春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「エクセル修行中」

2018-02-04 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180204
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記学而時習之(3)エクセル修行中

 立春です。立春ですが寒いです。寒いけれど、老骨むち打ち、お勉強をしています。エクセル修行はじめました。

 ワードプロセッサーを使い始めたのは、1985年に入学した2度目の大学生活で、研究室に置かれていた一太郎初代機から。(一太郎初代機発売は1985年8月)
 その後、夫の事務所にワープロが置かれ、私も自宅用に使い出しました。英文タイプが得意だったので、ローマ字入力にはすぐに慣れて、悪筆の私にはありがたい筆記用具でした。

 1995年からパソコンワープロになってから現在まで一太郎で入力し、メール添付するときはワードに置き換えて送信しています。ワードも最近は漢字変換がお利口になってきたけれど、日本語入力に関しては、一太郎が一日の長ありです。
 息子は古文書翻刻の仕事をしているので、一太郎じゃないと仕事にならないそう。最新バージョンを使っているので、私のも息子がときどきバージョンアップしてくれています。

 ワープロ使用は、独学で十分でした。
 しかし、子供の頃から極端に計算ができなかった春庭、エクセルの表計算というのは、苦手なままになってしまいました。
 簡単な書き込みはできます。履歴書をエクセルで作成せよというのも、なんとか完成させました。しかし、表計算は必要もないので、習わぬまま。

 この年になって、エクセルできない、というのでは、これから新しく始める仕事に不便かも、と思って、エクセル表計算教室に通うことにしました。68の手習い。

 全5回8000円、という格安お手軽な基礎教室です。ハローワークなどでパソコン講習を担当しているという女性講師の指導で、文化センターの一室で3時から4時半まで。
 平日午後の講習なので、再就職狙いの中年女性や、老後の楽しみにするのか、退職してだいぶたっていそうな高齢者と共に学びます。7人の講習生。

 最初の1回目は、「ダブルクリックというのは、マウスの人差し指を2回カチカチとやります」という解説から。1時から2時半までのワード教室でワードを習い始めた初心者も同時履修で2名混ざっている教室なので、セルの中に文字を打ち込むにも時間がかかります。
 先生の方針では「ゆっくり学ぶエクセル教室」ということなので、1回目講習は、むずかしいことはありませんでした。ここまでなら、これまでもできていた、という範囲です。

 1月25日、2回目の講習。セルを選択して計算する方法を学びました。第1回目は最初の起動方法やセルの中へ数字を入れることなどで、難しいことはありませんでしたが、今回はパソコンに計算をさせる作業も入り、ちょっと計算っぽくなってきました。

 先生の説明を聞きながら作業をしていく。
 テキストには簡単な説明文がありますが、もし、「はい、ではテキストを見て、テキストに書かれていることを順にやってみてください」と言われても、数字に弱くパソコンさっぱりわからんちんの私など、とても一人では出来なかったと思います。先生がお手本をモニターに出して「はい、次はここをクリックしてください」とやってみせた通りにするのでは、難しさが全然違う。

 25年前に、日本語教師養成通信講座のスクーリング講師をやったときのこと。まだ教員養成の仕事をはじめたばかりの新米教師だったので不安になり、「テキストに書いてあることを解説しているだけですが、参考になるのですか」と、スクーリングに参加している生徒さんに聞いて見たことがあります。すると、生徒さんは「教科書に書いてあるのを読んでも理解できなかったのですが、先生のお話を聞いて、とてもわかりやすくなり、頭にはいりました」と、言ってもらったことがありました。

 このときは、「教科書に書いてあることは、教科書を読めばそれで済むと思うけれど。私の解説でよかったのかなあ。社交辞令で教師に対して、先生が説明してくれたのでわかった、と言ってくれたのかもしれない」と思ったものでした。

 自分が何年ぶりかで生徒の立場になってみて、このスクーリング講師のときに言われたことばを思い出したのです。テキストを読んでもさっぱり頭に入らないことが、先生に言われたとおりにやっていくと、できるようになる。
 対面で講師が教えてくれることのありがたみを実感しました。

 もうひとつ、対面の大切さを知った出来事があります。「赤ちゃんの脳の発達」についての番組を見ました。
 赤ちゃんは、生まれたては口の中であらゆる音を発音することができます。この段階では、母語にない発音の聞き分けが可能であることが、実験で確認できています。
 日本語母語の赤ちゃんも、生後6ヶ月のときはRとLの音の聞き分けができるというわけです。

 しかし、1歳以後、自分からことばを発するようになると、「あらゆる音を発音できる可能性」を捨て去り、養育者が発する発音を選択していきます。養育者のことば(母語)を身につける過程で、母語以外の発音の聞き分けが出来なくなっていきます。

 テレビ番組の実験では。
 「自分からことばを発する直前の赤ちゃん(養育者の母語は英語)」に、テレビ番組の「こどものための中国語」を視聴させます。赤ちゃんは熱心にテレビ画面を見つめています。
 しかし、赤ちゃんは育っていく過程で、「英語にはなくて、中国語だけにある音」の聞き分けはできなくなっていました。

 別の実験では。テレビ番組と同じ内容の中国語を、テレビと同じ講師が赤ちゃんと対面で行いました。赤ちゃんの目の前で講師は中国語を話します。中国語に触れる時間は、対面もテレビ視聴も同じ長さの時間に設定されていました。

 生身の講師が赤ちゃんと対面で中国語を聞かせた結果、赤ちゃんが英語にない中国語の発音を聞き分ける力は、ずっと保持されていたのです。自分と直接に関わる人のことばの音は、赤ちゃんの中に生き続けるのです。

 「対面が大事」ということ、強く印象に残りました。大人が母語以外のことばを第二言語として習うとき、大人の脳は、赤ちゃん脳と同じにはならないとは思いますが、対面の重要さは同じなのではないかと思います。

 もうひとつ、赤ちゃん脳の発達で知ったこと。
 親は、子供の発達に一喜一憂します。早く寝返りができないか、早くお座りができないか、よその子は這い這いができるのに、うちはまだだ、などと気を揉みます。
 親がむりやり這い這いさせようとしても、無駄です。しかし、這い這いがまだ出来ない赤ちゃんを、這い這いしている赤ちゃんといっしょに遊ばせていると、できなかった子が這い這いをするようになってくる。これも「マネッコ」「リピート練習」の大切さを示しているように思います。

 最新の語学習得法。インターネット利用などで、パソコンを駆使しての独学も十分に可能になっています。でも、独学以上に、教師が目の前でことばを聞かせること、大切なのだと思いました。

 私はもともとリピート練習が好きではなく、先生の言ったことをそっくりそのままマネして発音するだけのドリルは、教室では最小限にとどめ、教室では学生が自分から文を産出できるように指導する、ということを重視してきました。

 リピート練習ばかりしている教え方を「あれなら、教師いらないんじゃないの。テープレコーダー1台教室においておけば授業成立」などと、生意気にもオーディオリンガル教授法に対して批判的に感じたこともありました。
 語学練習の基本ドリル。リピート(繰り返し)練習、代入練習、変形練習。どれも、基礎は大事です。リピート練習もしっかりやろうと思います。

 自分ががエクセルを対面で教わってみて、どんなにパソコン利用の指導法が確立しても、人が新しいことを習うには、人と人とのやりとりが大切だということ、よくよくわかりました。

 2月1日、3回目の練習。SUM計算式を教わりました。エクセルリボンのΣのところをクリックして範囲指定すると、その範囲の合計の足し算も、平均の割り算も勝手にやってくれます。なんて便利なんでしょう、と、いまごろ思っているのです。
 計算弱い私、こういう機械ができることを昔わかっていたなら、計算できない自分にこれほどのコンプレックスを持たずに、もっと堂々と生きてこれたのかも。

 もっとも、いちばん基礎的な数字をパソコンに入力する段階で、何度も入力ミスがあるのは見えています。時代がかわても、数字を扱う職業はむりだったでしょうね。
 銀行カードの暗証番号を3度まちがえて、取引停止になったことあるし、現在も「日本語授業カリキュラム表」を作成してたら、行政書士の先生から「教育時間の数字がこっちもそっちも間違えている」とお叱りのメールがきました。私に数字を記入させないでくれぇ!

 エクセルの基礎練習。あと2回の講習で、表計算などがどこまでできるようになるか、がんばって勉強します。

 学而時習之。不亦説乎。学びてときにこれを習う。また楽しからずや。

<おわり>
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする