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ぽかぽか春庭「宝塚公演・応天の門」

2023-04-23 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230423
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>懸賞生活(4)宝塚公演「応天の門」

 楽しみにしていた宝塚公演。懸賞で当選した貸し切り公演に行ってきました。会場はほぼ満員。
 私は50年ぶりの宝塚観覧。娘ははじめてです。ずっと応募を続けてきて、やっと当選したのだという。

 開演前にトイレの列に並んでいたら、列の二人連れが話をしていました。月組公演を見るのが、今回の「応天の門」で22回目だというのです。きっと推しのスターがいるのでしょう。たぶん男役。
 野球だろうとフィギュアスケートだろうと、熱狂的ファンの層がいるものですが、宝塚ファンというのはまたスポーツともことなる熱気が感じられます。
 
 パートナーに連れられている男性のほかは、男性二人連れとかひとりとかはほとんど見当たりません。昔も今も、宝塚は女性ファンに支えられています。

<主な配役>
菅原道真 月城 かなと
昭姫   海乃 美月
在原業平 鳳月 杏
桂木   梨花 ますみ
藤原良房 光月 るう
山路   白雪 さち花
清和帝  千海 華蘭
伴善男  春海 ゆう
若き日の業平/鬼 英 かおと
白梅   彩 みちる
源信   朝陽 つばさ
源融   蘭 尚樹
藤原基経 風間 柚乃
紀長谷雄 彩海 せら

 物語は、若い文章生の菅原道真が、凡庸な貴族子弟と机を並べることに嫌気がさして、自宅で書物を読みふける以外のことに関心がなかったころのこと。月の子の日に、京の町に百鬼夜行が横行し、黒い牛車の行列見たものを鬼が取り殺す。京の治安を担う検非違使は、どうやっても鬼を取り押さえられずにいました。検非違使の長は絶世の美男在原業平。若い道真を見込み、事件解決の相棒にします。道真は、唐渡りの品物を扱う照姫の店に協力を頼み、鬼の一行と立ち回り。

 百鬼夜行の裏には、藤原氏の間の権力争いがありました。
 娘を入内させて外孫を天皇にしようとする藤原氏。清和帝をめぐる権力争いがどこまで観客に伝わったのか、脚本の流れからはわかりにくいけれそ、たぶん、ヅカファンは物語をちゃんと予習していて、この物語上演が決まればきっと平安初期の歴史なども勉強しているのでしょう。天皇の孫である業平が、東夷の武士がなる検非違使の長などにはならない、とか史実無視も気にせず楽しんでいると思います。

 一条天皇をめぐる中宮定子と彰子をめぐる話はなにせ清少納言と紫式部ですから、私もかなり詳しいほうだと思うのですが、清和天皇をめぐる藤原長良の娘藤原高子と藤原良相娘の藤原多美子の入内争いについて、多美子のほうが先に入内していたこと知りませんでした。若いころ、相思相愛の在原業平が入内前の高子と駆け落ち騒動を起こすことは伊勢物語でも知られています。8歳年下の清和天皇に入内したとき高子は25歳。当時としては高齢になってからでしたが、清和帝との間には次の陽成天皇天皇になる陽成天皇を生んでいるので、宮中につかえた女性としてそう不幸な思いもしていないはず。

 宝塚のお話ですから、歴史風俗は史実通りでなくてもいいのでしょうが、多美子が天皇や公家の前に素顔で登場するとか、平安時代には考えられない間面も、演出演出と思って見てましたが、清和天皇の前にいる多美子を紗幕で囲っておくとか、演出があってもよかったのではないかと思います。
 
 15時半開演、17時まで全22場の場面転換はスピーディで、宝塚らしく「魂鎮めの祭り」という踊りの場面もある。道真は「奉納の神楽舞」を見せるなど主役にふさわしい。

 ただ、物語は漫画で10巻まで出ているお話の一部だけだから、最終22場で「これから鬼たちとの戦いが始まったばかり」という終わったんだか始まったんだかわからない終わり方で観客がすっきりとカタルシスを得るというストーリーではありませんでした。トップ男役が活躍する場面があり主役が朗々と歌い上げる場面があれば、ファンは満足。

 原作漫画にはヒロインとして登場する女性はいないのですが、宝塚には男役トップと娘役トップが存在しますから、娘役トップとして、唐渡りの品物を扱う店の女主人照姫が登場します。
  道真も業平も照姫もそれぞれかっこよくファンは楽しめただろうと思います。

 スタッフ。
 道真が行った「白紙894にもどす遣唐使」までは唐風の衣裳だったと思うのですが、照姫の店の使用人は唐風の衣裳はいいとして、侍女の白梅は現代の女子学生卒業式みたいな袴姿。藤原高子は、十二単みたいな着物、。衣裳スタッフは薄井香菜さんも折衷案で苦労したのだろうなあと思います。貴公子たちは直衣姿にブーツを履いています。この時代の履物の確かな記録はないみたいだから、ブーツでもいいと思うけど。神社の神主さんたちが履いているような履物じゃ、ダンスはできないもの。


 娘は「次に当たるのはいつかなあ」と言っていますが、まあ、応募してみましょう。当たらぬとも限らない。


<つづく>
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