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ぽかぽか春庭「長崎幻想』新年美術館初詣恵比寿篇」

2023-01-10 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230110
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(5)『長崎幻想』新年美術館初詣恵比寿篇

 美術館初詣、1月3日は恵比寿の写真美術館へ行きました。毎年2日3日は無料観覧の日。

 写真美術館の正月恒例だった雅楽演奏会が中止になっていること、残念に思っていましたが、コロナのためだと思い込んでいました。
 毎年雅楽演奏をしてくださった橘雅友会メンバーの一員だった写真美術館研究員の金子隆一氏が2021年6月に逝去なさっていたこと、知らないでいました。
 金子氏は、台東区谷中の慈雲山正行院 に生まれ、住職を受け継いだほか、写真史家、写真コレクターとして、写真美術館の研究員として活躍。数々の写真展を企画運営しました。さらに雅楽において篳篥演奏家として演奏活動も行うという、多彩多能な方でした。私より1歳年上の方、2021年の他界は残念至極。
 人の3倍も活躍され、十分に生きつくしたこととは思いますが、私にとっては、正月に雅楽が聞けなくなったこと残念。無料で聞けるところ、ほかにはないからなあ。
 これまでのご活躍をしのびつつ、お正月の写真美術館ですごす。

 写真美術館に着いたのが、13時ちょっと前。ロビーには13時上映の映画を待つ人が集まっていました。
 上映直前に来たのも年の御縁に違いない。まったく知らなかったドキュメンタリー映画『長崎幻想 父・井上ひさしへの旅』を見ることに。シニア券千円。
 上映期間2023年1月2-6日 

 荷物をロッカーにしまったりしている間に13時。
 2日のクリスチャン・ディオールのほうは、ファッションに興味を持つ若い人や、家族連れなどもいて、にぎわっていましたが、ホールの席についている観客は、ほとんどが高齢者です。写真美術館と言う場所柄も「長崎」という題材も、地味ですからね。

 井上ひさしが構想していた舞台『母と暮らせば』。「ヒロシマ」が舞台である井上の戯曲『父と暮せば』と対になる形として構想されたけれど、井上の他界によって実現しませんでした。
 『母と暮らせば』は、井上ひさしの構想を受け継いだ山田洋二によって、吉永小百合二宮和也主演の映画として完成しました。
 山田洋二監修によるこまつ座の舞台作品にもなり、さらに、井上の娘で劇団こまつ座を継承した井上麻也が、山田洋二と共同執筆として小説にしています。

 今回の映画は、松村克弥の構成編集によるドキュメンタリー。井上麻也が長崎を訪れ、さまざまな場所で父が構想した、ヒロシマが舞台の『父と暮らせば』と対になる形になるはずだった長崎を歩いた記録です。



 長崎生まれで被爆者でもある美輪明宏が冒頭とエンディングの語り役を務めています。
 江戸時代の出島の紹介。出島の遊女からシーボルトの日本妻となり、のちの女医イネを生んだ「お滝」、グラバー邸などが案内されます。

 井上麻也さんは、江戸時代の禁教令のなか、信仰を捨てずに処刑された26聖人の碑などをめぐっていきます。
 静かに長崎をめぐる画面でしたので、浦上天主堂の大司教さんと会うシーン、大司教さんと麻也さんが、どんな会話をしたか、まったく頭に残っていません。この場面寝ていた。すみません。
 原爆に対して声高にモノ言う映画ではないのですが、松村監督のライフワークでもあるナガサキの被爆者を描く手法、淡々とした運びの場面に、ついつい。寝ちゃってもったいなかったと思います。

 ラストシーンは、『長崎の鐘』で知られる永井隆の孫にあたるかたとの対話。バイオリンによる「長崎の鐘」のメロディと、美輪明宏の語りでエンディングになります。

 お正月は「明るく楽しく笑っていられる映画」が人気なのは知っています。お正月には重いかな、と思える映画、上映会は長崎ほかで小規模には続いていくでしょうが、たぶん、東京の一般映画館では上映されないだろうから、見ることができてよいお正月の過ごし方だったと思います。
 
<つづく>
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