次に、かつてはローマの北の入口であったポポロ広場に移動しよう。双子の教会のロケーションが美しいこの広場の一角にポポロ教会がある。
その教会には教皇アレクサンドル七世のキージ礼拝堂があり、教皇から2つの彫刻の製作を任された。
1つは「ハバスクと天使」。この彫刻は旧約聖書の物語をテーマにしている。主の使い(天使)が預言者ハバスクに対して「あなたの持っている食物をダニエルに与えよ」と命ずる。その穴にはライオンもいる危険な場所。天使は、ハバスクの髪をつかんでダニエルのいる穴に運ぶ。そこでハバスクがダニエルに食物を投ずる、というエピソードだ。
ベルニーニはまず右側に、天使がハバスクの髪をつかんで運ぶ様を製作。
次に、ひざまずいて神に感謝の祈りをするダニエルの像を左に制作した。これによってベルニーニは、礼拝堂全体の空間を物語の舞台に変化させてしまった。先のヴィットリオ教会の礼拝堂での仕掛けを、ここでも援用したわけだ。
正確に、きっちりと仕上げられた造形の美しさ。大理石とは思えない質感の豊かさをも、ここから感じられる。
なお、この教会にはバロック絵画の巨匠カラヴァッジョの出世作ともいえる「聖ペテロの殉教」などの作品もあり、ぜひ足を延ばすことをお勧めしたい。
ポポロ広場から少し歩くと、「ローマの休日」でヘップバーンがアイスクリームを食べた場面で日本人にもおなじみの、スペイン広場がある。
この広場の前にもベルニーニの作品がデンと展示されている。「バルカッチャの泉」。これはベルニーニが最初に手掛けた本格的噴水だ。船には、当時彼を重用してくれたウルバヌス八世の紋章が掲げられており、この船そのものが教皇を表現するものとも言われている。