中廊を上り終えたところは、ちょっとした広場になっていた。そこに1つの歌碑が立つ。
「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」
紀貫之が訪れた時、咲き誇っていた梅の花を見て詠んだ詩だ。
その梅の木がこれ。
その隣には小林一茶の句もあった。
「我もけさ 清僧の都也 梅の花」
もう梅の花は終わってしまったけど、代わりに桜の花が咲き誇る。
一休みしたところで、もう1度上段の登廊に挑戦。それにしても、昔の人達がこの地を訪れるのは今より数倍大変だったろうが、それだけ信仰心も厚かったのだろうなあ。
やっと本堂に到着した。小初瀬山の中腹に、どんと入母屋造りの建物が構える。
ここには京都・清水寺を連想させる大舞台がある。崖の上、断崖絶壁に櫓を組んだ「縣造り」の舞台は壮観だ。
舞台の前面には、まさに今が最盛期の桜のショーが展開されている。
大舞台はこの桜のために用意されたもののようにも見えてしまう。
しかも、八重桜、山桜、ソメイヨシノ、枝垂れ桜など、様々な品種が入り混じり、豪華絢爛。
今上ってきた登廊の屋根までも、桜で覆われている。
崖の下側には、本坊など寺の建築群も一望の下に臨める。
また、源氏物語にも長谷寺は登場する。光源氏に愛された夕顔の忘れ形見・玉鬘が籠った寺でもある。