20210417
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2021ステイホームシネマ(3)パラサイト半地下の家族
アカデミー賞作品賞受賞前から、カンヌ映画祭パルムドール受賞前から、期待して待っていました。「タクシー運転手」ほかのソン・ガンホが家族の父親役、というだけで大期待。韓流イケメンとは一線を画す演技派です。
しかし、アカデミー賞作品賞監督賞脚本賞外国語映画賞という総取り状態なので、買い付けが難しくなり、私の見に行く映画館飯田橋ギンレイホールに来るのは1年後か2年後かと思っていました。ギンレイに来るのを待っている間に、テレビ放映があったので、録画して娘といっしょに見てしまいました。そしたら、放映後ちょっとしてギンレイにかかり、それなら待っていてもよかったかと思った。でも、娘は字幕を読むより吹き替えのほうが好きなので、まあ、テレビ吹き替え版でも良かったです。
娘は聴覚情報のほうが理解しやすい脳で、私は視覚情報のほうが理解しやすいのです。民放テレビの放映だと吹き替え版が多く、NHKBSだと字幕が多い。
さて吹き替えで見た「パラサイト地下鉄の家族。以下ネタバレを含む紹介。
娘はネタバレしそうな映画情報をシャットダウンして、「まったくあらすじを知らないで見たい派」なので、「笑える家族劇」という情報だけで見ました。確かに前半は笑いながら、貧困家族が金持ちにパラサイト(寄生)していく様子を見ていたのですが、娘は「予想したのと違う。笑って終わるのかと思ったのに」と、ラストのスプラッターシーンは、「見てられない」と目をつぶってしまう。
アカデミー賞受賞のためには、金持ち夫婦が庭の息子を忘れて愛撫にふける(時計回りの!)シーンと、さいごのスプラッターは必要だったと思います。ラブシーンと暴力シーンがない映画が、ハリウッドで受けるとは思えませんから。
私がいちばんリアリティを感じたのは、水害で半地下の家のトイレから逆流し奔出する汚水。半地下一家のトイレが家の中で一番高い位置にあることの意味。半地下家族が金持ち階級のマネをすれば、トイレからの汚水逆流と同類になるということ。一家が4人とも同じような「半地下の匂い」を持っていることが、匂いのない映画で効果的でした。偽造した在学証明書や衣服などではごまかせる「下層貧民の匂い」が、決して消せないこと、貧しさのこんな表現は今までにこれほどのリアリティを持って表現されたことは無かったかも。
地下からの電灯モールス信号がかすかな希望の種になるラストシーンでしたが、現実には。息子ギウが将来手にするであろう収入では、父親が閉じこもった地下室の豪邸を買い取るには500年かかる計算だそうです。
韓国の貧困層と富裕層との差は、アメリカ人が抱く「上層への伸し上がり志向」よりももっと希望がないことを描き出していました。現実にはアメリカでも「上層への伸し上がりアメリカンドリーム」は、すでに幻想になってきていることに、皆が気づき始めているものの、それを幻想であると認めたくない人々も大勢存在する。アメリカンドリームがドリームのまま終わることを、国民にわからせたくない支配層は、あの手この手で夢を夢見させておきたい。
パラサイトがアメリカで受けたのも、これが「これは韓国の現実」として受け取りたい観客層が多かったからだと思います。韓国だけじゃ無く、日本でも中国でも無論アメリカでも、貧富格差は固定化してきています。コロナ感染以後、ますますこの固定化はハッキリしてきていますが、夢見る層がいる限り、現在の政権は安泰。