奈良市内では中心部の散歩から始めた。最初に訪れたのが、猿沢の池。水面に興福寺の五重塔がうっすらと映り、まさに典型的な奈良の風景だ。
満開の桜を見ながら、まずは興福寺の境内に入った。
最初の通りかかったのが南円堂。
堂の入口に下がっている几帳(垂れ幕)を見ると、2匹の鹿が向かい合って立つ文様が入っている。奈良を象徴するような現代的なデザインだなあ。などと感心していいると、隣にいた地元の人が教えてくれた。
「この文様は正倉院に納められている天平文様なんだよ」
なんとまあ、歴史を感じさせるお話。
すぐ先には五重塔がドンと立つ。高さ50mと京都の東寺に次ぐ国内2番目の高さを持つ木造五重塔だ。初層部分が8m四方という大きな空間を誇っている。現在の塔は1426年の再建で、室町時代らしい豪快さを感じる。創建時(730年)の初代五重塔は45mほどだったが、それよりも大きな塔に再建されたという非常に珍しい例だそうだ。
角度を変えて見ると、グンとそれに向かって飛び立つような迫力がすごい。
興福寺は何度もの火災に加えて、明治に出された廃仏毀釈令によってさらに弱体化した。それまでは春日大社を支配する地位にあったが、明治以降は大社の下の立場になると共に土地財産の没収までされてしまった。
このため一時は五重塔が25円で売り出されるという話まで飛び交ったこともあったという。また、戦後には五重塔を有料展望台として使わざるを得ない時代もあった。
東金堂を横目でみながら国宝館に向けて歩く。
(興福寺ポスターより)
国宝館にはかの有名な阿修羅像がある。今回は入らなかったが、以前の訪問時にはじっくりと見せてもらった。3つの顔と6つの腕を持つ像だ。切れ長の目、引き締まった唇、でもよく見るとふっくらしたほほ。まるで少女とさえ見間違えそうな姿のイメージは、身長153cmという、今では小柄な女性のような大きさも関係しているのかもしれない。
(ここからは10年前の訪問時の写真です)県庁舎には展望台があるというので、昇ってみた。五重塔はさすがに存在感たっぷり。
東大寺の大仏殿も林の中から頭1つ抜け出して見える。
夕方、五重塔のライトアップが始まった。
すっかり暗くなった中で、五重塔は満月と競演するかのように輝いていた。
興福寺の東側にある鷺池にある浮見堂もライトアップ。幻想的な光景は印象的だった。