20210424
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>ステイホームじゃないシネマ(3)ニューヨーク親切なロシア料理店
「親切なロシア料理店』(原題:The Kindness of Strangers見知らぬ人の親切)は、2020年12月日本公開の映画。
監督はロネ・シェルフィグ。ロネ(Lone Scherfig, 1959~ )はデンマーク出身の女性映画監督。主演はゾーイ・カザン。ゾーイはエリア・カザンの孫。
私と娘は、最後にみんながハッピーエンドになるお話だと幸せな気分で帰宅できる、という単純な映画鑑賞ですが、映画通にはそんなハッピーエンドだと高評価にはならないらしく、映画祭出品しても受賞には至らず。
以下、ネタバレを含む紹介です。
- クララ(ゾーイ・カザン)息子二人を連れて夫のDVから逃れようとする母。
- アリス(アンドレア・ライズボロ)病院救急科の看護師。休みの日には、教会ボランティアとして「赦しの会」という自助サークルを運営 しています。母を看取った以後は一人暮らし。
- マーク(タハール・ラヒム)弁護士ジョンのおかげで無実が証明されるまでは刑務所暮らし。ロシア料理店にマネジャーとして雇われ、料理店の最上階物置部屋に住んでいる。
- ティモフェイ(ビル・ナイ) 100年前に開店したロシア料理店「ウインターパレス(冬宮殿)」が時代に合わなくなってきたが、どのように盛り返したらいいかわからない。ロシア料理店の雰囲気をだすためにロシア語なまりで接客しているが、実はニューヨーク生まれのニューヨーク育ち。
- ジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ )うまく人間関係を築くことができず、すぐ切れるため、どんな仕事に就いてもてもすぐ首になる。教会の無料炊き出しを手伝うようになる。
- ジョン(ジェイ・バルチェル)弟がおこした薬物事件に巻き込まれたマークの無実を勝ち取るなど、有能な弁護士だが、自分自身の心を救うことはできないでいる。
- アンソニー(ジャック・フルトン)クララの長男。
- ジュード(フィンレイ・ヴォイタク・ヒソン )クララの次男
ベッドに眠り続ける夫の横をそっと抜け出したクララは、息子アンソニーとジュードを連れてニューヨークへ。ニューヨークに住んでいる夫の父親は、疎遠だった孫や嫁の世話をする気はなく、若い恋人と暮らすことが優先。孫たちの宿泊を拒否します。
クララは車の中で寝泊まりしながら子どもの食べ物をパーティ会場からこっそり持ち帰る生活に。やがて、夫名義の車は駐車違反でレッカー車で持ち去られ、警官である夫に、母子の居場所がニューヨークであることも知られてしまいます。
ロシア料理店で働くことになったマークは、店の建て直しをはかりますが、薬物のために死んだ弟のことを心にわだかまらせています。弁護士ジョンが「心の問題」を抱えて教会の自助グループに参加するとき、付き添いとしていっしょに参加しています。グループ運営の中心は救急病院看護師のアリス。介護を続けた母も亡くなり、恋人とも別れて孤独を抱えていますが、自助グループの世話を続けて自分の時間をなくすことで孤独をねじ伏せています。
マークは、店のピアノの下で寝ているクララ親子にレストラン上階の自分の部屋に泊まっていいと言います。
クララは、警官ネットワークを持つ夫に追い詰められていきますが、自分だけでなく息子たちも暴力をふるう夫からなんとしても逃げおおせたい。食べるものもなく、アリスの炊き出しに救われますが、ジュードが冬のニューヨークで低体温症になりアリスの救急病院へ。
アンソニーが父親のパソコンにつながる方法を見つけ、父親が拷問シーンを集めたサイトの愛好者であることをつきとめます。DV加害者は、自分もDVを受けて育ったものが多く、暴力で相手を支配することで達成感がえられるのだそうです。クララの夫は、自分の父親に対しても暴力を爆発させます。父親は恋人に発見されますが、夫は逮捕されます。
ジョンの弁護のおかげもあり、離婚を勝ち取れたクララ。クララはマークと心通い合わせることができました。ジョンはアリスに気持ちを打ち明けることができ、ふたりはおつきあいを始めることに。
どんな仕事をしても続かなかったジェフは、教会でのボランティアを続けたことが認められて、マークのレストランのドアボーイに雇われることに。
脚本のわかりにくかったところ。病院のICUに担ぎ込まれた幼い息子ジュードは、病院に閉じ込められたことがトラウマになったのかどうかわからないけれど、退院後母親にも心を開かない子になっていました。母や兄の愛を感じられなくなってしまったのでしょうか。
兄アンソニーは、父親に「弟ジュードをなぐれ」と命令されてつらかっと、母親に打ち明けます。ジュードは「ぼくがお兄ちゃんだったら、弟をなぐってた」と、兄をかばったのだと。アンソニーは、「僕はジュードに赦されたんだ」と泣きます。それをベッドできいていたジュードは、ふたたび家族と心通い合うようになったのですが、このへんのところの心のありさまが、よくわからなかった。
みなが幸せになるハッピーエンド。こういう時代ですから、少々脚本に穴があっても、終わりよければすべてよし。
<つづく>