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奥村土牛「木蓮」山種美術館所蔵「花*Flower*華―琳派から現代へ―」図録より
20170611
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>花の絵・花の名前(1)マグノリア
仕事で使うことば、専門用語は、それぞれの分野にたくさんあります。警察用語とか医学の専門用語などは、刑事ドラマ病院ドラマなどで使われて一般の人も知る機会があるし、その他の「お仕事ドラマ」も、専門用語を知る機会になります。
専門用語を知り、ついでにその英語訳などを知ると、とっても物知りになった気分がしてうれしくなる。
古い建築、近代建築などを見て歩くのが楽しみのひとつで、「しっくい」という用語も見慣れたものでした。しっくいは、消石灰にふのりや角叉(つのまた)などの粘着性物質と麻糸などの繊維を加え,水でよく練り合わせた建築材料。砂や粘土を加えることもあり、壁や天井に塗り込める。現代中国語では「灰泥」
ここまでは知っていましたが、なぜ「しっくい」というのか、語源を知ると。
「しっくい」とは、それが日本に伝わった当時の中国語で表記すると、「石灰」。「shi khui」と発音されていた語に、漆喰という文字を当て字したものが「しっくい」だったのだ、とわかりました。わかっても日常生活になんの得もありませんが、わかった、と思うことが脳内活性化になるときいてからは、せっせと「わかった」を増やしています。
春庭の専門は、言語学(日本語文法)ですから、普通の生活では使うことのない文法用語も日本語&英語でだいたいはわかります。
たとえば、「繫辞」なんてことば、日常生活には使いません。英語ではcopulaコプラ。論理学用語です。
難しそうなことばに思えますが、日常語にしてしまえば、「我が輩は猫である」「I am a cat.」「A human being is an animal like a cat being an animal, too.」の「である」やam やisに当たるもの。A=Bの「=」が繫辞です。
「です」や「である」が日本語の繫辞です、とわかれば「な~んだ」。でも、コプラなんていう専門用語を使うと、ちょっと難しげなことやっているみたいでしょ。
と、ここまでが枕です。
自分のお得意分野以外のことば、知らないことがいっぱい。春庭は、この名を江戸時代の文法学者から拝借して名乗っていますが、最近「春庭」で検索エゴサーチすると、マンガのタイトルや花屋チェーン店がでてきます。春庭、お花に詳しそうな名前になりました。でも、花の名にうといです。
最近は、植物園や庭園を訪れて、花の枝に植物名が書いてあるのを写真にとって、いくつかは覚えたのもあるけれど、名札を写真に撮っただけで満足して、なかなか肝心の花の名を覚えられない。覚えたと思ってもすぐに忘れてしまいます。
6月4日に、山種美術館の「花*Flower*華―琳派から現代へ―」を見てきました。琳派の花、近代日本画の花、洋画の花、華麗に並ぶ花の絵。
観覧者は圧倒的に女性。着物姿で見ているご婦人方も多くて、なんだか華やかな会場に、相変わらずよれよれのジーンズ姿は小さくなって会場を2回見て回りました。小さくなる必要もないのだけれど、ま、そういう気分。
1回目は花の絵を見て回り、2回目は説明の文もよく読みました。
並んだ美しい花の絵に、山種美術館学芸部作成の「花事典」が添えられており、中国語名、英語名が出ている。植物園などでは、和名と学名並記が多いので、英語名を知らなかった花もあり、「わかった!」マークが脳内に並びました。
木蓮。中国名「玉蘭ユイラン」。英語名「マグノリアmagnolia」。
ワォ、私は映画「マグノリアの花たち」なんぞも見てきて、マグノリアの花が映画の画面に出てきたのを見ていたはずなのに、「マグノリアの花」は、「マグノリアの花」と思って見ていたので、日本語では木蓮であることにまったく気づかないでいました。いかに花の名にうといか、よくわかる。
英語のマグノリアは、木蓮科に属する花全般を指すので、日本の木蓮に当たるのはMagnolia quinquepeta もしくは Magnolia liliiflora、なのだそうですが、それにしても、マグノリアと木蓮がまったく結びついていませんでした。
マグノリアの花
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画像借り物
「マグノリアの花たち」英語タイトル「Steel magnolia」についてもっと理解していれば、映画の舞台ルイジアナ州の州の花がマグノリアであり、南部女性の代名詞が「マグノリアの花」だったことがわかったのかもしれません。
原題Steel Magnolias鉄のマグノリアとは、外見は花のように愛らしく優しいが、中身は鋼(Steel)のように頑強な芯が 一本通っている女性という意味になります。元ファーストレディーの社会活動家ロザリン・カーターは、南部ジョージア州から初めて選出された米大統領ジミー・カーターの妻。しばしば「鉄のマグノリア」と呼ばれたそうです。
もっとも、私の木蓮のイメージは、奥村土牛が描いた紫木蓮や白木蓮なので、欧米でマグノリアと呼ばれている花とは見かけが異なり、「マグノリアの花たち」の中、たとえば結婚式のシーンで、花嫁の髪を飾っていたり手に持つブーケの中にマグノリアがあったとしても、私はそれを見て「木蓮」とは気づかなかったと思います。
マグノリアと名付けられている花木は150種類にも及ぶのだそうです。私が普段見ているのは、冬に葉を落とす落葉樹ばかりだったので、常緑のマグノリアもあるのに、たぶんそれを目にしても木蓮とはおもわなかったのでしょう。
小林古径「白花小禽」
山種美術館所蔵「花*Flower*華―琳派から現代へ―」図録より。図録の説明にはevergreen magnoliaという英語名が出ていました。
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我が住む団地に咲く白木蓮
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/e7/c68fa9b046d6e2e6f7b95d881a67f5b6.jpg)
花の名前を知らない春庭ですが、Steel magnolia という女性の代名詞は大いに気にいりました。私も「鋼の花」でありたいと思っていますから。
あはっ、「芯は強いsteelであれ」という希望はかなうかもしれないけれど、「みかけはたおやかな優しい花」ってのはすでに「願っても手にとどかぬ高嶺の花」ですね。
花の名前、復習します。
<つづく>