ヴェネツィアのシンボルであるサンマルコ聖堂は、コンスタンティノープル(現イスタンブール)の聖使徒聖堂を模したビザンチン建築だ。
向かいの鐘楼に昇って見下ろすと、ドームがいくつも重なった、まさに特異な形が圧倒的な存在感を誇っている。
また、正面扉上のアーチ部分にも独特のフレスコ画が描かれている。ファザードはいわば教会の「顔」の部分。そこに描かれるものは、教会を象徴しているわけだが、驚くべきことにサンマルコ聖堂正面の絵は、人の遺体を盗み出して、ヴェネツィアに持ち帰るという‟聖人強奪”の物語なのだ。
聖堂の前に立って、右側の絵から見てみよう。最初はアフリカの古代都市アレキサンドリアでサンマルコの遺体を持ち出すヴェネツィア商人たち。
遺体がヴェネツィアに到着した。
(1つおいて)ヴェネツィア総督(ドージェ)が、その遺体を受け取る場面
その遺体を教会に運び込む。
と、こんな順序で描かれている。
なお、2番目と3番目との間(つまり、5つ並んだフレスコ画の真ん中)だけは、物語と無関係に、キリストの復活の場面が置かれている。
また、これらの上の段のアーチにはキリストの生涯のフレスコ画があり、これはその1つ、十字架降下図だ。
ファザードの上には聖マルコの立像が青空をバックに高々と立ち上がる。
そもそも、なぜこのような物語が掲げられるようになったかは、この教会の成り立ちと深く関係している。
もともとヴェネツィアの守護聖人は聖テオドーロだった。だが、この聖人は聖人としてのレベルはあまり高くない。例えばローマなら、キリストの一番弟子の聖ペトロ。フィレンツェならキリストに洗礼を施した聖ヨハネ。 何とかもっと上位の聖人を守護聖人として迎えたいと望んでいた。
その結果、ヴェネツィア商人は非常手段に打って出た。
アレクサンドリアに出かけて、聖マルコの遺体を豚肉を積んだ荷車に隠してヴェネツィアに持ち出してしまった。
聖マルコはキリストの教えを広めた四大福音書記者の一人だ。こうなれば、それに見合った立派な教会を創るしかない。
そんな経緯で造られたのが、このサンマルコ聖堂だったというわけだ。
その姿は、夜になると一変する。両脇の行政館などに光が灯り、石畳にもその明かりが反射して広場全体が輝きを持って沸き上がる。
その姿は夜明け前にも面白い形を見せてくれる。暗い空の中でわずかな明るさをもらって見えてくる造形。
サンマルコ像と天使たち
ドームにつけられた装飾も面白い。
大きなクーポラの後方から少しずつ光が差してきた。そして、やがて朝がやってくる。
こちらにも寄らせていただきますね。
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