春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「嵐の海パイシーズ」

2015-02-12 00:00:13 | エッセイ、コラム
20150212
ぽかぽか春庭ショートショート>十二宮の少女たち(3)嵐の海パイシーズ



☆嵐の海☆

 私のねえさんは、嵐の夜に人間の船を見た。人間の王子を助け、恋をした。
 ばかな姉さん。人間になろうとして、海に生きる者の誇りを捨ててしまった。

 あたしは、そんな馬鹿はしない。人間のどこがいいものか。
 あんな醜い、尾びれもない輝く鱗もない者どもを。

 私はポセイドン大神の御意のままに。この大海原を泳いでいればしあわせ。
 ほら、このかわいい小魚たちと、波の間にゆられ、水脈をかいくぐり。
 どこまでも果てしない青い世界を泳いでいければ、私はしあわせ。

 青い泡は魚たちの溜息。魚たちの恋心は泡となってきえるけれど、人に恋した恋心を大神は許しはしない。心もその身も、泡となるしかないだろう。

 人に恋したばっかりに、その身を水の泡と化し、消えてしまったあわれな姉さん。

 あ、また海が荒れる。嵐になるらしい。
 ほら、荒海の波の間に、船が見える。人が、、、。乗っているらしい。
 かまやしない、あんな醜い、鱗も光らない生き物が、波に翻弄されたとて、どうとでもなるがいい。
 おや、おぼれている。なんて下手な泳ぎ。ぶざまな、醜い生き物が、、、、

 助けたけれど、別に、こんな醜い生き物。私が介抱せずとも、どの浜へなりと波に運ばせてやればいい。

 こんな無様な、背びれもない生き物。ああ、ポセイドン大神。
 なぜこのようなものに。姉は心を奪われてしまったのか、、、。
 今は、、、、、。

 わかる。姉の苦しみが。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする