カンダマン〈Ka'andaman Traditional Healing Garden〉は、KKでいちばんお気に入りのスパ。
キナバル山登山翌日にはじめて訪れ、その後もカパライやセレベス・エクスプローラーの帰りに、必ず寄り、かれこれ10回は通っている。
サバ州政府観光局に行って、おすすめスパをたずねれば、カンダマンがイチオシといわれ、信頼もある。
何がよいかと言うと、メニューが豊富、天然植物素材がメイン、かつお値段も、同等クラスのプライベート・スパの中ではいちばんリーズナブルだし、さらにリピーターへのディスカウントも、なかなか魅力的なのだ。
KKのスパは、大きくリゾート・ホテル型とプライベート型に分けられ、カンダマンは後者。
プライベート・スパは、ほとんどが郊外にあり、カンダマンもKKから車で約20分のところにある。
また、最近は、センターポイントやワリサンスクエアにもスパがぞくぞくオープンしており、場所は便利だが、メニューは限られ、どこも似たようなサービスで、「こだわり」が感じられない。
キナバル登山の翌日、スパに行った。
泊まっていたマジュラン・ステラ・ハーバー・リゾートには、マンダラ・スパがあるが、マンダラ・スパはほうぼうにあるので、あえてカンダマン〈Ka'andaman Traditional Healing Garden〉という、ローカルのプライベートスパを選んだ。
このスパは11時~23時まで営業しているが、その日はまる1日予定がなく、予約の際に「何時でもよいです。」と告げたら、「午後2時からにすれば、ディナーに出かけるのにちょうどよい時間に終わるわ。」と、すすめられるままに午後2時スタートにした。
スパの場所は、KKから車で約20分のピナンパン(Penampang)というヴィレッジにあり、スパが往復1台20リンギットで送迎車を用意してくれる。
送迎をホテルのロビーで待っていた私たちは、前日の山登りによる全身筋肉痛で、ドライバーのおじさんがやってきてもすぐに立ち上がれなかった。
立ったり座ったりするたびに、つい、イテテ、と言ってしまう。
ホテルのエントランスのわずか数段の階段でさえも、もたもたおりる私たちを、おじさんが怪訝な顔でみていたので、「きのうキナバル山から帰ってきたばかりなもんで…。」と言うと爆笑して、「マッサージは、少し加減してもらったほうがいいよ。山登りをしたってちゃんと言わないと、よけいにひどくなっちゃうよ」と言った。
ピナンパンは、郊外の住宅街な感じ。
瀟洒な白い家が並ぶところもあれば、古い木造の高床式の住居があるカンポンや、ただの野原だったり、なんとなくなつかしさを覚える景色だ。
道端にはヤギや野犬がほっつき歩いていたりする。
そんな景色をながめているうちに、車は、ローカル風の大きな屋根がみえる敷地に入った。
そこはカダザンドゥスン・カルチュラル・アソシエーション(KadazanDusun Cultural Association)、通称KDCAというところで、その一角にカンダマン・スパがある。
5月末のカマタン(サバ州の収穫祭)や、カダザン族のイベントがない限り、人影もまばらである。
車は半屋外のレセプション前に止まり、ドライバーのおじさんが、レセプションの人に、「この人たちは、キナバル山に登ってきたんだから、マッサージは、力を加減してやって。」とご親切にアドバイス。
アロマな香り漂うレセプションでは、ピーチティーのサービスがあり、メニューの確認。
メニューには、マッサージ、スクラブ、フットスパ、ハンドスパ、ネイル、フットマッサージ等、様々な組合せがあるが、欲張って、そのトリートメントのほとんどを網羅できる、「Haminodun Package」という3時間半コースにした。
そして、「マッサージオイルはどれにしますか?」と3つの小瓶を差し出され、香りをくんくんくんくん。
ラベンダー、レモングラス、そしてイランイランの3種類で、イランイランにした。
ロッカーキーをもらい、建物に入ると、ロッカールームで、備え付けの甚平のようなウェアに着替える。
あとは、使い捨ての紙パンツを着用だ。
着替えをすませると、女性セラピスト2名がおだやかな笑顔で迎えてくれた。
2人用の部屋に通され、まずはフットバスからスタート。
ここで、早くも2回目のお茶、ジンジャーティーのサービスが。
ジンジャーの効果はてきめんで、一口すすっただけで瞬時に体の中が急速に活性化するのを感じると同時に、気持ちは鎮まっていく。
ベッドに腰かけ、きれいな花が浮かぶフットバスは、暑めのお湯が心地よく、登山で疲れた足を生き返らせる。
だけれど、フットスパというのは、どこのスパに行っても思うのだが、軽くかかとに軽石と、爪にブラシをかけて、申し訳程度でさっさと終了してしまうことが残念。
続いてボディスクラブ。
まずはうつぶせになり、足から徐々に上へと、背面側からスクラビング。
うつぶせになると、顔のところが穴になっており、床にはお花が一輪浮いた鉢が置かれる。
ささやかな癒し。
スクラブには、Kudat産(KKから車で3~4時間、ボルネオ島北端の街)の生のココナッツをふんだんに使う。
ひんやりとしたスクラブが、パラパラっと素肌にまかれるたびに、体温との温度差でちょっとゾクっとする。
この日は、日本を出て5週間がたったところだ。
この5週間で、モルディブのダイブサファリ・サザンクロス→カパライ→ラヤンラヤンと潜り歩き、どこもシャワーの出は申し分なかったけれど、それでも毎日潜り、日焼けして、とどめに山登りまでして、潮と強い日差しと汗で、きっと老廃物だらけの肌になっているだろうから、セラピストさんも、やりがいがあったことだろう!?
ココナッツずきの私にとっては、こんなにも贅沢にフレッシュ・ココナッツを使ってくれるのが、うれしくて仕方なかった。
30分間の全身スクラブ後に、体についたココナッツを落とすためにシャワーを浴びる。
腕の臭いをかぐと、わずかに甘い臭いがした。
お次は、楽しみにしていたマンディ・スス。
マレー語でマンディ(Mandi)は風呂、スス(Susu)はミルク、牛乳風呂だ。
実際には、薄いカルピス程度の濁りで、たくさんの花が浮かんでいた。
浴槽につかっていると、「Enjoy your snacks!」と、またも菊花茶とビスケットが出てきた。
生ぬる~いお湯に15分つかる。
これは、想像していたリッチな牛乳風呂ではなく、たいした感動はなかった。
それからフェイシャルを30分。
クレンジングからスタートするが、途中で眠くなってしまい、記憶があいまい。
香りから、ハチミツを使っていたと思う。
友達はなめたら甘かったと言っていた。
仕上げに、よく冷えたキューカンバーのスライスを顔に並べられるが、ここでびっくりして目がさめる。
キューカンバーは軽く30~40枚は使っており、圧巻。
私はかなり気に入っている。
そして、ボディマッサージ。
私は、ふだんは肩こりも感じないし、くすぐったがりなこともあって、マッサージにはたいして用はないと思っていたけれど、イランイランの心地よい香りに、適度な力加減で1時間リラックス。
マッサージが終わると、個室から、別のラウンジに案内される。
ラストはフットレフレクソロジー。
フットは、男性のセラピストさんが担当。
これも1時間みっちりの指圧で、とてもよく効く。
すっかり血行がよくなった。
ここで、またまたサンドイッチとジンジャーティーが出てきた。
体によさげなお茶のオンパレードだ。
連れは、足ツボを刺激されたことで腸が動いたのか、さっそくトイレ(大)に行きたくなったと言っていた。
こうして、午後2時から3時間半のはずの全メニューを終えた時には、時計はもう午後6時をまわっていた。
料金は、二人で税込で798リンギット也。
一人あたり約12,000円で、これだけ内容の濃いサービスだから、いいお買い物だ。
すっかり全身が軽くなり、かつ自分的にはツルツルになった気分でスパから出ると、キナバル山が遠くにおだやかに佇み、虹までかかっていた。
昨日、あの悪夢のようなドロドロの下り階段と格闘していたことが、もう、遠い昔のように思えた。
KKまでの送迎は、しばらく待つように言われたが、ちょうどいい感じに空がオレンジ色に染まってきたので、しばしKDCAの敷地で、サンセットを楽しむことにした。
どこからか野良犬がやってきて、まるで私たちと一緒に夕日を楽しむかのようにすぐ近くにすわりこみ、のんびりした空気が流れる。
はじめのうちは「夕日キレイ~っ!」とか言って、写真をとりまくっていたが、さすがに20分もたつと、空も金色がかったオレンジから、紫がかった色へと変化し、どんどん暮れてきた。
野良犬くんも去っていってしまった。
急ぐ用もないが、ちょっと待たされすぎなので、「送迎まだ?」と催促をしたら、ドライバーはしっかりそこにいた。
往きに送ってくれたおじさんとは、違うおじさんだ。
しかし、様子が変。
「いや~、車はあるけれど、キーを、『フレンド』が持って行ってしまって・・・その『フレンド』が戻って来ないと、車を出せないんだよ~。」という、ちょっとまぬけな理由で待たされていることがわかった。
結局、「フレンド」が登場し、キーが戻って来た頃には、日はとっぷりと暮れてしまっていた。
まあスパですっかりリラックスしたあとで、気分もゆる~い感じだったので、サンセットも堪能したしと、ご満悦状態でKKに帰った。
その後も、KKに行くといつもこのスパに通っている。
どうやら、送迎のドライバーは、実はご近所の人達がバイトでやってるようだ。
KKに用事があった人が、ピナンパンに帰るついでに、等、車を出せる人が随時出動、って感じだ。
来る人もおじちゃんだったり、おばちゃんだったり、カップルだったり。
ときに施術をしてくれたセラピストさんだったり、レセプションのお姉さんだったり、さまざま。
車もダイハツミラパルコから、ランドローバーまで、いろいろ。
タクシーを使うより安いし、安全運転であればよいでしょう。