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国内ソーシャル3社に変調の兆し、事業モデルに弱点

2012年02月09日 07時24分15秒 | 経済
 交流サイト(SNS)国内大手3社の成長の勢いに変調の兆しが出ている。株式市場はすでにそれを局面によって織り込んでいる。日本語市場の限界に加え、世界最大手の米フェイスブックに比べたビジネスモデルの弱点も背景に見え隠れする。




グリーの田中良和社長
 国内ソーシャルサイト大手3社の10~12月期業績が出そろった。グリーが営業利益を前年同期比3倍強に伸ばしたものの、ディー・エヌ・エー(DeNA)とミクシィはともに営業減益で、収益拡大にブレーキがかかった。株価は会員数が伸び悩むミクシィは長期ジリ安傾向。DeNAは昨夏をピークに、グリーは秋をピークに、それぞれ天井を打った。市場は3社の業容拡大の勢いに変調を来していることを敏感に感じ取っている。

 ソーシャルサイト世界最大手フェイスブックは日本でも利用者急増が続いており、月間訪問者数でミクシィを抜き、登録会員数も500万人を超えたとみられる。米国では新規上場申請を米証券取引委員会(SEC)に提出。夏前には上場を果たし、大量の億万長者が誕生する。上場申請に伴って開示した資料を見ると、全世界の月間アクティブ利用者数が約8億5000万人に達した今も売上高、利益とも高速成長を維持している。

 国内勢とフェイスブックとの勢いの差の最大の要因は、日本語圏に限られる国内勢の市場と中国など一部を除く全世界が相手のフェイスブックの市場の規模の差だろう。だが、国内勢のサービスとビジネスのモデルをみると、どうもそれだけではなさそうだ。




ディー・エヌ・エーの守安功社長
 今もっとも市場が懸念しているのが、アイテム課金を絡めたゲームが収益の柱になっている点だ。ゲームを始めるのは無料だが、遊び進むにはどうしても有料アイテムを買いたくなる仕組みが標準になっている。しかも、買えるアイテムが自分で決められずクジ引きのような形で決まる方式のゲームが人気を集めており、その射幸性が問題視され始めている。未成年による大量のアイテム購入に対する懸念などが社会的に高まれば、未成年の利用に対してなんらかの制限をかけたり、人気の高いアイテムが当たる確率の設定の仕方に規制をかけたり、といった動きが浮上する可能性が想起される。

 そもそもそのようなゲームで高収益を上げること自体、事業の倫理性という観点から持続可能性があるのか。企業収益の成長性と倫理性が両立できないビジネスモデルだと市場が判断すれば、株価はさらに調整を余儀なくされるだろう。

 もう一つの問題はフェイスブックと比べたプラットフォームとしての強さだ。

 ソーシャルサイト上で動くサービスやゲームなどのソーシャル・アプリを作る米系開発企業のトップが最近、吐き捨てるように言った。「日本のソーシャルサイトは3社ともあまりにコントロールがきつく、コストが高い。自由なフェイスブックに比べて、開発する意欲がわかない」――。
 国内勢も3社とも、フェイスブックやツイッターに倣ってプラットフォームを社外の開発者に開放し、各種API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)へのアクセスを許している。それなのに開発者からこのような不満が漏れるのはどうしたわけだろう。




ミクシィの笠原健治社長
 国内3社の場合、各社のプラットフォームを利用するには開発者パートナーとして登録を義務付けている。登録を承認するかどうかの審査・裁量の権利をプラットフォーム各社側が規約上で確保しているほか、個別のアプリを公開できるかどうかについてもプラットフォーム側に裁量による決定権がある仕組みにしている。ライバルのグリーにゲームを提供した開発企業のゲームを、「モバゲー」の中では検索不能にしたり、一覧メニューから削除して新規利用者の流入を妨げたりしたDeNAに対し、2011年6月に公正取引委員会が排除命令を出した。この一件の背景には、そのような規約の存在がある。DeNA側としては規約で明記してある同社側の裁量権の行使だという理屈でそのような行為に走っていたフシがある。

 その後公取委の立ち入り検査や排除命令といった事例は発生していない。しかし、DeNAとグリーの2社はゲーム開発企業に対し、両社のプラットフォームに公平にゲームを提供することを許容しない姿勢を続けていると言われている。つまり、日本のソーシャル・プラットフォームはアプリ開発者にとって極めて不自由なものになっているといわざるを得ない。

 一方、フェイスブックのプラットフォームの利用は原則自由。APIも文字通り公開されており、開発者は勝手にそれを使ってアプリを作り、流通できる。もちろんなんらかの問題があるアプリが見つかれば、削除するなどの措置をプラットフォーム運営者として取れるが、日本のソーシャル・プラットフォームに比べ自由度がはるかに高い。

 もう一つが課金システムの問題だ。国内3社の場合、ソーシャルアプリの中でアイテム課金などの課金サービスを付加する場合は、各社独自の課金システムの利用を求められる。その際、収入の1~3割を「システム利用料」や「レベニューシェア」といった名目で徴収される。これに対しフェイスブックは独自の課金・決済システムを提供する一方、アプリ開発者側がクレジットカードやオンライン決済サービスの「ペイパル」などを使って独自に課金することもできる。課金の仕方も原則自由なわけだ。

 最近人気が増しているiPhone(アイフォーン)用のソーシャルアプリの場合、アップルが運営するアップストアで流通させると、ここでも課金収入の3割を手数料としてアップルに支払いを求められる場合がある。つまり国内ソーシャル3社のプラットフォーム用にiPhoneアプリで課金ビジネスをやろうとすると、アップルに3割払い、ソーシャルプラットフォームに1~3割払った残りしか、開発者の手元に残らないことがあるわけだ。果たしてこのまま開発者が魅力的なアプリを作り続けるだろうか。日本国内でも利用者が増えたフェイスブックに開発者がなびく動きがいつ出てきてもおかしくなさそうだ。

 過去数年、順風満帆で急成長を続けてきた国内ソーシャル3社。12年は株式市場や消費者世論、開発者コミュニティーから事業モデルの根本的な見直しを迫られる年になるかもしれない。
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