春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「饐えていたブロッコリー・ホテルオークラレストランゆりの木in東京国立博物館」

2012-11-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
2012/11/21
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十二単日記2012年秋(10)饐えていたブロッコリー・ホテルオークラレストランゆりの木in東京国立博物館

 思いがけなく手に入った東京国立博物館の招待券。大学祭で授業が休みになった金曜日、上野に出かけてきました。一枚のタダ券で、朝10時から夕方6時まで一日中歩きまわり見て回り、心満腹で過ごしました。
 ただひとつ、満腹にほど遠かったのは、法隆寺館1階にあるホテルオークラの出店レストラン「ゆりの木」でのランチ。

 前日11月1日のランチは、駅前牛丼屋の「焼きトン丼」350円ですませた私、11月2日は、「チケットはタダなんだから、お昼ご飯はちょっと張り込もう」と思って、東京国立博物館法隆寺館の1階にあるホテルオークラレストラン「ゆりの木」に入りました。いつもは、利用しません、高いから。私にとって、千円以上のランチは「高い」部類です。それに、12時前後だと、いつも待合の椅子に奥様方がいっぱい並んでいて、待たずに入れることはなかった。東博に来る奥様方には人気のランチとみえます。

 朝ご飯なしに出かけたブランチで、11時15分に入店したので待つこともなくすぐ座れ、ランチメニューの中から、「鯛のソテー、クリームソース」を頼みました。サラダとコーヒーがついて1980円。日頃は350円の豚丼を食べている身には、「ちょっとお高めランチ」です。

 席に案内されて、割合にすぐお皿が供されました。野菜から食べると糖類の吸収が抑制される、という説を信じて、まず、サラダを食べる。それから、鯛のつけあわせにブロッコリーが三つ。ちょっとしなっとしているブロッコリー、見栄えは悪いけど、だされたものは残さず食べるのがポリシー。

 うん?ブロッコリーの味がおかしい。風邪を引いているので、味覚がおかしいのかとおもいつつ、ひとつめのブロッコリーは無理矢理飲み込んじゃいました。あとは手をつけず。鯛のクリームソースには、バルサミコ酢もかかっていたので、もしかしたら、酢の味なのかも知れず、味オンチの私が風邪引いているので、ブロッコリーの変な味も、私のせいなのかもしれません。確認してから食べようと思いました。
 鯛をきれいに食べ終わり、ブロッコリーふたつを皿に残して、店長とおぼしき人に「このブロッコリー、いつゆでたものか、茹でた日付を厨房で確認していただけますか」と言いました。「今朝、茹でました」という答えが返ってくるなら、「変な味」と思ったのは私の舌のせい、ということになるから、食べてしまえ、と思ったのです。

 厨房からの答えは「今朝、スープで煮たものです」でした。ハハン、これは私もよくやる。冷凍のブロッコリーをスープで煮て解凍して食べるやり方。「けさ、スープで煮たというのは、冷凍のものを使ったということでしょうか。で、いつ茹でていつ冷凍していつ解凍したものなのですか。私は今風邪をひいているので、もしかしたら私の味覚のせいかもしれませんが、味がおかしいです」と言いました。

 このくたり具合からみて、夜のうちに翌朝の分を解凍しておいて、朝、ちょいとスープで温めて出した、と推測されました。ちょっと饐えた味がしたのは、風邪ひき舌のせいではなく、やはり饐えかかっていたのだ、と納得されました。
 冷凍ブロッコリーを解凍して、スープで煮て出せば客は文句を言わないだろうと判断したのは、厨房です。味見をしたのでしょうか。

 ウェイターは「申し訳ありません、取り替えてきます」と言って、しばらくしてブロッコリーを三つ別皿で持って来ました。こんどはちゃんと茹でてあります。私がクレームつけてから、あわてて茹でたものとみえ、ちょっと固めのブロッコリー。
 食後のコーヒーも飲み、ブロッコリーも替えてもらったので、私にはこれで文句はない、と、ランチ代1980円を払おうとしました。

 すると、店長は「お客さまに不愉快な思いをおかけしたので、半額とさせていただきます」と、50%引きの990円のレシートを私に見せました。私は、代わりのブロッコリーを出されたことに対しては、不愉快ではなかったのです。そういう厨房なのだと思っただけ。しかし、半額に値引きしたことに対しては、モウレツに腹が立ちました。
 実をいうとこの990円の値引きまで、「もしかしたら、風邪を引いている私の味覚のほうがおかしいのかも知れない」という疑いも持っていたのです。値引きによって、レストラン側が「古い解凍ブロッコリー」であったことを認めたのだと判断しました。

 半額にしたということは、レストラン側が非を認めた、ということです。ブロッコリーの不始末に対して丁重にわびを入れた上で、1980円を請求したのなら、私の気はおさまる。しかし、半額にしたということは、レストラン側が「この手のクレーマーには、半額でも代金をひいてやれば文句は言わないだろう」と、判断したということです。レストランがしょぼくれた格好の私(この日は、ジーンズに同じデニム生地のジャケット)を見て、「こいつは990円でクレームを引っ込める客だ」と値踏みした、ということです。

 私は、ファミレスで冷凍物を解凍した料理を出されても、文句は言わない。しかし、支店とはいえ、ホテルオークラと銘打ったレストランで、まさか、饐えたブロッコリーを食わされるとは思っていなかった。
 ゆりの木の客層は、博物館を観に来た通りすがりの客がほとんどです。本店のホテルオークラにはなじみ客も大金持ちも来るでしょうから、饐えたブロッコリーなんぞは出さない。しかし、通りすがりで二度とこないかもしれない上野に集まる田舎客なら、古いブロッコリーでもかまわず出す、そういうレストランの方針をこの990円で感じました。経費削減が本店から厳しく言われているのでしょうけれど、ここの料理長には料理人の誇りというものがないのでしょうか。

 客においしいものを出して「ああ、おいしかった、幸せ」と言ってもらうのが夢で料理人になった、というシェフもいます。自分の料理に誇りを持つ。これがものを作り出すものの心意気です。古くなったブロッコリーを皿に載せ、客が気づいたら半額にして「これで文句ないだろう」という方針。これが老舗と言われるホテルのやり方なのかとあきれました。

 「ホテルのレストラン支店なんだから、そうそういいかげんなものは出さないだろう」というブランドへの盲信でランチを食べようとした私がいけない、ということもありますが、このレストランは、客をなめてかかり、古くなって味がおかしくなったものを出している、それをカバーするのは990円の値引き、ということになんだか釈然としないものを感じました。日頃千円以上のランチは高いと感じる低所得者層というものは、かくもバカにされながらランチを食わねばならぬ。

 で、990円払って出てきました。別段口止め料と言われたわけじゃないから、ここに、こうして、「東博のホテルオークラレストランゆりの木」は、古くなった冷凍ブロッコリーを出し、それに対して文句をつけた客には半額引きの値引きをした、という事実を書き留めておきます。

<つづく> 
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする