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ぽかぽか春庭「報道写真展2018 in 東京都写真美術館 & コミットメントとは

2018-08-02 00:00:01 | エッセイ、コラム

報道写真展2018ポスター

20180802
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2018十八番日記燃える夏(1)報道写真展2018 in 東京都写真美術館 & コミットメントとは

 逆走台風、皆様におかれましては、いかがお過ごしでしたか。台風が東からやってきて、大雨降った地域の方にはお見舞い申し上げます。東京の、燃え立っていた大地にはすこしは消炎になったかと。酷暑の夏。人も燃え立っていましたから。
 しかし、日陰に入って風があれば、太陽の燃える熱もなんとかしのげます。人の対立がもたらした紛争によって人が燃えるのは、暑さ以上の過酷を感じます。

 6月9日、報道写真展2018を会期初日に見ました。
 例年と同じく、衝撃を受けた写真は多々ありました。4500人のフォトグラファーの7万点を超える作品から選ばれた受賞作160点ですから、どの写真も1枚1枚、見入らずにはいられないすぐれた作品でした。しかし、例年とことなり、見ていてほほえましくなるような「心ほっこり」写真が少なかったように感じました。

 「自然の部 単写真」 単写真 2 位
 トマス・P・ペシャク ドイツ、2017年4月18日
 インド洋に浮かぶ南ア領南極地域のマリオン島で、岩に覆われた海岸線を通り抜ける行動でその名にこたえるイワトビペンギン。
 
 ↓の岩飛びペンギンの写真も、「絶滅危惧種」という報道で、環境の劣化を訴えているのです。


世界報道写真大賞「スポットニュースの部」 単写真 1 位
 ロナルド・シュミット AFP通信、2017年5月3日 ベネズエラのカラカスで、ニコラス・マドゥロ大統領への抗議行動中に機動隊との 激しい衝突が起こり、火だるまになるデモ参加者(大やけどを負ったけれど、一命はとりとめたそうです。



一般ニュースの部 組写真」 組写真 1 位
 イヴォール・プリケット アイルランド、ニューヨーク・タイムズに提供、2017年7月12日
 イラク軍特殊部隊の兵士によって手当てをうける身元不明の男の子。イスラム国(ISIS)からのモスル奪還をめぐる戦闘では数千におよぶ市民が殺され、街の大部分が廃虚と化した。



「現代社会の問題の部 単写真」ジェスコ・デンゼル(ドイツ)
 ナイジェリアの都市・ラゴス、ラゴス礁湖の岸にあるマココ・コミュニティーの運河を進む、国外駐在者たちを乗せたラゴス・マリーナからのボート



 どの写真も、現在の世界を映し出す衝撃的な画面でした。

 ミサイルママは、アメリカで起きた「銃乱射事件」の写真などを見て、「これから思えば日本は、平和だね。災害はあるけれど」との感想を述べていました。

 世界報道写真展の中に「帰宅困難地域の四季」という福島県の1年間を記録した動画のブースがあり、ミサイルママも私も、別々に、雪の中の町、桜の町のようすを見ました。「夜の森」という桜の名所で、花びらの吹雪を浴びて子供たちは無邪気に笑顔を見せていました。しかし、この子らがこの地に戻って生活することは、いまだ許されていないのです。

 追い出されていくロヒンギャ難民、イスラムの教えをめぐる争いの犠牲になる子供、銃社会アメリカで相次ぐ乱射殺人事件。環境悪化で絶滅危惧となる動物たち。どの問題をとっても、日本では考えられないようなつらい現実の出来事ばかり。

 でも、「だから日本に暮らせていてよかった」という結論になってしまったら、この写真を命がけで撮影した人にとっては、撮影した甲斐がないでしょう。

 ミサイルママは、西アフリカのある地域で、少女の胸の発達を抑えるために、胸にアイロン(熱せられた石や板)を当てたり、布で縛り付けたりする風習があることを伝える写真に衝撃を受けていました。

 「ブレスト・アイロニング」と呼ばれる風習。
 その土地においては、少女の性的発達を抑え、少女が早期に性的対象とみなされないために、少女の身を守るために必要な慣習と受け取られているのだそうです。

 私はかって、ケニアのイスラム教徒の女性と交流した際に知った「女性に行われる女性器切除」の風習をミサイルママに話しました。施術していない女性は、結婚できないという地域が多いのです。

 「女性の処女性を守るため」などの理由で女性器の一部を切り取り、ときには陰部を縫い付けてしまう風習で、多くは非衛生的な環境で麻酔なしに施術されます。欧米などからの廃止の声は「他国の固有文化への干渉」として、実施国の男性からは非難を受けています。女性側も、施術を受けていなければ結婚できなくなる恐れがあるゆえに、この風習を受け入れている面があります。
 女性の処女性を守るには、女性器切除に効果があるのではない、という意見は取り上げられません。

 先進国におけるセクハラ問題もたいへんでしょうが、アフリカの(あるいはアメリカなどに移住したアフリカ系移民女性の)身に起こる、「女性割礼」の問題、ミサイルママが知らなかったように、ほとんどの女性にとって、「知らない」問題、あるいは「自分には無関係」の問題だろうと思います。

 では、報道写真によって知った世界の問題について、私にはどんなコミットメントが可能なのでしょうか。
 「コミットメントする」というのが、実際にはどのような行動となるのか、今の私にはわからない。

 英語の動詞commitから日本語外来語となったことば。
 コミッションcomission=手数料、わいろ
 コミッショナー(commissioner)=最高権力者。日本ではプロ野球のコミッショナーなど。
 コミッティー(committee)=委員会
 コミットメントライン(commitment line)=(金融業界語)融資限度額

 「コミットする」を漢語に言い換えると「関与」、和語では「かかわり」が一般的ですが、実は、元の英語では「強い責任、または、宗教的な信念に基づく確約」です。日本語では、単に「関与・かかわり」というだけでなく、「責任を伴う確約」「決して破ってはならない公約」という言い換えにしたほうがいい。

 写真で報道されたことに関して、私がそれらの問題に「かかわる」と言うことに躊躇してしまうのは、「守らなくても誰も責めたりしない日本の政治家のかる~い公約」とことなり、自分自身では「あることにかかわる」には、重い責任が伴う、と感じてしまうからです。

 新幹線内で、凶漢に襲われた女性を助けようとして凶刃に倒れ亡くなった男性は、命を張ってコミットしました。ほんとうに立派な方だと思うけれど、私なら立ちすくむばかりだったろうと思います。 
 
 流浪の民ロヒンギャの人々、胸に熱い石を当てられて成長を止めさせられる少女、紛争地帯の子供たち、体に爆弾を巻き付けられて「自爆武器」として利用させられそうになったイスラム少女。
 私はどのようにコミットできるのでしょうか。

 ただただ日常茶飯の毎日を、飯食って寝て、今日も一日生き延びた、と生きている私ですが、たまには考え込むことにもぶつかる。
 さまざまな事件が起き、歴史的な首脳会談があり、私の日常にも小さな波風はあり、大きな落胆はあり、さて、これから先、世界とのコミットメントはいかにあるべきなのか。コミットしていくこと、かかわりをつくること、絆をつなぐこと。

<つづく>
コメント (6)
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