ヴェネツィアゴシックを代表する建物が、大運河の中ほどに建っている。「カドーロ」。日本語に訳すると「黄金宮殿」となる名称は、かつてこのファザードが黄金で装飾されていたためだという。
その中庭に颯爽と配置されているのがこの階段だ。
上から見ると、階段の直線部分とその下部のアーチ部分との対照的な線が絶妙に調和した姿を見せている。
硬い石のフォルムで形成される階段が、高い建物の基礎部分にしっかりと落ち着きを見せている感じを、近くのベンチに座って見とれていた。
その中庭中央にあるのは、15世紀の井戸。側面に多数の人間の浮き彫りがなされた、丁寧なバルトロメオ・ボンの作品だ。ヴェネツィアでは貴重だった水の確保に強い思いを持っていたことの表れなのだろう。
2階に上がるとルネサンス様式の窓から光が漏れる。この窓も芸術作品のようだ。
窓越しに見る対岸。市民の台所・魚市場が目の前だ。見渡せば、中世の貴族にでもなったような優雅な気分に浸ることが出来る。
今はフランケッティ美術館になっていて、15~18世紀の美術品が展示されている。「絵画の王」と称されたティツィアーノの作品も、ここで見ることが出来る。