入口から右へ進む。ロダン作のバルザック像がどっかりと立つ。この像は創作当時かなりの問題が起きたものだ。注文を受けて制作したが「まるでジャガイモの袋をかぶせたよう」と嘲笑され、発注先の文芸協会が引き取りを拒否するというスキャンダルに見舞われた。結局自らが引き取り、後にパリのラスパイラス通りに展示された。
私はパリでその街頭に展示された像と対面したが、早朝の薄暗闇の中だったためか、強烈な迫力で迫ってくる人のイメージが沸き上がったのを今でも覚えている。
隣にはジュリアーノ・ヴァンジ作「追憶」。不安、あるいは哀しみを抱えた寄る辺なき人のような表情。
それはイタリアの画家ポントルモの絵や、舟越圭の木彫にも共通するものを感じる。
対照的に、デュビュッフェの「アルボレザンス」は、まるでフェスを楽しむ観衆のように明るさとざわめきに満ちているなあ。
ヘンリー・ムーアの「横たわる像」。まさに大地にゆったりと腰を据えて、これから大きな背伸びでもしそうな悠々の時間を思わせる。
「交差する空間構造」は後藤良二作。遠目で見れば鉄線が規則的に繋がっている鉄条網のようだが、近付くとそれは男性像(黒)と女性像(赤)がそれぞれ72体ずつ手足をつなぎ合った姿であることがわかってくる。
その形はダイヤモンドの分子構造だとか。見えて来るものが二重三重に変化する意外性満点の作品だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます