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円、最高値更新の見方多く 2012年外為相場を聞く

2012年01月03日 08時23分19秒 | 為替
 2011年は円相場が対ドルで16年ぶりに最高値を更新し、対ユーロでも年末に10年半ぶりに1ユーロ=100円を突破するなど記録ずくめの1年となった。円相場の上昇は今後も続くのか。2012年の相場見通しを市場関係者に聞いた。


「1ドル=73~80円で推移、年半ばまで円高基調」

バンクオブアメリカ・メリルリンチ シニアFXストラテジスト 藤井知子氏

 2012年の円相場は、対ドルで1ドル=73~80円、対ユーロでは1ユーロ=91~108円で推移するとみている。欧州債務問題を背景とした市場のリスク回避姿勢が続く中、円相場は4~6月期に過去最高値を更新するだろう。米国の追加緩和期待もドル売り・円買い要因となり、年半ばまで円高が続くとみている。ただ、米国が緩和に踏み切り、欧州情勢も最悪期を脱すれば、年後半にかけて市場のリスク許容度が改善し、円安への道が開けるとみている。

 欧州債務問題は、ユーロ資産からの資金逃避を誘発し、世界景気にも水を差すことで、引き続き市場のリスク回避姿勢を促しやすい要因になるだろう。欧州の危機克服には、ユーロ共同債の発行を含む財政統合や、欧州中央銀行(ECB)の大幅なバランスシート拡張による量的緩和が必要とみている。ただ、危機がさらに激化しない限り、欧州首脳が思い切った措置をとるのは難しい。年半ばごろまでは、市場の緊迫化によるユーロ安や、リスク回避の円高が進みやすいだろう。

 最近の米国の経済指標は悪くないものの、長引く欧州危機が銀行システムを通じて下振れリスクとなるため、米景気は次第に減速感を強めるだろう。ブッシュ減税などの減税法案の延長や、財政削減を巡る与野党協議の難航が予想されることも景気の下押し材料となる。景気悪化を背景に、米国が一段の追加緩和を実施するとの期待が高まり、米金利の低下やドル安・円高が進むだろう。

 米連邦準備理事会(FRB)は、2013年半ばまで事実上のゼロ金利が当面続くことを約束する「時間軸政策」を採っているが、この期限をさらに14年まで延長するとみている。さらに、長期金利の保有比率を高めることで金利の低下を狙う「ツイスト・オペ」が6月に期限切れを迎えた後、FRBは量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るだろうと予想している。この間はドル売り・円買いが進みやすいが、QE3実施後は市場のリスク回避姿勢が和らぐため、円は徐々に弱くなるとみている。

 円が対ドルで最高値を更新するなど急激な円高が進めば、政府・日銀は為替介入や追加緩和で対応するだろう。ただ、介入に対する海外からの視線は冷たい。特に米国は、東日本大震災直後のG7による協調介入を除いた日本の2回の単独介入を「支持しない」と明言したため、今後の介入実施のハードルはある程度上がったと言わざるを得ない。これまで円の上値を抑える要因となってきた介入警戒感が弱まることで、円の上昇局面では、最高値突破をにらんだ仕掛け的な円買いも出やすくなる恐れもある。
「ユーロ売り圧力、1~3月は強く」

三井住友銀行 チーフ・エコノミスト 山下えつ子氏

 2012年の円相場は対ドルで1ドル=74~90円、対ユーロで1ユーロ=98~125円で推移するとみている。欧州債務問題の深刻化を背景に、主要通貨に対して一段とユーロ安が進む。対ユーロでの円高が対ドル相場にも波及し、円は2011年10月に付けた過去最高値(75円32銭)を更新するだろう。ただ、その後は欧州への支援体制が整うことで、円高圧力は後退する。年後半にかけては世界経済が持ち直し局面に入り、相場の流れは徐々に円安方向へ転換する公算が大きい。

 当面の市場の最大の焦点となるのは、やはり欧州債務問題の動向だ。特に、イタリアやギリシャなどの国債の大量償還を控えた1~3月は、ユーロ売り圧力がかかりやすい。欧州銀への公的資金注入や、欧州各国の格下げも懸念される。市場のリスク回避姿勢が強まることで、円高が進むだろう。

 1~3月期を過ぎれば、欧州金融安定基金(EFSF)の拡充や、国際通貨基金(IMF)による支援の枠組みが確立し、金融市場は安定に向かうとみている。年後半にかけては市場のリスク回避姿勢が一服し、円は下落方向に転じる。

 円の対ドル相場を見通す上では、米国の金融政策も大きな材料となる。FRBは2013年まで事実上のゼロ金利が続くことを約束する時間軸政策を採っているため、2012年中は金利上昇期待は高まらない。一方で、米国の足元の景気は底堅いため、量的緩和第3弾(QE3)の実施に踏み切る可能性も高くないとみている。米国による一段の緩和でドル安・円高が進む展開は予想していない。2012年は大統領選があるため、選挙をにらんだ雇用対策や景気対策が打ち出されれば、ドル高要因だ。

 ただし、中国をはじめとしたアジアの新興国経済が欧州問題の余波で減速する可能性には注意が必要だ。欧州系の金融機関が、資本増強のためにアジアから資金を引き揚げたり、アジア向けの新規貸し出しを絞ったりする動きを強めた場合、新興国の景気減速や、アジア通貨の急激な下落を招く恐れがある。ただ、新興国の中でも経済状況に問題を抱えた国とそうでない国で濃淡があり、一律に売り込まれる展開にはならないとみている。
「ユーロ、93円まで下落も 欧州債務は深刻」

みずほ証券 FXストラテジスト 鈴木健吾氏

 2012年の円相場は、対ドルで1ドル=72~87円、対ユーロで1ユーロ=93~115円で推移するだろう。春先にかけては欧州債務問題の深刻化が避けられず、リスク回避のドル買い・ユーロ売りが進むことで円も対ドルで弱含むだろう。フランスの格下げ懸念のほか、2月にはギリシャでの総選挙を控えて政局の混乱も予想されるため、市場のリスク回避姿勢が強まる恐れがある。イタリア国債が大量償還を控えていることもユーロ売りの材料となりやすい。

 ただ、欧州債務問題の解決に向けた動きも徐々に出てくるとみている。ユーロ共同債の導入やユーロ圏諸国の財政統合を巡り、ドイツが強硬な態度を軟化させるなど、債務国を支援するための譲歩姿勢が出てくるとみている。そのため、ユーロ崩壊のようなハードランディングとはならず、市場の緊張も徐々に和らいでいくだろう。

 もっとも、債務問題を背景とした欧州景気の下振れは世界経済に悪影響を及ぼしかねない。欧州債務問題を巡る緊張が和らぐにつれて、年半ばには市場の話題は米国経済に移るとみている。米国経済は緩やかな回復傾向を続けるとみるが、ひとたび米景気の減速懸念が強まればドル売り圧力が高まり、円高が進むだろう。

 米国経済の減速懸念に加えて、米連邦準備理事会(FRB)による追加緩和期待が高まることも円高要因となる。6月には、長期金利の保有比率を高めて金利の低下を狙う「ツイスト・オペ」が期限を迎えるのに伴い、追加緩和への期待が高まる可能性がある。米景気の減速懸念を背景に量的緩和第3弾(QE3)の期待が高まることで、ドル安・円高圧力が一段と強まり、円は2011年10月末につけた最高値(75円32銭)を更新するだろう。その場合、政府・日銀は円売り介入に踏み切る可能性が高い。介入で円高圧力を解消できるかどうかは不透明だが、70円突破を回避する要因にはなる。

 もっとも、QE3は期待が先行するだけで実施されることはないとみている。米国経済は緩やかな回復を続け、年後半に向けて徐々に底堅さが意識されていく。市場参加者のリスク回避姿勢が和らいで、ドル売りが進むだろう。ただ、年の終盤にかけては米国経済の回復傾向を背景に、FRBの金融緩和政策を巡る出口戦略の期待が高まることで円売り・ドル買いに転じていくだろう。
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