フェリーの座席で目覚めると、もう外は明るくなりつつあった。 もうサルディーニャが見えるかも知れない。カメラを持って甲板に出てみる。
空は曇りだが、その切れ目から光が漏れている。
今日も雨の心配はなさそうだ。
南の方に島影が見える。そうだ、初めてのサルディーニャ。
今から100年前、「チャタレー夫人の恋人」などの著書で有名な作家D・H・ロレンスがサルディーニャに旅したことがあった。
「では、どこに行こう? サルディーニャだ」。
「(サルディーニャは)歴史がなく、日付がなく、民族もお国自慢もないところだから・・・」
こんな風にその動機を書いている。
もちろんサルディーニャには歴史も民族もお国自慢もある。だが、支配者たちの歴史だけが表に出て、ネイティブな歴史はヴェールに包まれたままになってきた。その状況をロレンスは逆説的な表現を使って記述した。
それだけ、サルディーニャは今でも未知の魅力をたっぷりと湛えている土地だとも言えるのではないだろうか。
これからの1週間、短い期間ではあるけれども、サルディーニャにどっぷりと身を任せてみよう。
今日の目的地はカステルサルド。港のポルトトーレスからはバスを乗り継いでいく必要がある。船から降りると待ち構えていたシャトルバスが港から鉄道駅まで運んでくれた。だが、私の乗るのはバス。町の人に尋ねながらバスターミナルを探した。
ターミナルは市街地にあるという。町に入りたどり着いたのは約30分後。そこからサッサリ行きに乗り換えてカステルサルドへ、というコースだ。
バス停で聴いた出発時間を過ぎてもなかなかバスは来ない。でも、みんな平気な表情。そう、ここでは日本のような定時運行を望むのは初めからあきらめた方がよいということが解りだした。
案の定、バスはちゃんと「たった20分遅れ」で到着し、ちゃんと走り出した。
サッサリの停留所で乗り換え。カステルサルドに向けて順調に走り出した。
海岸線を走るバスは例によってかなり荒っぽい運転だが、技術は確か。カーブの度に足を踏ん張って揺れに耐えることに慣れたころ、前方にカステルサルドの岬が見えた。
非常に特徴的。まるで軍艦のように雄大な形をした岬だ。それだけが海に突き出している。
軍艦の中央上部が城跡になっており、その麓に市街地の街並みが広がる。緩やかな稜線を描いてふもとまで下り、先端が海に溶け込む。
そんな姿を、旅の出発直前にネットで見つけて急きょ目的地に追加した場所だ。その実物が目の前に出現した。やっぱりすごい!
運転手にあらかじめ「ローマ通りで下して」と伝えておいたが、彼はちゃんとロ-マ通りで下してくれた。
早速予約しておいたB&Bへ。結構な坂道を上りながら宿を探す。
あった!
入口からちょっとした花があり、
きれいに手入れがなされている。それも鮮やかな色彩。
部屋に入ると、ロビーにも花飾りが。
また、仮面のようなアクセサリーも飾られていた。
窓際の花も愛らしいし、
テラスにはこんなピンクの花も。オーナーは自然を愛するとても親切なひとだった。
宿の場所が高台にあるため、向かい側の丘の頂上にある城壁が間近に見え、
また、海も見下ろせるロケーションだ。しばしテラスに座ってのどかな眺めを楽しんだ。
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