投資家のリスク回避姿勢が和らいでいる。逃避先とされる円を売る動きが広がり、9日の東京外国為替市場でも円相場は弱含んでいる。円安・ドル高基調は今後も続くのか。市場参加者に聞いた。
「一段の円安は限定的」
三井住友銀行市場営業部副部長 高木晴久氏
足元では円安が進んでいる。流動性相場でリスクをとりやすくなった投資家は円売り材料を求めているからだ。2011年の日本の経常黒字は前年比減少率が過去最大となり、これを手掛かりに投機筋が円売りを加速した。米雇用統計が力強い結果となったうえ、足元で米金利が上昇していることもあって、ドル買い圧力もかかりやすい。
もっとも、今後も米国の経済指標が改善を続けるかどうかは注視していく必要がある。米経済の回復が十分に確認できなければ、追加的な量的緩和(QE3)への期待が高まりかねず、それが円高・ドル安圧力となる。円の安値では輸出企業による円買い需要も高まるとみられ、ドルの上昇は抑えられる可能性がある。円相場は今後2週間、ギリシャ交渉、破談ならドル高か」
みずほ証券FXストラテジスト 鈴木健吾氏
ドルの上値の重さが意識される展開をメーンシナリオとみている。政府・日銀が覆面介入を実施していたことが明らかとなり、介入警戒感から足元では円の上値が重い。ただ投資家のリスク許容度が改善する環境では、円売り圧力よりもむしろドル売り圧力が増す。幅広い通貨に対してドルが売られる展開になり、円にも上昇圧力がかかる。
リスクシナリオとしてはギリシャの債務削減問題がある。3月20日のギリシャ国債の大量償還を乗り切るには金融支援が不可欠だ。民間銀行との債務削減交渉の期限を13日に控え、欧州問題への楽観論が先行しているが、交渉決裂にも注意が必要だ。ギリシャの債務不履行(デフォルト)懸念が現実味を帯びてくれば、リスク回避のドル買いが一気に進む可能性がある。円買い圧力よりもドル買い圧力が勝り、円が78円を抜けて下落する可能性もある。今後2週間、円相場は1ドル=76~78円の範囲で動くだろう。
1ドル=76円30銭~78円30銭で推移するだろう。
「ドル伸び悩み、もみ合い続く」
バンクオブアメリカ・メリルリンチシニアFXストラテジスト 藤井知子氏
足元ではドル高が続いているが、この先は伸び悩むだろう。1月分の米雇用統計は良い結果だったが、2月分にも注目が必要だ。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は米雇用情勢について引き続き悲観的な見方を示しており、FRBの緩和姿勢は続くとみる。ドルを買い進める動きにはなりにくい。
日本の経常黒字の大幅な減少を手掛かりに海外投機筋が円売りを進めているが、すぐに経常赤字になるとの見方は時期尚早だ。2月に入ると、年度末決算を控えた国内企業が円買い・ドル売りを進めるため、円相場は当面もみあいが続くだろう。円相場は今後2週間、1ドル=76円50銭~78円で推移するとみる。