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ぽかぽか春庭アート散歩>アート散歩拾遺(1)耀変天目 in 静嘉堂文庫美術館
2023年2月18日。大手町のコロナワクチン大規模接種会場でコロナワクチン5回目オミクロン株対応ワクチンを接種しました。これでまずは大丈夫。もちろん5回ワクチ接種したからと言って、コロナにかからないという保証はないけれど。
せっかく都心に出てきたのだし「これでほぼほぼ安全記念、都会を楽しむ一日」にしようと、シャトルバスにのって東京駅へ。バスの中で皇居東御苑散歩、三菱一号館など思い浮かべた結果、静嘉堂文庫美術館に決めました。
静嘉堂文庫は、世田谷にあったときは「ぐるっとパス」で入場できたかわりに、国宝の耀変天目茶碗はめったに展示されず、私は一度も見たことがありませんでした。丸の内移転前に耀変天目展示があったときは、時期があわず、世田谷の静嘉堂文庫に行けなかったので、残念に思っていました。丸の内の静嘉堂美術館は、ぐるっとパスは使えません。けっこう高めの入館料をとるかわりに、耀変天目の展示は、世田谷より多くなるのではないかと思います。
ワクチンも終わったことだし、耀変天目をみよう、と明治生命館にでかけました。長い間あこがれているのみで、実物は見たことがなかった耀変天目。
「日本にあるよいものは、全部中国からもたらされたもの」と中国人留学生が得意顔になるとき、ひとこと付け加えます。
「はい、日本はたくさんのものを中國から受け入れました。でも、ほとんどのものは日本にあうように変化させて使っています。漢字を受け入れて読み書きできるようになって、漢字からひらがなカタカナを作ったのも、よい例です。それに、中国で作られたのに、中国にはひとつも残っていないものもたくさんあります。江戸時代に輸入された漢籍の中、中国には残っていない本が多いです。中国では革命がおこったりして王朝が変わるたびに、前代の文物は失われてきましたが、日本では1300年前のものが残る正倉院をはじめとし、中国で作られたのに中国にはひとつも残っていない宝が、たくさん残されているんです」
中国で作られ、中国にはわずかに破片が残るだけの耀変天目茶碗も、日本にたった3椀が残された宝物です。
美しい光を見せる椀。中国でも日本でも、この椀を再現しようとしてさまざまな試みがなされてきましたが、まだ完全には再現できていません。
国宝「稲葉天目」

徳川家光の手から、育ての親ともいえる乳母春日局に与えられ、局の実子が大名となった稲葉家に明治まで伝わった椀です。昭和初期に財政困難となった稲葉家から、小野家に渡り、最終的に三菱の岩崎家が買い取りました。
日本に残っている3つの耀変天目茶碗。藤田美術館と大徳寺龍光院に所蔵されていますが、写真が3つ並べられているのを見ても、素人目には、静嘉堂文庫所蔵の楊変天目が一番美しい。
焼き物の釜の中で、火と釉薬と土の間にさまざまな化学変化がおきる。窯の中の変化だから、窯変である。窯変のなかで、稲葉天目にみられるように美しい輝きをみせるものを耀変と呼ぶようになりました。
「岩崎家のひな祭り」という展示の中、稲葉天目がガラスケースの中に鎮座ましましました。
さまざまな写真で見てきた稲葉天目の実物をガラスケースごしですが、初めて見ることができました。
最初の感想は、「ち、ちいさい」。
大きさを知れるものがない写真だけしか見てこなかったので、想像のなかでは、両手の中にすっぽりおさまる大きさくらいに膨らんでいました。実際の稲葉天目は、片手におさまる。
小さいけど美しい。窯変の輝きを目に焼き付けました。
世界にたった3つなんて、もったいなさすぎる。
窯変の研究を続けている陶芸家は日本にも中国にもいるということですが、作り方、解明してほしいです。
<つづく>