新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 イタリア編⑦ こんなにも高く積み重なったカフェの椅子、人々の思い出

2023-08-12 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 ある朝 サンマルコ広場前の岸壁に

 こんなに高く 椅子が積み上がっているのをみつけた

 椅子は 広場にあるカフェ・フローリアンのもの

 

 フローリアンの創業は1720年

 東方世界からもたらされた 琥珀の飲み物コーヒーを提供し

 人々が憩い 交流する場としてのカフェが誕生した

 以来300年にわたって 集う人々に知識 情報

 そして時には愛をもたらす場として 機能してきた

 

 作曲家ワーグナー 小説家スタンダール 哲学者ニーチェ 詩人ゲーテ

 さらに私たち一般人もまた この場所で

 この椅子に座って 貴重な時を紡いできた

 

 そして無数の人々の 記憶の積み重ねは

 今や 対岸にある教会の鐘楼のてっぺんを

 はるかに超える高さにまで 達してしまった

 

 

 

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心ふるえる風景 イタリア編⑥ 花々が咲き乱れる「楽園」の島サン・ミケーレ島 でも・・・

2023-08-08 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 

 島に上陸して最初に目に入ったのは”お花畑”だった。

 緑の芝生を覆いつくすかのように

 花々が 咲き乱れている

 何と晴れ晴れとした 楽園の風景

 

 でも、少し近づくにつれ 

 その第一印象が 全くの外れだったことに 気づいた

 並んでいるのは 墓

 そして 咲いている花は すべて造花

 

 ここはヴェネツィアにある墓の島 サン・ミケーレ島

 後に調べてみると 19世紀に本島各地に散在していた墓を

 一斉にこの無人島に移住させて 

 狭い土地の有効利用と 疫病蔓延防止を図ったものだという

 主として住民の墓だが

 ヴェネツィア好きで わざわざ遺言でこの地を選んだ

 大作曲家ストラヴィンスキーの墓もあった

 

 住民はゼロ

 造花なので この島は一年中花に埋もれている

 

 私が訪れたのは7月 快晴の昼

 頭の中で このあまりにも晴れやかな景色と

 墓の集合体という現実とが 

 どうしても融合せずに 

 しばし呆然としながら 帰途に就いたことを

 今でも鮮明に 覚えている

 

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心ふるえる風景 イタリア編⑤ 「旅情」に登場する運河に、芸術的絵画が描き出された

2023-08-05 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 ヴェネツィアには 至る所に運河がある

 カナルグランデのような大きな運河から 

 路地裏を流れる 名も無いような小さなものまで

 従って折に触れて 運河を観察する時間が多くなる

 

 サンバルナバ広場に面した運河 

 キャサリン・ヘップバーン主演の名作映画「旅情」にも登場した場所

 キャサリンが撮影に夢中になって落下し 水浸しになった運河

 そこで出会ったのが この震える家並みだ

 

 ちょうど太陽が運河沿いの家々を照らし 運河の水が影になる時間帯は

 水面が 即席の鏡に変身する

 それも 少しだけ風が渡って 水面がわずかに揺れ動いたとき

 水に映った家々は 鮮明な色彩のうえに微妙な震えが加わり

 その時限りの 自在な変貌を遂げてしまう

 

 水が揺れすぎても 全く動かなくても 奇跡は起きない

 得も言われぬ絶妙な揺れこそが

 ヴェネツィアの水面に 自然のルネッサンス芸術を 描き出してくれる

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心ふるえる風景 番外編 ブログのアクセス数が200万回を突破しました !

2023-08-04 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 「心ふるえる風景」の連載中ですが、今回は番外編を挟ませてください。

 これまで続けてきた私のブログ「イタリアの誘惑」と「新イタリアの誘惑」の合計アクセス数が8月  3日時点で200万回を突破しました。

 「イタリアの誘惑」が714767回、「新イタリアの誘惑」が1285879回で

 合計2000646回となりました。

 個人的な記録としてスタートしたブログなので、テーマも様々、読んでもらうための工夫も何もない内容ですが、少しは興味を持っていただけることもあったのか、と感謝する次第です。

 これからも色々なテーマで続けて行く予定ですので、よろしくお願いします。

 

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心ふるえる風景 イタリア編④ 満月が 女神の姿を包み込む瞬間

2023-08-01 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 早めの夕食を終えて 

 軽いワインの酔いを醒まそうと 散歩出かけた

 すると 夜空がいつもより明るく輝いている

 見上げると 月  

 そう この日は満月だったっけ

 

 急いでカメラを取り出し

 対岸のサンジョルジョ・マッジョーレ教会の

 鐘楼の手前に上ってきている 月を狙う

 ただ、いくら明るくとも 夜は夜

 しかも教会までは 結構な距離がある

 

 思い切って望遠レンズに付け替えた

 すると シャッターを切ればかなりのブレが生じる

 桟橋の杭に 腕を巻き付けて

 極力動かないようにと 注意してのシャッター

 何枚か撮っているうちに 月はちょうど

 鐘楼てっぺんの女神像と重なる瞬間が来た

 とにかく1枚くらいは・・・

 

 悪戦苦闘の末 

 どうにか あまりブレの目立たない1枚だけは確保できた

 

 今年亡くなった音楽家坂本龍一は 

 ガンで余命宣告を受けた後

 「ぼくは あと何回 満月を見るだろう」

 と、つぶやいたという

 

 満月が 生きることの指標になる

 そんな形で 人と自然が向き合う時もある

 

 改めて見上げる月

 心を揺さぶる時間が

 そこにあった

 

 

 

 

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