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ぽかぽか春庭「神話のひまわり、食べるひまわり」

2017-06-27 00:00:01 | エッセイ、コラム


20170627
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>花の絵、花の名(9)神話のひまわり、食べるひまわり

 2012年8月にUPした「ひまわり蘊蓄」再録を続けています。
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シャルル・ド・ラ・フォッセ(LA FOSSE, Charles de 1636-1716 フランス)
ひまわりに変身するクリュティエ


2012/08/26
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>ひまわり蘊蓄(7)ギリシャ神話のヒマワリ

 ヒマワリの学名Helianthus annuus(ラテン語)の語源は、ギリシャ語で 「helios(太陽)+ anthos(花)」です。

 古代ギリシャで、「太陽の花」と呼ばれていたのは、現在私たちが知るヒマワリではありません。ヒマワリがヨーロッパに伝わったのは、大航海後アメリカ大陸上陸以後の出来事であり、古代ギリシャには「ヒマワリ」は存在しなかったからです。
 ギリシャ神話の中の「太陽の花」は、向日性の植物として知られていた地中海沿岸に自生する草本のヘリオトロープまたは、マリーゴールド(キンセンカ)だろうと言われています。キンセンカも向日性を持ち、茎が若いときは、日中、太陽の方向に花を向けて回ることがあるからです。

 しかし、上の ド・ラ・フォッセが「大陽の花に変身するクリュティエ」を描いた頃には、「大陽の花」と言えば、ひまわりを指すくらい、ヒマワリはヨーロッパに広がっていました。

 ギリシャ神話「大陽の花」 クリュティエ(Clytie)の物語(オウィディウス Ovidius 『変身物語』より。再話:春庭)

 オリンポスの山のギリシャの神々のなかでも、一段とりりしく美しい太陽の神アポロン。アポロンにあこがれる女神や妖精は大勢おりました。
 水の精クリュティエもそのひとり。太陽神アポロン(Apollon)に恋いこがれ、アポロンをひととき抱きしめることができたのです。しかし、アポロンは、クリュティエを恋人とすることにすぐに飽きてしまい、新しい美女を求めて、空を走っていきました。

 光の馬車を駆って大空を駆け抜けていったアポロンが、オリンポスから遠く離れたペルシャの地にさしかかると、地上にオリンポスの女神もかなわない美しい乙女を見いだしました。

 その乙女の名は、レウコトエ。ペルシャの国を支配するオルカモス王と絶世の美女エウリュノメ妃との間に生まれた姫です。
 オルカモス王は、行く末は、レウコトエによい婿をめあわせ、ペルシャの国に役立たせようと、厳しくレウコトエを育てていました。レウコトエは、母親エイリュノメ以上の美しい娘に育ちました。

 アポロンはたちまちレウコトエに心を奪われ、レウコトエだけを見つめるようになりました。世界を照らすべき仕事も忘れて、一人の乙女にまなざしを向け、レウコトエを早く見たいばかりに日の出の時間より早く東の空に昇ってしまったり、レウコトエに見とれていて西の空に沈むのを忘れたり。
 レウコトエが見つからなかったときなど、落胆のあまり月の影に隠れてしまい、地上を照らすことさえおろそかになってしまったほどでした。

 一日の仕事をおえたアポロンが、西のはての空の下の牧場に、太陽神馬を放ちおえました。馬たちが一日の疲れを癒し、次の朝を照らす備えをしている夜の間に、アポロンは母親エウリュノメの姿に変身し、レウコトエの部屋に忍び込みました。
 糸つむぎをしていたレウコトエは、部屋に入ってきた母親が「ふたりだけにしておくれ」というので、おつきの召使いを、部屋から出しました。

 変身したアポロンであるとも知らず、母のことばを待つレウコトエに、突然男の声が聞こえました。
 「世界の眼である私が、おまえを好きになったのだ」
 思いがけない恋の言葉に、レウコトエは驚きおそれました。
 しかし、アポロンが本来の姿にもどると、レウコトエは、太陽神のまばゆい輝きと美しさに心奪われ、夜のとばりの奥への誘いを受け入れたのでした。

 ことの次第に気づいたクリュティエは、深く苦しみました。
 おさえられぬ嫉妬心と恋仇への怒りから、クリュティエは、オリンポスの神とペルシャの乙女レウコトエの許しがたい仲を、ペルシャ王オルカモスに言いつけました。

 気性の荒い父オルカモスは、クリュティエの密告を聞くと怒り狂いました。
 父の定めた男以外とちぎるとは、すなわち父王の権威をないがしろにすることです。たとえ愛する娘であっても許すことはできません。

