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ぽかぽか春庭「はがむはイミフ」

2016-10-15 00:00:01 | エッセイ、コラム
20161015
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>神無月のことば(5)はがむはイミフ

 言葉は生きていて、生きているから生まれたり死んだりする。それはわかっているのに、自分の見知った言葉が消えていくのは寂しくて、新しいカタカナ語やら若者言葉やらが流通していると、ふん、チャラチャラした言葉がまたひとつ増えおって、と思う。

 新しい語をなかなか受け入れられないのは年寄りの特権だから、無理して年寄りが「そんな言葉はイミフ」なんぞと言わなくていいのである。イミフとはキョウビの若者用語で「意味不明」のことである、と解説されても「イミフメイ」の「メイ」を省略したところで、言語生活どれだけの節約になるのか、と思う。思うけれども若者は「イミフ」と言うのだ。

 きのう、季語の中の「生活」の語がどんどん現実の生活からは遠ざかっていく語ばかりだ、という話を書いたので、娘息子にクイズを出してみた。
 娘息子はアラサーだけど、まだかろうじて若者用語をしゃべる範囲に入っている。ただし、ふたりとも、毎日紙の新聞を一面から最後のテレビ番組欄まで全部読み、月に数冊の本を読むところが現代の若者とは生活習慣が異なる。ふたりとも紙の本は、タブレットとかいうものに移行しつつあるのはいたしかたなかろう。

 「ヒコバエというのは、何が生えているか知っているか」即答「知らない」。まあ、そうだろうよ。
 「よろず屋というのは、何を売っているか知っているか」即答「何でも売っている。いろんなもの」おや、知っていたか。
 「あのね、ゲームの中によろず屋が出てきて、武器でも食べ物でも何でも売っているんだよ。RPGゲームやっている子なら、小学生でも知っている」
 そ、そうだったのか。なるほど、ある言葉が、時代の中では消えてなくなっても、継承されるひとつのルートは、ゲームのなかでの使用語彙ということがあったのか。

 娘が小学生の時、「烏兎」の意味をちゃんと知っていたので驚いたらゲームの中で「勇者」だったか「魔法使い」だったかが扱う、「金烏玉兔」という技があり、金烏玉兔を省略して烏兎であることを知っていた、というのを思い出した。

 ツイッターやっていないので、「リムる」というネット用語を知らなかった。ツイッターのフォローをやめることを言う。フォロー解除を、英語ではremooveという。日本語ネット用語ではリムーブする→リムる。
 知らなくてもまったく問題ない。ツイッターやってないし、だれのフォローもしていないから。「あいつにリムられた」と、むかつくこともない。

 テンカのアサヒとテンカのベネッセが共同で語意検定なる試験をやっていて、世代間ギャップの大きい語の調査を出していた。
http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2016/09/15/docs/20160915release.pdf

 親世代が知っているが、高校生は知らない語トップ5
 阿漕、イデオロギー、忌憚、見まがう、活路
 高校生は知っていて、親世代は知らない語トップ5
 ディスる、イミフ、りょ(了解の略)、きょどる(挙動不審になる)、ぽちる(ネット通販で購入ボタンを押す)

 なるほど、さもありなん。言わずもがなのむべなるかな。
 大学生と接しなくなって、1年たつ。これから先、私も若者新語に出会う機会が少なくなっていることだろう。

 今のところ、娘息子がふたりでしゃべっているのを聞けば、たいていは意味がわかる。コンビニなどで買い物をするとき「これ、ピピって買おう」と言って、スイカカードを機械にかざして買っている。そうか、「ピピる」とはカードなどで買い物をするとき機械音が「ピピッ」と鳴るので「ピピる」なのだな。

 ベネッセの報告によるアンケート結果の統計によると「語彙力が高い層とは、読書量が多い」「年収が高い」「幸福感を持つ割合が高い」と相関するのだという。おやまあ、私は語彙力高いほうのつもりだ。読書量は多いが、年収は高くない。まあ、どこにも例外はあるもんだ。

 ことば収集は、私の趣味でもあり商売道具のつもり。毎日なにかしらの、ことばについての新発見はある。
 「赤ん坊が、はがむ」という表現について。つい先日「はがむ=あかちゃんが人見知りをする」という語は、群馬方言であることを知った。ずっと、標準語だと思っていたのです。

 世代間ギャップはさらに広がっていくでしょうが、カタカナ新語にめげず、ネット用語に驚かず、まだまだことば修行、続けます。
 カタカナ語が増えることが問題なのではありません。
 英語を使って生活する方が、マシな暮らしができるとわかれば、2世代60年で言語は亡ぶ。ロシアの貴族全員がフランス語を話し、農奴はロシア語を話していたように、日本富裕層は英語を話し、労働層は、カタカナ日本語を話す社会になるやもしれず。

・高校生キョドってディスってイミフです日本語流浪の果てに滅亡

 いいけどね。200年後に日本語滅亡したって。1万年後には人類全体が滅亡しているかも知れないんだし。
 どこかのお役人や学者は、核のゴミは10万年後まで大丈夫って言ったらしいけれど、10万年後に彼らが責任取るわけじゃないもの、何とでも言える。

 日本語さん、しからば、左様のしだいにて。左様なら。さらば。じゃあね。バイビー。
 滅亡へ向かって。りょ。

 藤原定家(1162-1241)の自筆「明月記」断簡1211年筆

 私だって、読めませんけれどね。でも、この文字、このことば。これを美しいと、貴重だと思う人もいなくなっていくのかと思うと、オマイラ先人をディスることなかれ。自分の中の核をかたちづくっているのは、、、、うんぬんといくらいっても、既読無視。リムられたって、最初からコミ症(コミュニケーション障害)だしな。

<おわり> 
コメント (4)
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