ルネサンスを生み出した都・フィレンツェ。北部にミケランジェロのダビデ像があるアカデミア美術館が存在する。そのすぐ近くにあるのがサンマルコ美術館。元々修道院で、その修道僧だったフラ・アンジェリコの傑作が収蔵されている。
館に入り狭い廊下を左に進んで行くと、右に赤いじゅうたんの敷かれた階段が現れる。階段を上ろうと上を見上げると、まさに突然に、アンジェリコの最高傑作が、目に飛び込んでくる。そう、「受胎告知」。
まさに今、マリアへの妊娠のお告げがなされた瞬間に立ち会ったかのような気持ちになってしまった。
「受胎告知」の絵は2階の廊下の壁に描かれていることから、このような驚きの出会いが生まれるわけで、それを意図したのかどうかは不明だが、この「階段越しのサプライズ」は、今もなお相当に深く私の胸に刻まれている。
花の聖母大聖堂(ドゥオモ)と、となりにあるジョットの鐘楼。どちらも数百段の階段を上らなければ頂上にはたどり着けない。どちらにしようかと迷ったが、鐘楼の方を選択した。なぜなら大聖堂の方を選ぶと、大聖堂のクーポラを眺めることが出来ないから。
そんなわけで、鐘楼を上った。
階段は創建当時のままのようで、狭くきつく長い。
でも、やっと上り終えて見渡したフィレンツェの風景は格別のものだった。
フィレンツェには何度も足を運んだが、意外に階段の写真はほとんど撮っていなかった。だけどこれでフィレンツェを終わってしまっては惜しいので、何枚かフィレンツェらしい風景を掲載しよう。
ドゥオモの夜の姿。「冷徹」といった表現が似合いそうな屹立する形が素晴らしい。
ドゥオモの隣りにあるサンジョヴァンニ洗礼堂内部。まばゆいばかりのモザイク壁画で埋め尽くされたこの場所で、ダンテも洗礼を受けた。
街の中心にはヴェッキオ橋が架かる。
この橋が、夕方にはオレンジに色づいたアルノ川の色彩に映えて、夜へのプレリュードを奏でる。
夜。ルネサンス美術の至宝を納めたウフィツィ美術館側から、ライトアップされたヴェッキオ宮の塔を眺める。喧噪の昼とは様変わりする夜の広場の静寂もまた、フィレンツェの隠れた魅力の1つだ。
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