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ぽかぽか春庭「躑躅と干鱈」

2019-04-27 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190427
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>躑躅つつじ(2)躑躅と干鱈
 
 芭蕉の句から、私の好きな一句。「野ざらし紀行」から
「昼の休ひ(やすらい)とて旅店に腰を懸けて」
 躑躅生けてその陰に干鱈割く女
<松尾芭蕉
 
 芭蕉が昼のひと休みに立ち寄ったはたご。あまり立派な店ではないので、投げ入れにしてある躑躅の傍らで、茶屋女が干鱈を割いている。(江戸時代に、干した鱈をもどしたおかずは大衆の一番安価なおかずでした)
 真っ赤な躑躅と、白い干鱈。とりあわせが鮮やかで、しかもどことなく笑いたくなるようなおかしみのある光景。茶屋女の赤い前垂れや蹴だしからはみ出ているムッチリ太い白い足まで見えてきそうな干鱈です。

 つつじの歌も全山埋め尽くすくらいいろいろありますが。
近道へ出てうれし野の躑躅かな<与謝蕪村
こまがりに刈り残されて山つつじ <正岡子規
冷水をしたたか浴びせ躑躅活け<杉田久女
庭芝に小みちまはりぬ花つゝじ<芥川龍之介

大巌の襞裂けたるに山躑躅< 水原秋櫻子
山つつじ照る只中に田を墾く<飯田龍太
毛野はいま遠霞みつつ山つつじ <野澤節子

 毛野は、上つ毛の国なのか下野なのかわかりませんが、群馬県の「県の花」はツツジなので、勝手に上毛と思います。

 万葉集の和歌にもつつじ咲く道にころがっている美人の屍の歌がありましたが、近代の句にも、鮮やかに咲くツツジに死のイメージを含ませた句があります。
死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり<臼田亜浪
梅雨の躑躅よ人が死にかけてゐる< 北原白秋

 つつじのあまりにも鮮やかな色合いは、巡り巡って不安な思いにもさせる花なのでしょうか。それとも不安の中にいると、燃えるような躑躅まで髑髏に見えてくるのでしょうか。

<つづく>
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