毎年1~2月には、なんらか南の海へ潜りに行っているのに、今年は休みがとれずに寒い日本でくすぶる日々。
日々思うのは、海のこと。
ラジャアンパット、コスタリカ、ガラパゴス、サーディンラン。
まだ見ぬ海は数あれど、やはり海はシパダン。
まあ、いちばん実現可能だし。
花は桜木、海はシパダン。
だから、つらつらとシパダンのことを書いて、エアだいびんぐ。
シパダンでのダイビングは、いつだってドロップオフからだった。
だって、シパダン島のゲストは、シパダン島に着いたら、ここでもれなくオリエンテーションを受けるきまりだったから。
マブールなどから通う今となっては、そんな決まりごとはなく、ドロップオフにはじまり、ドロップオフで終わるパターンがなつかしい。
てけてけビーチからエントリー。
素足にあたるサンゴや貝のかけらに痛がりながら、ゆるゆる腰の高さあたりまで歩いたら、シューッと沈んで浅瀬を沖にむかって泳いでゆく。
やがて白砂がとぎれると、そこはもう、水深600メートルまで落ち込む、まさしくドロップオフ。
ビーチからJettyの先端までのわずかな距離で、劇的に変化。
はじめてこの底の見えないドロップオフに浮かぶ人となったとき、どこまでもこの深みにはまりこみそうな気がした。
下の方にどんなに目を凝らしても、ひたすら暗くて、ただただ静かな深海が佇んでいる。
中層は、東南アジア特有のグリーンがかった世界。
潜り込んでいた友だちも、イントラでさえも、最初はこわいと思ったというドロップオフ。
私も半ば儀式のように、「暗い!こわい!」とバディにクレームしてみた。
それを見て、オリエンテーションのダイブマスターは、「もんすた~! ご~すと!」とからかってくる。
ここまでの長い道中、とても大変だったのに、待っていたのは、こんな暗くて淀んだ海だったとは!
「あー、来るんじゃなかった…」と、ネガティブ全開。
それがちょっと泳いだだけで、「あしたから、早朝・サンセット・ナイト全部やらなきゃ!」とポジティブに豹変。
なんせ潜降以前のビーチから、南の海のスターたちが、走馬灯のよう現れるのだ。
トップバッターはオニカマス。
いつも白砂の上で、獰猛な顔に漂うズタボロ感。
Lonsome Georgeと名付けられていたが、ジョージは何代めだろう?
Jettyまわりには、オヤビッチャ。
Jettyの先端にはツバメウオの幼魚の群れ。
リーフエッジでは、いつもカスミアジが口をもごもごさせながらウロウロ。
これだけでも、他の海なら、タンクをカーンってとこだ。
最初の興奮は、ギンガメアジの群れ。
朝日を浴びるギンガメ。
真昼のギンガメ。
夕暮れのギンガメ。(NIKONOS Vで考えずに撮ったので、めちゃめちゃパララックス)
ナイト以外、いつだって君たちはここにいてくれた。
潜降すると、水深3メートルくらいにあるミニミニオーバーハングには、ヨーロピアンに人気のミノカサゴ。
彼らが喜ぶから、関心度の薄い日本人もおつきあい…
ナポレオン。
WALLには腔腸類がたくさんついていて、昼はなんだこりゃな管だが、夜は黄色いお花畑のようになる。
レンベみたいに、昼から頑張って咲いてくれたら素敵なのに・・・。
ついでに夜は、あちこちでエビの目が金色に光り、まさに夜は千の目を持つなイメージ。
さまざまなコーラル・・・。
さまざまな住人・・・。
たぶん、なんらかウミタケハゼ。
ガラスハゼ。
ヤマブキスズメダイ。
個人的にきもいと思う、ムチカラマツエビ。
なんとなく嫌いな大きなクラムもたくさんあり、近づくと、閉じるのが感じ悪い。
さらに深度をさげると、地形は荘厳でドラマチック。
何百万年も前の海底火山活動で形成されたんだそうだ。
WALLにはたるさんごもいっぱいくっついている。
WALLの数々のくぼみは、夜、ブダイの寝床となる。
カンムリブダイは、朝、おのおののくぼみから出て来て、リーフ上に集合して、島一周に出かけ、夕方はまた各々のくぼみに帰り、眠るのだ。
オーバーハングが多く、その砂地には、ホワイトチップが寝ていたりする。
もちろん、外洋をくねくね泳ぐホワイトチップもいる。
砂地には、さまざまなハゼ、ハゼ、ハゼ。
ヤマブキハゼ。
サンカクハゼ。
アカハチハゼ
ニチリンダテハゼ。
コーラルにはベニハゼ。
一度だけカニハゼもみた。
もちろん、アケボノもいっぱい。
アケボノは、スロープ状で砂のあるところなら、どこにだってつんつんしている。
超えてはいけないレジャーダイブの最大深度を超えれば、じゅうたんのようにいる。
ハゼではないが、アオマスクもいっぱいいる。
そしてWALL沿いは、さまざまなハナダイに彩られている。
ドロップオフは、ハナダイファミリーの多様さはシパダンNo1。
いつまでも見ていたいけれど、みんな行ってしまうので、無制限で好き勝手に潜れない今では、じっくり撮ってもいられない。
フタイロハナゴイ。
フチドリハナダイ。
アカボシハナダイ。
見下ろせば、底のない海。
あんまり得意でないベラもさまざま。
ベラはベラ、ラスで片付けてしまいたい。
トカラベラ。
クロヘリイトヒキベラ。
ラボックラス。派手すぎ。
そうこうするうちに、タートルカバーンにたどりつく。
マイケル・オゥの写真集「SIPADAN」では、「カメの墳」と翻訳されていた。
ユニークな翻訳センスだなぁ。
入り口には、カバーンダイビングの危険を警告する、DANGERサインボードがある。
今は、ほぼ朽ち果てて、判読不能な感じ。
94年9月に初めて潜ったときには、こんなもんはなかったが、 カバーンに無断で入っての死亡事故があとをたたなかったため、三度目に来たときには、この看板が設置されていた。
ボルネオ・ダイバーズをアピるロゴつきの、ピカピカの看板には、ドクロマークが燦然と輝き、事故後間もないだけに不気味だった。
陸上で、カバーンの真ん前にあたるのが、たまたまボルネオ・ダイバーズのシャレーのROOM13(カバーンに入るときは、エアをセーブするため、Jettyからは入らず、カバーンから最短距離となるよう、ボルネオ・ダイバーズのシャレーROOM13の前から入ることになっていた)で、ROOM13に泊まって、原因不明の頭痛に襲われる霊感強いゲストをいた。
鈍感な私は、なんでもないが…。
そんな暗い過去をもつカバーンだって、流線型からマクロまで、さまざまな生き物のシェルターになっている。
入り口には、ギンガメの小さな群れ。
こんなところにいないで、明るい浅瀬の仲間たちのところへ行けばいいのに、と思うが、きっとここがいいのだろう。
砂地には、だいたいいつも運動してなさそうなモヨウフグがすわっている。
ときどき出かけているようだが、かれこれ5年以上、ここに居座っている。
不健康そうに見えて、実は健康?
