今回からまた階段の東京編を再開します。まずは目黒の建物から。
階段は、大きく緩やかに曲線を描いている。とても安定していて、眺めているだけでほっこりとした喜びを与えてくれるような・・・。
設計者は「階段の魔術師」ともいわれた建築家村野藤吾。1966年、当時の千代田生命本社ビルとして建設された建物だ。
3階の来客用玄関から2階の会議室や4階の役員応接室をつなぐために設けられたもので、2003年になってリニューアルされて現在は目黒区総合庁舎として活用されている。
軽快に見えるのは、中央のアクリル製照明器具が仕込まれた柱で吊るされた「吊り階段」になっているせいだ。それも、村野の卓越したアイデアによる。
階段を昇ったフロアの奥にあるのは、岩田藤七による色ガラスブロックの壁。これは照明にもなっている。
もう1つ目黒には忘れてはならない階段がある。目黒雅叙園の百段階段。7つの宴室を持つ木造建築で、それらを繋ぐのがこの階段。99段あり、通称「百段階段」と呼ばれている。
7つの部屋はそれぞれに特徴を持っており、金箔を使った彩色木彫の部屋や、鏑木清方の絵が天井一杯に飾られた部屋など絢爛豪華。
階段は厚さ5cmのけやき板が使われている。
季節ごとに趣向を凝らした展覧会が開かれており、階段を昇るたびにいろいろな陳列物を観賞し、次の部屋に行く過程で階段を踏みしめながら又期待に胸を膨らますという時間を持つことになる。
そんな時間が、都の有形文化財の階段の上でなのだということも、ちょっと価値を上げる要素なのかも知れない。
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