 母のとりなしもかなわず、レウコトエは、深い穴に入れられ、頭から下を埋められてしまいました。
 アポロンは、何とか助け出そうとしましたが、レウコトエは土の重みで衰弱していきました。アポロンは、レウコトエに神酒ネクタル(ネクターという飲み物の語源)を注いでやりました。
 すると、彼女の体は、一本の乳香の木に変わってしまいました。

 悲しみに沈んだアポロンは、クリュティエの弁解も聞かぬまま、彼女から離れていってしまいました。
 クリュティエは、アポロンを取り戻すどころか、すっかり嫌われてしまったのです。
 哀れなクリュティエは、届かぬ恋の思いにすっかりやつれ、9日間、空の下、夜も昼も地面に立ちつくしました。
 食べることも忘れ、雨露と自分の流す涙を飲み干すのみでした。
 やせ細ったクリュティエは、ただ空を仰ぎ、そこを通るアポロンの顔を見つめてそちらへ自分の顔を向けるだけ。

 ついに身体は土に吸われ、クリュティエの体は、血の失せた草木に変わってしまいました。そしてクリュティエの顔は一輪の花と化したのです。
 それが太陽の花Helianthusです。


「ひまわり」アンリ・マティス


<つづく>

2012/08/28
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>ひまわり蘊蓄(8)ひまわりを食べる

 現代中国ではヒマワリのタネは庶民のおやつです。小さなタネを器用に囓って、中味を食べています。殻はそこらじゅうにまき散らして食べるのが、庶民のお作法?
 学生のあつまり、親戚のあつまり、人が集まった跡には、大量のヒマワリ種の殻が散らばっている、という光景を、1994年2007年2009年、3度の中国赴任中に、よく見かけました。ヒマワリの種は「香瓜子」と言います。

台湾産の香爪子


 私はナッツ類が大好きなのですが、ヒマワリは小さくて食べにくく、ヒマワリよりは値が張るけれど、栗や胡桃をよく食べ、また日本では手に入らない珍しい木の実が売られているので、おやつに食べていました。
 買い方は「一斤(イージン=500g)」と、ナッツ屋に言って、量ってもらうのです。ヒマワリの種は、一斤1元(10~15円相当)だったり2元だったりしましたが、西域や南方原産の珍しい木の実は、東北の街ではヒマワリの種の十倍以上の値段がしました。でも、今から思えば、高いといっても、500gで500円とか800円とかだったのだから、もっといろいろ食べてみればよかったと思います。どうも貧乏性なので、香瓜子が一斤1元なのに、一斤30元とか50元する木の実は、えらく高いもののように思ってしまった。

 直接食べるタネ、食用種は、長軸方向に黒と白の縞模様があります。煎って食用とするほか、アブラをとる種があります。18世紀に油をとる種の改良がすすみ、得に旧ソ連での品種改良がすすみました。日本ではヒマワリの種を直接食べることは多くなく、もっぱら、ペット(ハムスターなど)の餌に利用されています。

 食用ヒマワリのタネと花


 油脂用のヒマワリの種は絞ってヒマワリ油として利用されています。多価不飽和脂肪酸が多い。近年は、アメリカで品種改良がすすみ、オレイン酸を多く含むヒマワリ種が作り出されています。
 食用油の生産は、ナタネ油、ゴマ油などが生産量が多く、ヒマワリ油は世界で4番目に生産量の多い植物油脂です。

 2011~2012の国別生産量統計。
1 ロシア     2,932千トン
2 ウクライナ   2,754 千トン
3 EU(27か国) 2,666千トン
4 アルゼンチン  1,258千トン
5 トルコ      684千トン

 以下、中国 パキスタン 南アフリカ アメリカ インド。数年前の統計に比べると、アルゼンチンのひまわり油が半減していることがわかります。アルゼンチンに広がっていたひまわり畑は、今、半減してしまい、これからも減ってしまうのだとしたら、大地に広がるヒマワリ畑を一目見ておきたいという気になります。

 日本では、大豆油の消費量がもっとも多く、ヒマワリ油消費量は、2010年で約1万8,600トン。ヒマワリ油のほとんどは、アルゼンチンやアメリカからの輸入です。直接家庭の台所で調理油として使われる量は少なく、ほとんどは業務用として、チョコレート用のカカオバター代用品として使われています。チョコレートを食べるとき、ヒマワリ油も食べているってことですね。

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20170627の付け足し
 私が参加しているジャズダンスサークル、「それいゆ」という名です。最初にサークル名を決めるとき、どこぞのカフェやら美容院やらでよく見かける名称だからいや、と思ったのですが、10年続けているとそれなりに愛着もでてきました。

 私自身は、中原淳一の雑誌「それいゆ」にも「ひまわり」にも憧れたことはなかったですが、世代的には、中原淳一の描く乙女になりたいと思っていた女の子たちの中で生きてきました。

中原淳一「ひまわり」1951年雑誌ひまわり付録バースディブックより





<つづく>
コメント (4)
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