入り口前の小高いロックから、砂地のシロガヤがはえているあたりには、ニシキフウライウオがよくいる。
こうして、ちまちまいろんなものを見つつ、奥に行くと、だんだん目の前が真っ暗になってゆく。
ナイトでは、ここをFlash Light Fish=ヒカリキンメのイルミネーションショーが、今風に言えば、超ヤバいのだが、入島制限のせいでもう見られない。
ドロップオフでのナイトがあまりに素晴らしかったので、シパダンクローズを機に、ナイトは引退してしまった。
そのまま奥へすすんでゆくと、大きな壁に突き当たる。
この壁のむこうが、まさしく、カメの墳。
ロックの内側に入っても、目が慣れて落ち着いて目をこらせば、外の光が入ってくる。
ここで中性浮力がまずい人がいると、あとは縦穴のエアボケットに顔を出しておしまい。
エアボケットは、空気にどんなガスが含まれているかわからないから、レギュははずすな、とのこと。
みんな中世浮力をちゃんととれれば、複数の「間」に通してもらえる。
一度に、人ひとりしか通れない細いトンネルにも入る。
カバーンには、ドルフィンやマリーンの骨があるが、やらせだとの噂。
カメの骨は、もうほとんど砂に崩れかけているのの、まるで標本のように真っ白できれいな新しいもの、卵を持ったままの悲愴感倍増のものなど、そこらじゅうにある。
それだけ、ここに迷い込むカメはあとをたたないということだ。
「カメは生涯のおしまいにカバーンに入る」とロマンチックに語るむきもあるようだが、夕暮れどきに迷って入り、出口を見失い、酸欠というのが現実らしい。
真新しいカメの死骸があるときは、まわりの水が尋常でない淀み方をしているという。
そんなときはさっさと撤収し、器材洗いを入念にするんだとか。
こんなカバーンには、気心の知れた、信頼しているダイブマスターとしか潜りたくない。
ナイト同様、カバーンもシパダン島クローズを機に封印するつもりだった。
セレベス・エクスプローラには数年前まで、SKさんという、ツルのように痩せているのに裕福な、チャイニーズのおじさんイントラがパートタイムでいた。
このSKさんが、香港グループのリクエストで、ロックのむこうに進入したので、同じグループだった私は、はからずして、封印したカバーンに入ってしまった。まさにby accident!
ライトも持ってないのに…
人さまがライトをあてているところを写真にとったら、なさけないことに。
人のふんどしで相撲をとっちゃいけない、人のライトで写真をとっちゃいけない、ってことね。
でも、これが、私にとっては唯一のカバーン内フォト。
前はネクサスに2灯つけての重装備だったので、巻き上げたら不都合なカバーンに持って入る気合いは、私にはなかった。
カバーンを出ると、外洋には巨大なグルーパーがよくいる。
そのままバラクーダポイント側へ泳いでゆくと、入江状になっていて、ツバメウオやイエローフィンバラクーダが群れている。
西側にちょっとしたオーバーハングがあって、そこはカバーン続きのタートルトムにつながっている。
このオーバーハングには、オドリハゼの家がたくさなる。
ほかにも、ヒレフリサンカクハゼ、ヤマブキハゼがいっぱいいるけれど、ダイバーは、オドリにしか目をくれない。
ここまで来たら、バラクーダポイントももうすぐ。
ビーチエントリーなら、このあたりで引き返してJettyに戻らなくては。
ドリフトで、バラクーダポイントへの流れに乗ってゆくと、このへんから、垂直のWALLにはかわりないが、凹凸に乏しくなり、ちょっと退屈な感じ。
ツバメウオの群れがたちはだかったり・・・
カスミチョウチョウウオも登場。
徐々に浮上してゆくと、リーフエッジのキンギョハナダイの朱が、肉眼には本当に美しく映る。
スイートリップ、ヒメフエダイ、ヒメジなど、なんとなく注目度の低い平和そうなやつらが、あちこちにいる。
ナンヨウハギもいっぱい。
かわいいこどもちゃんも、
こどもちゃんのあとだと残念な感じの、おとなさんも。
サンゴのない不毛なところにはゼブラハゼ。
そして、ドロップオフのおわり、バラクーダポイントの入り口に到達すれば、ふたたびギンガメの群れ。
何万トン、いや、何十万トンいるのだろう?
ハダカハオコゼもいる。
たとえシパダンのベストはバラクーダポイントだとしても、たとえいつか死んでしまったら、バラクーダポイントとスタッグホーンクレストに分骨してほしいと言ったとしても(昔、ボルネオ・ダイバーズのカンティーンで、死んでしまった暁にはシパダンに散骨してもらいたいなぁ、という話をしたら、俺も、私も、てなことになり、みんなどこがいいかという希望を出し合ったら、バラクーダポイントが圧倒的であった)、ドロップオフこそが、The SIPADAN。
ドロップオフなんて、バディさえいれば、いつでも潜れるさー、と思っていたが、島スティができない今となってはかなわぬこと。
今日できることを明日に伸ばしてはいけない。
健康と同じで、失って初めてわかるもの…
そんな教訓すらはまってしまうドロップオフ。
ビーチエントリーで、癒しの白砂、サンゴにトロピカルフィッシュ、迫力の地形に、回遊魚、マクロ、穴と、レジャーダイビングの醍醐味が凝縮されている、類稀なポイントだと思う。
日々思うのは、海のこと。
ラジャアンパット、コスタリカ、ガラパゴス、サーディンラン。
まだ見ぬ海は数あれど、やはり海はシパダン。
まあ、いちばん実現可能だし。
花は桜木、海はシパダン。
だから、つらつらとシパダンのことを書いて、エアだいびんぐ。
シパダンでのダイビングは、いつだってドロップオフからだった。
だって、シパダン島のゲストは、シパダン島に着いたら、ここでもれなくオリエンテーションを受けるきまりだったから。
マブールなどから通う今となっては、そんな決まりごとはなく、ドロップオフにはじまり、ドロップオフで終わるパターンがなつかしい。
てけてけビーチからエントリー。
素足にあたるサンゴや貝のかけらに痛がりながら、ゆるゆる腰の高さあたりまで歩いたら、シューッと沈んで浅瀬を沖にむかって泳いでゆく。
やがて白砂がとぎれると、そこはもう、水深600メートルまで落ち込む、まさしくドロップオフ。
ビーチからJettyの先端までのわずかな距離で、劇的に変化。
はじめてこの底の見えないドロップオフに浮かぶ人となったとき、どこまでもこの深みにはまりこみそうな気がした。
下の方にどんなに目を凝らしても、ひたすら暗くて、ただただ静かな深海が佇んでいる。
中層は、東南アジア特有のグリーンがかった世界。
潜り込んでいた友だちも、イントラでさえも、最初はこわいと思ったというドロップオフ。
私も半ば儀式のように、「暗い!こわい!」とバディにクレームしてみた。
それを見て、オリエンテーションのダイブマスターは、「もんすた~! ご~すと!」とからかってくる。
ここまでの長い道中、とても大変だったのに、待っていたのは、こんな暗くて淀んだ海だったとは!
「あー、来るんじゃなかった…」と、ネガティブ全開。
それがちょっと泳いだだけで、「あしたから、早朝・サンセット・ナイト全部やらなきゃ!」とポジティブに豹変。
なんせ潜降以前のビーチから、南の海のスターたちが、走馬灯のよう現れるのだ。
トップバッターはオニカマス。
いつも白砂の上で、獰猛な顔に漂うズタボロ感。
Lonsome Georgeと名付けられていたが、ジョージは何代めだろう?
Jettyまわりには、オヤビッチャ。
Jettyの先端にはツバメウオの幼魚の群れ。
リーフエッジでは、いつもカスミアジが口をもごもごさせながらウロウロ。
これだけでも、他の海なら、タンクをカーンってとこだ。
最初の興奮は、ギンガメアジの群れ。
朝日を浴びるギンガメ。
真昼のギンガメ。
夕暮れのギンガメ。(NIKONOS Vで考えずに撮ったので、めちゃめちゃパララックス)
ナイト以外、いつだって君たちはここにいてくれた。
潜降すると、水深3メートルくらいにあるミニミニオーバーハングには、ヨーロピアンに人気のミノカサゴ。
彼らが喜ぶから、関心度の薄い日本人もおつきあい…
ナポレオン。
WALLには腔腸類がたくさんついていて、昼はなんだこりゃな管だが、夜は黄色いお花畑のようになる。
レンベみたいに、昼から頑張って咲いてくれたら素敵なのに・・・。
ついでに夜は、あちこちでエビの目が金色に光り、まさに夜は千の目を持つなイメージ。
さまざまなコーラル・・・。
さまざまな住人・・・。
たぶん、なんらかウミタケハゼ。
ガラスハゼ。
ヤマブキスズメダイ。
個人的にきもいと思う、ムチカラマツエビ。
なんとなく嫌いな大きなクラムもたくさんあり、近づくと、閉じるのが感じ悪い。
さらに深度をさげると、地形は荘厳でドラマチック。
何百万年も前の海底火山活動で形成されたんだそうだ。
WALLにはたるさんごもいっぱいくっついている。
WALLの数々のくぼみは、夜、ブダイの寝床となる。
カンムリブダイは、朝、おのおののくぼみから出て来て、リーフ上に集合して、島一周に出かけ、夕方はまた各々のくぼみに帰り、眠るのだ。
オーバーハングが多く、その砂地には、ホワイトチップが寝ていたりする。
