描かれた絵のことで、サルディーニャでは集中的に住宅に絵を描いている村がいくつかあるという。
ただ、ティンヌーラに行くためのバスの停留所が見つからない。ネットで時刻表はチェックしていたが、正確な停留所の場所まではわからないので地元に人に聞いたが「あの辺」「その近く」といったあいまいな答えばかりで、何の目印も見あたらない。
あちこち歩いているうちに、バスが停まっている駐車場があったので、そこにいた運転手さんに聞くと、「私のバスもティンヌーラには行くけど、遠回りになるよ」とのこと。
急ぐ旅でもないので遠回りでも行ければ文句はない。そのバスに乗り込んだ。
走り出していくつかの集落を通過したが一向にティンヌーラの町らしきものが見えてこない。その上、だれ一人バスに乗って来る人がいない。
通常ルートだと15分程度の場所に、結局1時間ほどかかってティンヌーラに着くまで乗客は完全に私一人の貸し切りバス状態だった。
それに、本来なら行くはずのなかった海辺の町や丘の上の町などまで巡るというちょっとした小旅行になった。降りる時には「貸切りで小旅行をプレゼントしてくれてありがとう」と、運転手さんに感謝の言葉を捧げて下車した。
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ようやくたどり着いたティンヌーラ村。役場があったのでそこからスタートだ。
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すると、役場の右手のひさしの下で農作業をしている人たちの姿が目に付いた。と、よく見ると彼らは全く動かない。 家の壁全体に描かれた絵だった。
そんな大壁画は、この村の至る所で見つかった。
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バスをを待っているのか、よもやま話をしながら道路に目をやるおじさん2人組。
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隣の家では戸を開け放っていて、くつろぐ老夫婦の様子が丸見え。
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村のメインストリート沿いに横に長いビルがある。そのビル全体にいくつもの絵が。
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その右半分。
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そして、左半分。本当に村人たちが立ち話をするゆったりした昼下がりの風景が再現されていた。
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さらに左側には2階でシーツを広げる女性と、その下を通り抜けるおばさん。
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こちらは荷物を載せた子馬を連れて歩き出そうとしている少年。
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この老夫婦はツボに水を入れながら何やら話し中。
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散歩に出る主人を見送る奥さんもいる。
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家の中で何やら作業中の家族。
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2階から村内を見おろす村のお姫様。
他国で見られがちな宗教画や抽象画はほとんどない。どれもこれもまさしく日常的に繰り広げられる村の生活を再現した様なものばかりだ。
しかも、本当にそこに住民がいるかのように錯覚してしまうほど見事な絵だ。
すっかり楽しい気分になって,自然に鼻歌を口ずさみながらの散策を楽しんだ。