2014.9.8(月)晴
今日は水上先生の命日である。この前後に起こった不思議な出来事は単なる偶然であって、スピリチュアルなものを肯定する気は無いが、水上先生が「ブンナ」を、綾部の母親たちがこどもたちに読み聞かせるようにと綾部市図書館に寄贈されたことは間違いない。
水上先生が、生まれ故郷の本郷村を愛されていると同じように、上林や美山、綾部や福知山の丹波の地を愛されていることは先生の作品を見れば解る。
わたしが出来ることは、二階の書庫に眠っているこの本を一階の書架に置かれるようお願いするだけだ。そしてもしその願いが叶ったなら、あらゆる機会を通じてそのことをPRしたい。一人でも多くの綾部の母子が「ブンナ」を読んで、いくらかの考えを与えられたら、それは先生にとってもわたしにとってもこの上ない喜びである。
若州一滴文庫のパンフレットに水上先生の誌が載っている。
たった一人の少年に
ぼくはこの村に生まれたけれど、
十才で京都に出たので
村の小学校も卒業していない。
家には電灯もなかったので、本もよめなかった。
ところが諸所を転々として、
好きな文学の道に入って、本を読むことが出来、
人生や夢を拾った。
どうやら作家になれたのも、本のおかげだった。
ところがこのたび、所蔵本が多くなって、
どこかに書庫をと考えたが、
生まれた村に小さな図書館を建てて、
ぼくと同じようにほんをよみたくても買えない少年に
解放することにきめた。
大半はぼくが買った本ばかりだ。
ひとり占めしてくさらせるのも勿体ない。
本は多くの人によまれた方がいい。
どうか、君も、この中の一冊から、何かを拾って、
君の人生をきりひらいてくれたまえ。
たった一人の君に開放する。
昭和六十年三月八日 水上勉
若州一滴文庫、格調高いというより、落ち着けるところである。
【作業日誌 9/8】サッチ片付け
【今日のじょん】テレビでエゾシカの泳ぎが目撃されたと大騒ぎしていた。鹿や猪が泳ぐのは多くの知るところであり、今更大騒ぎすることではない。じょんの見ている草むらは鹿の通った跡であり、その先は堰で満水となった川である。もちろん鹿の足はたたない。