もちろん、外洋をくねくね泳ぐホワイトチップもいる。
砂地には、さまざまなハゼ、ハゼ、ハゼ。
ヤマブキハゼ。
サンカクハゼ。
アカハチハゼ
ニチリンダテハゼ。
コーラルにはベニハゼ。
一度だけカニハゼもみた。
もちろん、アケボノもいっぱい。
アケボノは、スロープ状で砂のあるところなら、どこにだってつんつんしている。
超えてはいけないレジャーダイブの最大深度を超えれば、じゅうたんのようにいる。
ハゼではないが、アオマスクもいっぱいいる。
そしてWALL沿いは、さまざまなハナダイに彩られている。
ドロップオフは、ハナダイファミリーの多様さはシパダンNo1。
いつまでも見ていたいけれど、みんな行ってしまうので、無制限で好き勝手に潜れない今では、じっくり撮ってもいられない。
フタイロハナゴイ。
フチドリハナダイ。
アカボシハナダイ。
見下ろせば、底のない海。
あんまり得意でないベラもさまざま。
ベラはベラ、ラスで片付けてしまいたい。
トカラベラ。
クロヘリイトヒキベラ。
ラボックラス。派手すぎ。
そうこうするうちに、タートルカバーンにたどりつく。
マイケル・オゥの写真集「SIPADAN」では、「カメの墳」と翻訳されていた。
ユニークな翻訳センスだなぁ。
入り口には、カバーンダイビングの危険を警告する、DANGERサインボードがある。
今は、ほぼ朽ち果てて、判読不能な感じ。
94年9月に初めて潜ったときには、こんなもんはなかったが、 カバーンに無断で入っての死亡事故があとをたたなかったため、三度目に来たときには、この看板が設置されていた。
ボルネオ・ダイバーズをアピるロゴつきの、ピカピカの看板には、ドクロマークが燦然と輝き、事故後間もないだけに不気味だった。
陸上で、カバーンの真ん前にあたるのが、たまたまボルネオ・ダイバーズのシャレーのROOM13(カバーンに入るときは、エアをセーブするため、Jettyからは入らず、カバーンから最短距離となるよう、ボルネオ・ダイバーズのシャレーROOM13の前から入ることになっていた)で、ROOM13に泊まって、原因不明の頭痛に襲われる霊感強いゲストをいた。
鈍感な私は、なんでもないが…。
そんな暗い過去をもつカバーンだって、流線型からマクロまで、さまざまな生き物のシェルターになっている。
入り口には、ギンガメの小さな群れ。
こんなところにいないで、明るい浅瀬の仲間たちのところへ行けばいいのに、と思うが、きっとここがいいのだろう。
砂地には、だいたいいつも運動してなさそうなモヨウフグがすわっている。
ときどき出かけているようだが、かれこれ5年以上、ここに居座っている。
不健康そうに見えて、実は健康?
入り口前の小高いロックから、砂地のシロガヤがはえているあたりには、ニシキフウライウオがよくいる。
こうして、ちまちまいろんなものを見つつ、奥に行くと、だんだん目の前が真っ暗になってゆく。
ナイトでは、ここをFlash Light Fish=ヒカリキンメのイルミネーションショーが、今風に言えば、超ヤバいのだが、入島制限のせいでもう見られない。
ドロップオフでのナイトがあまりに素晴らしかったので、シパダンクローズを機に、ナイトは引退してしまった。
そのまま奥へすすんでゆくと、大きな壁に突き当たる。
この壁のむこうが、まさしく、カメの墳。
ロックの内側に入っても、目が慣れて落ち着いて目をこらせば、外の光が入ってくる。
ここで中性浮力がまずい人がいると、あとは縦穴のエアボケットに顔を出しておしまい。
エアボケットは、空気にどんなガスが含まれているかわからないから、レギュははずすな、とのこと。
みんな中世浮力をちゃんととれれば、複数の「間」に通してもらえる。
一度に、人ひとりしか通れない細いトンネルにも入る。
カバーンには、ドルフィンやマリーンの骨があるが、やらせだとの噂。
カメの骨は、もうほとんど砂に崩れかけているのの、まるで標本のように真っ白できれいな新しいもの、卵を持ったままの悲愴感倍増のものなど、そこらじゅうにある。
それだけ、ここに迷い込むカメはあとをたたないということだ。
「カメは生涯のおしまいにカバーンに入る」とロマンチックに語るむきもあるようだが、夕暮れどきに迷って入り、出口を見失い、酸欠というのが現実らしい。
真新しいカメの死骸があるときは、まわりの水が尋常でない淀み方をしているという。
そんなときはさっさと撤収し、器材洗いを入念にするんだとか。
こんなカバーンには、気心の知れた、信頼しているダイブマスターとしか潜りたくない。
ナイト同様、カバーンもシパダン島クローズを機に封印するつもりだった。
セレベス・エクスプローラには数年前まで、SKさんという、ツルのように痩せているのに裕福な、チャイニーズのおじさんイントラがパートタイムでいた。
このSKさんが、香港グループのリクエストで、ロックのむこうに進入したので、同じグループだった私は、はからずして、封印したカバーンに入ってしまった。まさにby accident!
