島に上陸して最初に目に入ったのは”お花畑”だった。
緑の芝生を覆いつくすかのように
花々が 咲き乱れている
何と晴れ晴れとした 楽園の風景
でも、少し近づくにつれ
その第一印象が 全くの外れだったことに 気づいた
並んでいるのは 墓
そして 咲いている花は すべて造花
ここはヴェネツィアにある墓の島 サン・ミケーレ島
後に調べてみると 19世紀に本島各地に散在していた墓を
一斉にこの無人島に移住させて
狭い土地の有効利用と 疫病蔓延防止を図ったものだという
主として住民の墓だが
ヴェネツィア好きで わざわざ遺言でこの地を選んだ
大作曲家ストラヴィンスキーの墓もあった
住民はゼロ
造花なので この島は一年中花に埋もれている
私が訪れたのは7月 快晴の昼
頭の中で このあまりにも晴れやかな景色と
墓の集合体という現実とが
どうしても融合せずに
しばし呆然としながら 帰途に就いたことを
今でも鮮明に 覚えている