ライトも持ってないのに…
人さまがライトをあてているところを写真にとったら、なさけないことに。
人のふんどしで相撲をとっちゃいけない、人のライトで写真をとっちゃいけない、ってことね。
でも、これが、私にとっては唯一のカバーン内フォト。
前はネクサスに2灯つけての重装備だったので、巻き上げたら不都合なカバーンに持って入る気合いは、私にはなかった。
カバーンを出ると、外洋には巨大なグルーパーがよくいる。
そのままバラクーダポイント側へ泳いでゆくと、入江状になっていて、ツバメウオやイエローフィンバラクーダが群れている。
西側にちょっとしたオーバーハングがあって、そこはカバーン続きのタートルトムにつながっている。
このオーバーハングには、オドリハゼの家がたくさなる。
ほかにも、ヒレフリサンカクハゼ、ヤマブキハゼがいっぱいいるけれど、ダイバーは、オドリにしか目をくれない。
ここまで来たら、バラクーダポイントももうすぐ。
ビーチエントリーなら、このあたりで引き返してJettyに戻らなくては。
ドリフトで、バラクーダポイントへの流れに乗ってゆくと、このへんから、垂直のWALLにはかわりないが、凹凸に乏しくなり、ちょっと退屈な感じ。
ツバメウオの群れがたちはだかったり・・・
カスミチョウチョウウオも登場。
徐々に浮上してゆくと、リーフエッジのキンギョハナダイの朱が、肉眼には本当に美しく映る。
スイートリップ、ヒメフエダイ、ヒメジなど、なんとなく注目度の低い平和そうなやつらが、あちこちにいる。
ナンヨウハギもいっぱい。
かわいいこどもちゃんも、
こどもちゃんのあとだと残念な感じの、おとなさんも。
サンゴのない不毛なところにはゼブラハゼ。
そして、ドロップオフのおわり、バラクーダポイントの入り口に到達すれば、ふたたびギンガメの群れ。
何万トン、いや、何十万トンいるのだろう?
ハダカハオコゼもいる。
たとえシパダンのベストはバラクーダポイントだとしても、たとえいつか死んでしまったら、バラクーダポイントとスタッグホーンクレストに分骨してほしいと言ったとしても(昔、ボルネオ・ダイバーズのカンティーンで、死んでしまった暁にはシパダンに散骨してもらいたいなぁ、という話をしたら、俺も、私も、てなことになり、みんなどこがいいかという希望を出し合ったら、バラクーダポイントが圧倒的であった)、ドロップオフこそが、The SIPADAN。
ドロップオフなんて、バディさえいれば、いつでも潜れるさー、と思っていたが、島スティができない今となってはかなわぬこと。
今日できることを明日に伸ばしてはいけない。
健康と同じで、失って初めてわかるもの…
そんな教訓すらはまってしまうドロップオフ。
ビーチエントリーで、癒しの白砂、サンゴにトロピカルフィッシュ、迫力の地形に、回遊魚、マクロ、穴と、レジャーダイビングの醍醐味が凝縮されている、類稀なポイントだと思う。